表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

”好き”ってよくわかんねぇ

【注意】

DESTINY本編をお読みの方へ。

現時点で第三章以降のネタバレを含みます、ご注意ください。


 暫くして、その彼女は五個も年上の彼氏が出来た。全然俺と似ていないと思ったけど、トモハルいわく。

「自惚れ高くて、目つきの悪いところがそっくり。あと、性格が捻じ曲がってる気がする」

 ……なんだとよ。


「……くん、実君! 聞いてる?」

「あ、あぁ、わりぃ」


 貴美恵の声に現実に引き戻された、そうだった、俺の初恋のあの子はもう居ない。


「ね、明日の日曜日何処行く?」

「んー、何処でもいいけど、あんま金ないからなー。どっか行きたいとこでもあるわけ?」

「……実君、私の事、本当に好き?」


 溜息を吐いた、女はどうしてこうも『好き』を言わせたがるんだ。


「あぁ、好きだけど」


 俺はそう返した。告白されたら、その子と付き合う、でも、同時は懲りたからもうしない。二股は絶対にかけない、って、決めた。

 けれどもまあ、返答が気に食わなかったんだろう、貴美恵は怒って一人で帰った。

 ……女、面倒だ。好きだって言ったろ、今。

 面倒だけど、何故か彼女は作るんだよな、俺。寂しいのかな。

 

 え、何この話、まだ続くって?

 ……面倒だ。とりあえず、続くってよ。はいはい、続きね。続き、話す話す。


『今日から親、旅行でいないんだ。うち、来る?』


 と、貴美恵からのメールが授業中に来た。唐突だな、おぃ。

 ともあれ、その日は一旦家に帰ってなんかまぁ、色々と”色々と”支度をして貴美恵の家に行く事に。夕飯も作ってくれるってよ、いいね、流石手芸部、家庭的だ。

 トモハルと部活後並んで門を出ようとしたら、妙に門が騒がしい。隣で悲鳴を上げて、トモハルはそこへ突っ込んだ。


「駄目じゃないか! 危ないから家にいないと」

「だって、暇だもん」


 解っていたから別に驚かないけど、そこには俺の元カノの双子の妹が立っていた。マビル、っていう名前だ。手にトリプルアイスクリーム、二つ。周囲の男に買ってもらったんだろう、安易に想像できる。


