嫌いな食べ物ってあるから
起きてみると朝になっていた
顔に日光がかかって眩しい
かなり泣いたから目がはれていてなんだか目が開けづらい
服の裾で目をこする
「あ…服…」
―汚れてたんだ
小さく呟く
昨日の夜ウサギさん達を食べてその後カメさんとお話して…
アカズキンのことを…
・・・・・・・・
カメさん
いなくなってる
足を引きずりカメさんがいたところを見ると私のナイフとフォークが置かれていた
そっか
あの町を出るとき投げ出してここまできたんだ
「馬鹿みたい」
自分を罵る言葉
いつも言われ続けてたから自分で言ってみてなんだか新鮮な感じ
「馬鹿みたい」
もう一度言ってみた
フフフフフフフ
貴方の言ったとうりだよ
貴方の言ったことで間違いなんてないよ
目を閉じ
記憶の糸を探る
・・・・・
・・・・
・・・
花畑で二人の幼い少女が話している
一人は金髪の少女
もう一人は黒い髪の少女
二人ともおそろいの白いワンピースを着ているけど
服の大きさが違う
金髪の少女は半袖、黒い髪の少女は長袖の服を着ている
そしてその隣には七十歳後半になるであろうオバアサンが椅子に座っていた
その人からはその年独特の優しさがにじみ出ていた
そして、オバアサンが立ちあがり
「さぁさぁ二人とも、今日はお花摘の練習ですよ
立派なアカズキンになるには綺麗にお花を摘めないといけませんよ
では、綺麗にお花を摘んできてね」
そう言ってオバアサンはまた椅子に座った
二人の少女は花を摘みに行った
数十分後
金髪の少女が帰ってきた
手には色取り取りの沢山の花があった
「まぁ、可愛いお花だこと」
オバアサンは少女の頭をなでなでした
この少女は分かっている
どうすればいいのかを
「わぁい、ありがとう
このお花はオバァチャンにあげるの〜」
とびっきりの笑顔で渡す
そうすれば、ほら
オバアサンもとびっきりの笑顔で返してくれる
それから
沢山の時間オバアサンとお菓子を食べていた
沢山の時間オバアサンとお話していた
とても幸せな時間
私も入りたい
私もアノナカに入りたいの
でも、それは叶わない
オバアサンが立った
「さて、貴方とのお喋りは楽しいけれどもう一人の子ともお喋りがしたいわねぇ」
合図だ
いそいで行かないと
私は走ってオバアサンのところへ行った
ハァ、ハァ・・・
「遅くなって、ごめんなさい」
オバアサンは微笑んでいる
でも、この顔は…
「いいのよ、それよりなぜそんな格好なのかということとお花はどうしたのか教えてくれない?」
今私の白かったは服は土の色で茶色に汚れていた
それにオバアサンに頼まれた花もない
「それは…」
答えられない
むしろ答えてはいけない
私が答えないでいると
金髪の少女に向かって
「貴方は家に帰っていなさい」
と優しく言った
「分かりましたぁ」
と言いオバアサンと私に軽く会釈をし、そして私にか見えないよう笑いかけ家に行った
金髪の少女がいなくなると
オバアサンの顔から笑みが消えた
無表情じゃなくて
怒っているのと楽しい顔が混ざった顔
私ができないから
オバアサンは怒っているしこれから私にすることはオバアサンにとっては楽しいことだから
「なんで貴方はいつもそうなの?」
「なんであの子はできるのに貴方はできないの?」
毎日私達はやることがある
それをオバアサンの気に入るようにやればいいけど私にはできない
できないから
毎日オバアサンは私だけにアカズキンになるための練習をしてくれる
はじめにオバアサンが私のほっぺを叩いた
最初はびっくりしたので痛みはないけど何をされたか分かり始めた頃痛みが襲ってくる
「ごめんなさい、ごめんなさい」
ひたすら謝る
でもオバアサンはやめない
今度は私のお腹を蹴った
「げほっ、―げほっ、げほっ」
痛い
食べたものを吐き出しそうになる
でも
もしそうしたらオバアサンの機嫌が悪くなって余計にやられる
