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 フォスターが驚き振り返り見ると。そこには、どこから入って来たのか神々しいばかりの黄金に輝く美しい女性が佇んでいた。

 しかもよく見ると、宙を浮いている。


 まさかコイツが、あの噂の女神なのか?!


 その女神らしい女性は、次に優しげな表情を浮かべ、微かに唇を動かしてくる。

『あなたにも愛すべき人が居るのなら、もうお分かりでしょう……? 

この戦争の、実に愚かなことを……』


 ──これは間違いないな。やはりコイツが、あの精霊達の親玉か。


 私は瞬時にそのように理解し、相手を睨むようにして見る。そして口元を微かに緩め、開いた。

「ほぅ……ではあなたは我々に対し、講和でも持ち掛けに来られた訳ですか?」

 するとその女神は、スッとまぶたを閉じる。


『もし、それが叶うのであれば……』


 ──ハッハッハ! これは実に良い!!


 現状、こちら側に打つ手はない。にもかかわらず、相手の。それも大将自らがやって来てくれた。こんなにも都合の良いことはないな!


 私はそう思い、口元を緩めた。

 それから相手を油断のない瞳で見て、口を開く。

「我々が望むものは、《精霊水》ただそれのみだ!

それさえ呑んでくれるのであれば、この地を再び戦地に変えるようなことはしないと約束しようではないか!」

『……分かりました』

 それを聞き、私は満足げに頷く。

 これで被害は最小限に抑えられるな、と。

 ──だが、


『……では、私からも一つだけお願いがあります』


 願い……? やはり、ただでは許さない、ということか?

 現状が現状なだけに。呑める内容であるならば、それも仕方のない事だな。


 私はそう考え、聞くことにした。

「それは、なんだ?」

『グレインを、あの方を生き返らせて欲しいのです』


 ──!? 何だとッ!!?


「そんなこと……出来る訳がないだろう! 彼は既に死んだのだ!!」

『いいえ、出来ますよ。その対価、となるものさえあれば……』


 ……対価?


 私はその一言を、不穏に思いながらも更に聞いた。

「対価……それは一体、なんだ?」

『あなたの命です』


 ──!? 何だとッ?


 私は信じられない思いで、その女神を睨みつけた。

「そんな馬鹿な条件を、この私が呑むとでも……?」

 実際にこれは、正気とはとても思えない話しの内容だ。10回問われても、10回とも答えは、NO!に決まっている。

『ええ。そうすれば、あなたの妻との約束、〝極力、被害者は出さないで下さい〟は守れますからね』

 そう言うと、女神は艶美に笑ったのだ。


 ──!! コイツめッ!


 その要求をこちらが呑まないのを分かって、この女神はわざとそう言ってきている。

 わたしは瞬時にそう理解した。その間にも、女神は話しを繋げてくる。

『あの方は……グレインは、まだ死すべきお方ではなかったのです。

まだやり残した、幾つかのことがあったのです。それなのにあなた方は、あの方の命を一方的に奪った』


 実に勝手な話しだ。それとこの私の命と、どのような関係がある?

 なぜこの私が、その代償とならなければならないのだ!

 私が彼に、なにをした?! 彼の命を奪ったのは、この私ではないのだぞ。

「それを言えば、この私も同じことではないか! 

──違うと言えるのか!? そもそも私がそれで死んでしまっては、元も子もない!」


『ええ、そうでしょうね……。しかしあなたには、その権利を奪われても仕方のない、幾つかの理由が既にある』


 理由……だと? 奪われても仕方がない理由!?

 私がこの軍団の最高責任者だからだとでも言いたいのか?

「ふざけるな! この戦争は、私が望んで仕掛けたことではなかった!!

結果として、こうなったに過ぎない!

それに、講和を持ち掛けに来たグレイン技師が亡くなるや否や。どこでそれを嗅ぎ付けたか知らないが、ほぼ同時刻、そちらは即座に動き。我々の拠点へとあのシルヴァーフを使い襲撃を仕掛けて来た! 

その点を大きく重点に置けば、戦争を仕掛けたのはむしろ、そちら側であったと言える!! 

あれがこの戦いの火蓋となり、今の現状を産んだのは『紛れも無い事実』だろう! 

もし叶うのなら、私はそれでも講和を受ける構えでいたものを……」


『しかし……グレインは生きて。再び私の元には戻って来なかった……戻って来なかったのです。

これもまた、『事実』。それは違うとあなたには言えるのですか? フォスター』


 私は驚き、再び相手である女神を真剣な眼差しで見つめた。

 それまでただ淡々と感情の起伏も余り感じさせず語り掛けていた女神が、この時だけ何故かその瞳を潤ませていたのだ。


 まさかコイツ……グレイン技師に惚れてでもいたのか? 先ほどから、彼グレインに対しての特別な感情をやたらに感じさせられる。だとすれば……。


 私そこであることを思い出し、直ぐに口元を横に引き。そしてふっと半眼に笑み、口を緩め開く。

「……ならば。この件で(もっと)相応(ふさわ)しいうってつけの者が居りますよ……」と。



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