ダーリンの視点より……
「ねえ、どして?」
シャワーを浴びて、まだ眠りの国の住人であろうカノジョの寝室に戻れば、お怒りのご様子の万祐ん姫が、黄ばんだ枕を抱きしめていた。
「……突然、どったの?」
恨めしげに見上げてくるだけの様子から察するに、起き上がれないわけだな。
うん、オレってば、なんて愛情深き男だろうか。
草食男子が増えているらしい昨今、貴重な肉食系男子ってことだ。
シーツにくるまったまま、ふわっふわの甘そうな髪の毛先を食っちゃってるのも、そのままにして怒る愛いヤツ。
ついでに、柔らかそうなコイツの頬っぺたはいつにも増して紅い気がする。
「ワタシの価値って、ソコなわけ?」
でもって、コイツの意図が分からん。
「ゴメン、なにが言いたいのか分からんわ。腰、そんなイテーとか?」
立ち上がれんくらいだ、そりゃイテーわな。
「アンタが夕べ散々突っついてくれた頬っぺたのことよ!!」
……へ?
あ、ああ、触りながらヤったかも?
スプリングを弾ませて腰を落とせば、万祐が無言で悲鳴を上げたのが分かった。
「わ、わりィ。腰のことかと思って。だってホラ、テクニシャンの名が廃るじゃん?」
だってなあ、ちょっと病みつきになる弾力。
茶化してみれば、冷たい視線。
「オマエはテクニシャンなどではない」
「……」
ナ、ナンダト!!
コンニャロー!?
顔に似合わず、万祐は好戦的な性格だ。
でも、そこもまあ、可愛いとは思うけど。
口に出して言うのもシャクだからな。
「ふんっだ」
だが、機嫌を損ねる真似だってしたくはない。
「な、なんか、昨夜は張り切っちゃったからな。わりィ、わりィ」
とりあえずは、謝っとけよ、オレ。
「アンタが張り切る対象は、ワタシのシモブクレでしょうが!!」
噛みつきそうな勢いの万祐の言葉に誘導されてしまうオレの視線。
ああ、触りたくなってきた。
「それは、キモチぃんだからしょうがないわ」
マジ、夢見心地にもなるくらいだ。
考えてたら、欠伸が出てきた。
「ワタシはね、この顔のこと気にしてんの!!分からない!?」
「……鼻ぺちゃだもんな」
パーツ的には、な。
でも、丸っこくてイイ感じだぞ。
「今の話しで、どうしたら鼻云々の流れになるのか教えてもらえる!?」
おーっ、いたくご立腹してるじゃーん。
「顔の欠点の話だから?」
「……ア、アンタ」
絶句だ。
絶句しとる。
水面で酸素をパクつく金魚みてー。
「いや、でもオレさ。万祐の頬っぺた、マジで好きなんだけど」
コンプレックスだと前々から言っているから、取り除いてやろうっていう湊様の優しさが伝わらんのかね。
おっし、ベタベタ触ったろ。
うまそーに、頬っぺたを膨らます仕草は、オレには求愛行動にしか見えんのよ、万祐ちゃん。
あー辛抱たまらんわ!!
湊めも、全力で求愛させていただきまっす。
青筋なんか恐くない。
ぷにっ。
ムカっ。
っぷに。
っムカ。
ぷに、ぷにっ。
「うっざぁーい!!」
手を払い落としやがった。
ミテロヨ、万祐ちゃん。
「すんげ、キモチぃけど?」
……ぷにぷに。
こりゃ、依存症だよな。
ぷにぷに……。
やめれん。
……ぷっにぷに。
「やめんかー!!」
喚かれても、ねえ?
「イヤだね」
やめるどころか、エスカレートしちゃうもんね。
「ね、ねえ?」
拒否を示す直前で、唇なんか食べてやる。
「っかー、たまんねー!!」
叫べば、盛大にビクつく万祐ちゃん。
ぷっくり頬っぺたが同時にぷりゅるんと揺れる。
おおっ、神秘……?
あったけーのな。
「……」
「……~♪」
んもう、マジなんだろなこの感触。
っくうー、幸せだ!!




