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 その後も精霊達との戦いは続き、私の精神疲労は極限を極めていた。

 今現在も聖獣シルヴァーフがこの私の目の前で乱舞し、兵士らはただただ逃げ惑い無駄に死傷者が増え続けるばかりだ。これまでに三千名にも及ぶ兵士達が、その聖獣シルヴァーフに襲われ犠牲者となっている。

 クソ、頭の痛い所だな。


(相手が空から襲ってくるのでは、手の打ちようも無いか……仕方ない)


 私はそう溜息混じりに零すと、最近築いたばかりの砦からその国境向こうを忌々しげに臨む。そして速やかに兵士達へ引くように命じた。

 対抗手段の無い今は、兵士達に無理を承知で強いられないしさせられない。そう判断した為だ。

 そのあと胸元のロケットを開き、その中の綺麗な美しき妻と一人娘が描かれた写実画を見つめ零す。

「……すまない。今回ばかりは、長引きそうだよ……ルナ」


 この私にも、信じ歩んで来た道がある。

 『国を豊かにする』それは即ち、戦争に勝ち国土を広げるということ。そう教えられ、信じ、これまで生き歩んできた。しかし戦い抜く中で、悟り分かり始めた現実は、それにより属国化し従属化され虐げられてゆく国々の上に成り立つ幻想境のようなもので。それらの不幸な国々がなければ、今の共和制キルバレスは存在し得ない、という現実だった。

 私はその事に気がつき、一時期悩み続けていた。


 しかしこれが自分の選んだ道……軍人として、恩給を受ける者として、避けえない道であった……。しかしわたしはそう割り切る他ない、と自身に言い聞かせてきた。


 そうやって心の中に引っ掛かる葛藤や思いを拭い去りながら戦い生き抜いていたが。共和制キルバレスより北にあった《北部連合カルメシア》メルキア国王城内にて、まだ少女ほどの女性がまだ当時は部隊長の一人に過ぎなかったこの私の手から逃れ、燃え盛り落城寸前の王城ベランダへと向かい到着すると振り返り。そこから飛び降りる様子を見せながらも、こちらを恨む瞳で睨みつけ、その手には短剣を握りまだ戦う姿勢を見せ続けていた。

 そしてその少女はこの私がかつて感じたことのあるものとまるで同じ言葉を吐き捨て、軽蔑した眼差しで挑んで来たのだ。


 それは実に勇気があり。そして同時に、愚かな行動だ。少なからずとも助かる可能性のある自らの命を、確実の元に失うことに繋がる行為だったからだ。


 しかしそのまだどこか幼さの残る女性の瞳は、とても愚か者のそれであるとは思えなかった。何よりも自分と共有できる何かを彼女から感じていた。


 私はその後、少女を保護するように兵士らに命じ。時折時間を見つけては自室へと招き、少女と語り合い。やがて自分の悩みを打ち明け。いつしか互いに理解し合い、愛し合うに至った。

 そして同時に、愛すべきその妻との出逢いでそれは解決された……。



   〝──この人を守る! 私は、その為になら戦える!〟



 私はそれ以後、その為にのみ戦うことを心に誓い留め、決めた。


    〝あなた……極力、被害者は出さないで下さいね〟

       (ああ……分かってる。約束するよ――)


 それがこの私にとっての最善の道であり、最低限人としてあり続ける、唯一残された心の支えとなった。


「……不思議な事もあるものだな。何故か今頃になって、急に当時のことがこうも鮮明に思い出されるとは……」

 わたしはようやく落ち着いた戦場を再び見つめ。部下達への労いの言葉を掛けると、奥へと下がり、自室へと籠もった。


 ──と、その時だ!



『先ほどの方が、あなたの愛すべき人なのですね?』


 ──!!?



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