「ええい、お前ら、散れ、散れ!」


 トモハルは必死で群がっている男達を追い払い、マビルの頭を軽く撫でている。


「食べる? 買ってもらったの」

「そんなアイスばっか食べたらお腹壊すだろ……。一個貰う」

「だって、六種類食べたくて。これでも頑張って選んだんだから」

「じゃあ、一緒に少しずつ食べようね」


 過保護、万歳。トモハルは俺に嬉しそうに手を振ると、手招きしている。

 深い溜息を大げさに吐きつつ、眉間に皺を寄せて俺は歩み寄った、嫌なんだよ、この二人。


「で、なんでここにいるわけ?」


 俺の問いにマビルはアイスを嘗めながら、俺には目もくれずに返答。


「トモハル。おば様達が町内の寄り合いで飲み会だから、ご飯一緒に食べてきなさいって。お金貰ったの」

「そういうことか……。何が食べたい?」

「パスタ」

「ん。というわけで、ミノル。またなー……一緒に喰うか?」


 この二人と食べていたら、消化不良を起しそうだったので、丁重に遠慮しておく。

 トモハル、異常に過保護なんだよな。気持ちは、解らんでもないが。

 二人は仲良さそうに手を繋いで、そのまま消えていった。周囲の男達がそろそろ俺に尋問を始めるだろうな、と思ってたら案の定だ。


「あの子、誰?」


 いい加減、聞きなれた質問。


「トモハルの家に住んでる子」

「ど、同棲!? なんて羨ましい!」


 俺はマビルの性格とか好きじゃないが、容姿だけならピカイチだから、気持ちは解らんでもない。横目で騒いでいる男達を見ながら、爆弾でも、一つ。


「同じ部屋で、同じベッドで、手を繋いで眠ってんよ。あいつら」


 別に何もないみたいだけど、な。絶叫の中、俺は帰宅。忙しいんだ。

 着替えとか”色々”用意して、行きのコンビニで菓子とかも買って貴美恵の家へ。玄関を開けると、途端に良い香りが鼻へと流れ込んできた。


「いらっしゃい!」


 エプロン姿で出迎えてくれた貴美恵に、思わず後退した、想像以上に、可愛かったから。顔が赤くなる、目をそらす。軽く会釈。

 右往左往している俺の手を引いて、キッチンへと案内してくれた。すでに夕飯は出来上がっていた、驚いた、本格的な和食だ。

 てっきり、カレーとか定番のものだと思ったのに。


「前、和食が好きって言ってたから」


 はにかんだ笑顔、こういうのは嬉しい。手を洗って席に着けば、暖かい味噌汁にご飯が出てきた。蕪のひき肉あんかけに、出汁巻き卵か、悪くない。

 何より、一生懸命作ってくれたことが嬉しかった。お代わりしたら、喜んでくれたが、美味しいから当然だ。

 ……あの元カノも、料理が上手だった。俺の為に作ってくれたクッキーは、食べてあげられなくてトモハルが食べたんだったか。しんみりしてきたので、軽く頭を振る。

 二人でテレビを見ながら、買ってきた菓子をつまむ。家にあったビールも拝借した、ワインも焼酎も日本酒もあったが二人ともビール。

 未成年とか言わない、そこ。明日は学校も休みだし、夜中まで愉しむ。

 朝方、隣で眠っている貴美恵に布団をかけた。軽く伸び、流石に裸で外に居られる程暖かい空気じゃねぇから、布団に再び潜りこんで瞳を閉じる。

 布団の中で、手を繋いでみた。特に何も感じない、当然か。

 出会ってまだ三ヶ月程度、相手は俺を知っていても俺は知らなかった。

 トモハルみたいに相手と四六時中一緒に居るわけでもないし、知らないことのほうが多い。

 まぁ、一緒に居ろと言われても今は無理だぞ……そこまで居たいとは思えないから。

 それでも、俺を好きだと言ってくれたから、懸命に喜ばせようとしてくれるから。応えてやりたいと、思う。

 好きになれたらいいなと、思う。好きだと口で言うけれど、彼女だから”好き”なんだろうけれど。


「好き、か」


 天井を見つめて思い出すのは、あの日のことだ。小六の時の彼女の、事だ。


「い、一緒にプール行かないか?」


 照れて、どもりながら俺が言ったら、一瞬驚いて硬直していた、その後直ぐに綺麗な歯を見せて笑ってくれた。


「行く!」


 大きく頷いてくれた、で、その後。


「ミノルは、甘いものあんまり好きじゃないよね」

「良く知ってるな」

「甘さ控え目のクッキーなら、食べてもらえる?」

「控え目じゃなくても、食べるよ」

「ふぇ?」

「お前が俺に作ってくれたなら、な、何でも食べるって言ってんの! 当たり前だろ、嬉しいんだから」


 手にしていたペットボトルを、彼女は落としそうになったから思わず受け止めた。顔を真っ赤にして口をパクパクしていたから、可愛くて可愛くて。

 手から零れ落ちたペットボトルを、そっと手の中に戻そうとしたら手と手が触れたんだ。びっくりして、柔らかくて、なんだか熱く感じて二人して手を離したもんだから、盛大に音を立ててペットボトルが床に転がった。

 炭酸だったから、ボトルの中でシュワシュワと泡が出てた。慌てて拾って、もう一度手渡した。


「落とすなよ、開けると吹き出て来るぞ」

「あ、ありがと……はぁう」


 手がまた触れたから、またまた彼女は驚いて落としそうになった。だから苦笑して、強引に手を握って持たせた。なんだか触れたそこが熱くて、でも、心地良くて暫し照れながら見つめあったな、と。 

 もじもじ俯いたり、俺を見たり、落ち着きの無い彼女が可愛くて、頭を撫でた。飛び上がるくらい驚いて、また「はぁうー」って妙な声を出してたから爆笑。

 腹を抱えて、爆笑。笑いながら、まだもじもじしている彼女の手をとって散歩に出た。その辺を歩いただけだけど、満足だった。

 夕日を見ながら思ったんだ、早くまた会いたい、と。ちらりと振り返ったら、微笑して夕日の赤で頬を染めている彼女を目が合った。

 穏やかに微笑むから、手を強く握って走り出した。可愛すぎて、恥ずかしくて、照れくさくて、でも手は離したくなくて。「好きだー!」と、叫びたい衝動に駆られたんだ、子供だったけどさ。


 ……もし、あの時の俺の感情を”好き”だというのなら、今、貴美恵に抱いている想いは残念ながら”好き”じゃない。

 こうして手を繋いでみても、キスをしても、抱いてみたって、あの時のなんだ……胸が熱くなって思わず笑顔になって、無性に走り回りたいような高揚感は……こない。

 けれど、そんな想いを貴美恵に抱きたいとは思う。好きになりたい。

 今日、エプロンで出てきた貴美恵を見て、少し、あの時の感情が湧き上がった気がした。

 貴美恵を、好きになりたい。そうしたら、喜んでくれるだろうし、何より。

 トモハルじゃないけどさ、好き同士って……いいもんだ。

 誕生日が来月だと聞いたし、近いうちに、何かプレゼントでも選びに行ってみるか。


 と、そんな俺の想いとは裏腹にー。数週間後、破局した。わけもわからず、一方的に振られた。

 別にショックは受けなかったが、意味がわからん。


「何したわけ、ミノル。先輩方の噂になってるよ、『門脇実はヤリ逃げ常習犯だ』って」

お読み戴きありがとうございました、だらだらと続きます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