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ガラクタ。  作者: ゆ~の
頬っぺたに求愛
1/9

ハニーの視点より……

低クオリティ。

「ねえ、どして?」

 どうして、アンタが欲情するポイントってワタシの頬っぺたなわけ!?

「……突然、どったの?」

 お風呂上がりの濡れた黒髪の影響からか、いつもよりは断然、素直そうに見えないこともないカレ。

 無造作にタオルで水気を拭いながら現れた湊に、うつ伏せのまま待ち続けていたワタシは一気に火を噴いた。

 本当はさ、姿勢を正したかったんだけど、そこはナイーブな乙女の事情。

 シーツにくるまったまま、お月様色の枕にしがみつく。

 だって、イタイのよ。

「ワタシの価値って、ソコなわけ?」

 ああ、イタイ。

「ゴメン、なにが言いたいのか分からんわ。腰、そんなイテーとか?」

 ちょーイタイのはっ!!

「アンタが夕べ散々突っついてくれた頬っぺたのことよ!!」

 デニムに脚を突っ込んだだけの湊が、デリカシーもなくスプリングを弾ませて腰を落とすから、ワタシの体は悲鳴を上げた。

「わ、わりィ。腰のことかと思って。だってホラ、テクニシャンの名が廃るじゃん?」

「オマエはテクニシャンなどではない」

「……」

 棒読みで、冗談を冷水のごとく流してやった。

 ザマーミロ、バカ。

 顔に似合わず、湊はかなりの無神経。

 うん、断言。

 そして、大多数の男がそうであるように……胸フェチ……だと思い込んでいたのが間違いだったのね。

「ふんっだ」

「な、なんか、昨夜は張り切っちゃったからな。わりィ、わりィ」

 か、軽っ!?

「アンタが張り切る対象は、ワタシのシモブクレでしょうが!!」

「それは、キモチぃんだからしょうがないわ」

 欠伸をかみ殺しながら、開き直った。

 もーう、許せん!!

「ワタシはね、この顔のこと気にしてんの!!分からない!?」

「……鼻ぺちゃだもんな」

「今の話しで、どうしたら鼻云々の流れになるのか教えてもらえる!?」

「顔の欠点の話だから?」

「……ア、アンタ」

 言葉が続かない。

 絶句だ。

 絶句。

 コイツの頭がオカシイなんて知ってたはずなのに、それを上まわるアンポンタン。

「いや、でもオレさ。万祐の頬っぺた、マジで好きなんだけど」

 だ、かっら、それはコンプレックスだと前々から言っとろうが!!

 ぷにっ。

 イタっ。

 っぷに。

 っイタ。

 ぷに、ぷにっ。

「うっざぁーい!!」

 手を払い落としたった。

「すんげ、キモチぃけど?」

 ……ぷにぷに。

 懲りないわねっ。

 ぷにぷに……。

 やめんか。

 ……ぷっにぷに。

「やめんかー!!」

「イヤだね」

 うおっ!?

 やめるどころか、エスカレート。

「ね、ねえ?」

 無理だわよ。

 これ以上は、無理だわよ。

 本当に……ん!!?

「っかー、たまんねー!!」

 なんですとー!?

 だから、どうして、アンタが欲情するポイントってワタシの頬っぺたなわけ!?

 やっぱり、ねえ……?

 シモブクレフェチなの?

 ちょっとだけ、訊くのが恐い。

 またそれを、落ち着いて確かめるには、ちょっと時間を先伸ばしにしなくてはならないみたい。

「……」

「……~♪」

 んもう、どうにでもしてちょうだい……バカっっ!!

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