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ガラクタ。  作者: ゆ~の
頬っぺたに求愛
2/9

ダーリンの視点より……

「ねえ、どして?」

 シャワーを浴びて、まだ眠りの国の住人であろうカノジョの寝室に戻れば、お怒りのご様子の万祐ん姫が、黄ばんだ枕を抱きしめていた。

「……突然、どったの?」

 恨めしげに見上げてくるだけの様子から察するに、起き上がれないわけだな。

 うん、オレってば、なんて愛情深き男だろうか。

 草食男子が増えているらしい昨今、貴重な肉食系男子ってことだ。

 シーツにくるまったまま、ふわっふわの甘そうな髪の毛先を食っちゃってるのも、そのままにして怒る愛いヤツ。

 ついでに、柔らかそうなコイツの頬っぺたはいつにも増して紅い気がする。

「ワタシの価値って、ソコなわけ?」

 でもって、コイツの意図が分からん。

「ゴメン、なにが言いたいのか分からんわ。腰、そんなイテーとか?」

 立ち上がれんくらいだ、そりゃイテーわな。

「アンタが夕べ散々突っついてくれた頬っぺたのことよ!!」

 ……へ?

 あ、ああ、触りながらヤったかも?

 スプリングを弾ませて腰を落とせば、万祐が無言で悲鳴を上げたのが分かった。

「わ、わりィ。腰のことかと思って。だってホラ、テクニシャンの名が廃るじゃん?」

 だってなあ、ちょっと病みつきになる弾力。

 茶化してみれば、冷たい視線。

「オマエはテクニシャンなどではない」

「……」

 ナ、ナンダト!!

 コンニャロー!?

 顔に似合わず、万祐は好戦的な性格だ。

 でも、そこもまあ、可愛いとは思うけど。

 口に出して言うのもシャクだからな。

「ふんっだ」

 だが、機嫌を損ねる真似だってしたくはない。

「な、なんか、昨夜は張り切っちゃったからな。わりィ、わりィ」

 とりあえずは、謝っとけよ、オレ。

「アンタが張り切る対象は、ワタシのシモブクレでしょうが!!」

 噛みつきそうな勢いの万祐の言葉に誘導されてしまうオレの視線。

 ああ、触りたくなってきた。

「それは、キモチぃんだからしょうがないわ」

 マジ、夢見心地にもなるくらいだ。

 考えてたら、欠伸が出てきた。

「ワタシはね、この顔のこと気にしてんの!!分からない!?」

「……鼻ぺちゃだもんな」

 パーツ的には、な。

 でも、丸っこくてイイ感じだぞ。

「今の話しで、どうしたら鼻云々の流れになるのか教えてもらえる!?」

 おーっ、いたくご立腹してるじゃーん。

「顔の欠点の話だから?」

「……ア、アンタ」

 絶句だ。

 絶句しとる。

 水面で酸素をパクつく金魚みてー。

「いや、でもオレさ。万祐の頬っぺた、マジで好きなんだけど」

 コンプレックスだと前々から言っているから、取り除いてやろうっていう湊様の優しさが伝わらんのかね。

 おっし、ベタベタ触ったろ。

 うまそーに、頬っぺたを膨らます仕草は、オレには求愛行動にしか見えんのよ、万祐ちゃん。

 あー辛抱たまらんわ!!

 湊めも、全力で求愛させていただきまっす。

 青筋なんか恐くない。

 ぷにっ。

 ムカっ。

 っぷに。

 っムカ。

 ぷに、ぷにっ。

「うっざぁーい!!」

 手を払い落としやがった。

 ミテロヨ、万祐ちゃん。

「すんげ、キモチぃけど?」

 ……ぷにぷに。

 こりゃ、依存症だよな。

 ぷにぷに……。

 やめれん。

 ……ぷっにぷに。

「やめんかー!!」

 喚かれても、ねえ?

「イヤだね」

 やめるどころか、エスカレートしちゃうもんね。

「ね、ねえ?」

 拒否を示す直前で、唇なんか食べてやる。

「っかー、たまんねー!!」

 叫べば、盛大にビクつく万祐ちゃん。

 ぷっくり頬っぺたが同時にぷりゅるんと揺れる。

 おおっ、神秘……?

 あったけーのな。

「……」

「……~♪」

 んもう、マジなんだろなこの感触。

 っくうー、幸せだ!!

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