ハニーの視点より……
低クオリティ。
「ねえ、どして?」
どうして、アンタが欲情するポイントってワタシの頬っぺたなわけ!?
「……突然、どったの?」
お風呂上がりの濡れた黒髪の影響からか、いつもよりは断然、素直そうに見えないこともないカレ。
無造作にタオルで水気を拭いながら現れた湊に、うつ伏せのまま待ち続けていたワタシは一気に火を噴いた。
本当はさ、姿勢を正したかったんだけど、そこはナイーブな乙女の事情。
シーツにくるまったまま、お月様色の枕にしがみつく。
だって、イタイのよ。
「ワタシの価値って、ソコなわけ?」
ああ、イタイ。
「ゴメン、なにが言いたいのか分からんわ。腰、そんなイテーとか?」
ちょーイタイのはっ!!
「アンタが夕べ散々突っついてくれた頬っぺたのことよ!!」
デニムに脚を突っ込んだだけの湊が、デリカシーもなくスプリングを弾ませて腰を落とすから、ワタシの体は悲鳴を上げた。
「わ、わりィ。腰のことかと思って。だってホラ、テクニシャンの名が廃るじゃん?」
「オマエはテクニシャンなどではない」
「……」
棒読みで、冗談を冷水のごとく流してやった。
ザマーミロ、バカ。
顔に似合わず、湊はかなりの無神経。
うん、断言。
そして、大多数の男がそうであるように……胸フェチ……だと思い込んでいたのが間違いだったのね。
「ふんっだ」
「な、なんか、昨夜は張り切っちゃったからな。わりィ、わりィ」
か、軽っ!?
「アンタが張り切る対象は、ワタシのシモブクレでしょうが!!」
「それは、キモチぃんだからしょうがないわ」
欠伸をかみ殺しながら、開き直った。
もーう、許せん!!
「ワタシはね、この顔のこと気にしてんの!!分からない!?」
「……鼻ぺちゃだもんな」
「今の話しで、どうしたら鼻云々の流れになるのか教えてもらえる!?」
「顔の欠点の話だから?」
「……ア、アンタ」
言葉が続かない。
絶句だ。
絶句。
コイツの頭がオカシイなんて知ってたはずなのに、それを上まわるアンポンタン。
「いや、でもオレさ。万祐の頬っぺた、マジで好きなんだけど」
だ、かっら、それはコンプレックスだと前々から言っとろうが!!
ぷにっ。
イタっ。
っぷに。
っイタ。
ぷに、ぷにっ。
「うっざぁーい!!」
手を払い落としたった。
「すんげ、キモチぃけど?」
……ぷにぷに。
懲りないわねっ。
ぷにぷに……。
やめんか。
……ぷっにぷに。
「やめんかー!!」
「イヤだね」
うおっ!?
やめるどころか、エスカレート。
「ね、ねえ?」
無理だわよ。
これ以上は、無理だわよ。
本当に……ん!!?
「っかー、たまんねー!!」
なんですとー!?
だから、どうして、アンタが欲情するポイントってワタシの頬っぺたなわけ!?
やっぱり、ねえ……?
シモブクレフェチなの?
ちょっとだけ、訊くのが恐い。
またそれを、落ち着いて確かめるには、ちょっと時間を先伸ばしにしなくてはならないみたい。
「……」
「……~♪」
んもう、どうにでもしてちょうだい……バカっっ!!




