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ごめんな、アサギ

 身体が勝手に動いた、自宅へ戻らず隣のトモハルの家へ。玄関開けて、二階の奥の部屋へと侵入。

 ドアを壊す勢いで開ければ仲良く隣に座って、アイスを食べているトモハルとマビルが目に飛び込んできた。……いつまでアイス食ってんだ、こいつらは。イラっときた。

 が、あちらも同じ思いだったようだ。あからさまに嫌そうな顔をした二人だが、構わず突き進んで正面にどっかり座り込む。

 相手が口を開く前に、こちらから。


「貴美恵に妙な事吹き込んだの、憂美と友紀だとよ」


 だからどーした、というわけでもないが。

 憶えてるか? 憂美というのは俺が小学生の時に騙された、あの女で。友紀というのは、俺が小学校の時に大好きだった彼女の親友だった女だ。

 ……最凶コンビ、俺がお前らに何をした。


「でも、友紀の記憶は消えてる筈だ。それに、ミノルの悪評を流しても得しない」

「でも、貴美恵は名前を呟いたぞ」


 トモハルと話してたらアイスを食い終わったマビルが、髪を指で捻りながらぼそっと。


「友紀? 誰?」


 あぁ、知らないかもしれない。トモハルが説明を終えると、マビルは爽やかな笑顔を浮かべて小首傾げて、一言。

 ……頼むからその笑顔はやめてくれ、俺の好きな元カノに似てるんだ。流石双子。


「叩き潰してきてイイかなー? 思い出した、おねーちゃん苛めた女だよね」


 駄目だ、やめろ。

 慌ててトモハルがしがみ付いて必死に宥める、大きな溜息をついて俺は床に寝転がった。噂を流されても気にしないから、どーでもいいんだけどさ。

 何か、すっきりしないものが心に残った。

 好きだというなら、貴美恵。俺の事、信じればよかったのに。不安なら、訊いてくれればよかったのに。


「俺、友紀に会いに行ってみようか?」

「余計な事すんな、バーカ」


 トモハルが控え目に言うからさ、不貞腐れてそっぽを向いてぶっきらぼうに返事。

 お前が行くと、マビルがついて行く。マビルが行くと、後は言わずもがな。

 ……瞬殺しそうなんだよな、うん。


「でもミノルはそんなことしていないじゃないか、何処かで正さないと」

「いーよ、別に。そういう男に見えるんだろ? 好きじゃなかったのは事実だしさ。ただ告白されてなんとなく付き合っていただけだし。そんな噂を跳ね除けられる女じゃないと、俺にはつり合わないと思うし。好都合かもな」


 押し黙ったトモハル、気まずい空気が漂い始めたから俺は退散、退散、っと。起き上がって手を振って、家に帰った。

 ゲームやりながら考えた、あぁそういえば、数年前俺もこのゲームの主人公のように魔王を倒しに行ったんだった。あの時はどうしてこの俺が、命を張ってまでして勇者にならねばならなかったのか、本当に悔やんだもんだ。

 でも、こうしてみると。楽しかったんだよ、な。よかったなぁ、あの時代……って思える。

 あれがなかったら、きっと僅かでも俺の大好きだった彼女とは恋人になれなかっただろうし。トモハルともここまで親しくなってないだろうし、他の奴らだってそうだ。

 ただ。

 勇者にならなければ、今も俺の大好きな彼女は生きていたんじゃないかと思う。同じ高校に通っていたんじゃないかと思う、会話ができなかったとしても。

 あー、やだやだ!

 結局俺は、どーやら未練たらたら、彼女の事を忘れていないらしい。

 と、気づいたっつーの。

 まぁ。……机の上に、俺の物が散乱している汚い机の上に。

 ガラでもなく写真立てが置いてあるんだが、何気に勇者一同で買ったものなんだが。

 飾ってあるのは勇者一同が写っている写真なんだが、その裏に。

 ……俺と当時の恋人だった頃の大好きな彼女が二人で、一緒に写っている写真がさ。隠してあるんだよなー、馬鹿みてぇ。

 あぁそうか、俺は。まだやっぱり好きなのか。

 写真を引き抜くのが面倒で、というわけじゃないんだ、どうしてもそこから外す事が出来ない。

 時折、不意にそれを手にとって眺めている自分がいる。どうにもならないけど、な。

 どうにもならないけど、謝りたい。

 ゲームを中断、立ち上がって写真立てから写真を引き抜いて眺めてみる。

 照れくさそうに強張った顔つきの、お世辞にもかっこいいとは言えない俺と、その隣に。とても不似合いな美少女が、頬を赤くして笑ってた。


「あの時、本当にごめんな」


 妙な意地を張らずにあの時、俺が謝ってたら、多分。……許してくれたんだろう。そうしたら、もしかして、また笑ってくれたんだろうか。

 そのまま写真を持ってベッドに転がり込む、腕を伸ばして電気に透かしながらぼっけぇ、と見つめていた。

 知らず、口が動いて名前を呟いていた。


「ごめんな、アサギ」

お読み戴きありがとうございました、まだ続きます。

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