「ごめんなさい、ごめんなさい」
いつの間にか私は泣きながら謝っていた
「ひっく、えっぐ、ごめんなさい、ごめんなさい―」
涙で視界がぼやけていたけど間違えてはない
ここから少し離れたところで
あの、金髪の少女がさも愉快そうにこちらを見ていた
今から数時間前
オバアサンがお花を摘んできなさいといったので私は花を摘みに行った
私とあの少女は別々の方向へ行った
しゃがんでオバアサンの気に入りそうな花を見つけるため一生懸命探した
ようやく自分でも納得のいくような出来になった時にはだいぶ時間が経っていた
立ち上がると足が痺れてなかなか上手く歩けない
ようやく痺れがとれオバアサンのところへ行こうとして二、三歩歩き始めた時
「ねぇねぇ、どこ行くのぉ?」
後ろから声がした
止まってはいけないのに足が止まってしまった
歩くことが出来ず、振り向くことさえも出来ない
―来た
分かっていた
この少女がこのまま私を行かせてくれるはずがない
「まさか、オバァチャンのところじゃないよね〜?」
声の主が私の正面にきた
「そんなお花を持ってぇ?」
金髪の少女…
「あのね〜わたしぃ、オバァチャンと沢山お話したいから―」
そう言って呆然と立っていた私から花を取り上げ
そして
その花を地面に叩きつけ足で潰した
「にゅふふふふふふ
これでオバァチャンのところ行けないね
でもわたしいいことしたでしょ
だってこんな花もらうオバァチャンが可愛そうだもん
にゅふふふ
ってあれれ〜泣いてるのぉ?」
「えっ?」
手をあてて見ると
泣いてた
また悪いことを言われてしまう
服の裾でごしごし擦る
でもなかなか涙は止まらない
「私泣いてなんか―キャッ」
さっきまで正面にいた少女がいなくなって私の後ろにいき思いっきり背中を押した
急な衝撃に私が堪えられるはずもなく無様に転んだ
転んだために私の白い服は汚れてしまった
「にゅふふふふふふ〜
あー!!!
いけないんだぁ〜
お洋服汚してぇ
これでオバァチャンのところに行ったら怒られちゃうね〜
ねぇ、どうする?
これでもオバアチャンのところに行くぅ?」
答えは決まっていた
私の答えに金髪の少女は愉快そうに笑い
「お前がアカズキンになれるはずがないんだよ」
という言葉をはき、走っていった
もちろん
オバアサンのところへ
オバアサンともっと一緒にいて美味しいもの食べてお話ししてずっとずっと一緒にいたいの
だからもっと私を見て
―オバアサン
・・・・・・
小さい時の思い出でいいことなんてなにもなかった
目を開ける
やっぱりなかなか人は変わるものじゃないんだね
そこには小さい時と変わらない泣き虫の自分がいた
服の袖で顔を拭いた時思い出した
服が汚れたままだったんだ
洗いに行かないと
川を探すため少し歩いた
そして小さな川を見つけそこで服を洗った
服を脱ぐと白い肌に無数の青い痣があった
この痣を見られないためにいつも私は長い服を着ていた
あのころオバアサンは
―貴方のためにやっているのよ
―貴方だけのシアワセの青い薔薇だからよ
―だれかに見せると貴方に幸せが来なくなるのよ
だから・・・
ダレニモミセテハイケナイ
と、そう言われていた
だからいつも長い服を着ていた
この青い薔薇は幸せの青い鳥みたいにいつか私に幸せを届けてくれると信じて疑わなかった
そう、私をアカズキンにしてくれると
「フフフフフフフ、馬鹿みたい」
・・・・気が付けばまた泣いていた
止まっていた手をまた動かした
時間が経ったためかなかなか汚れが落ちなかった
「汚れが取れない?」
洗うのに時間が経ったためだろうか
最近汚れが取れにくくなっている
強く擦ってもなかなか取れないのでそのままにすることにした
「…このくらいなら分からないよね」
服を洗い、乾いた時にはもう日が傾いていた
ナイフとフォークを持って立ち上がる
私は昨夜カメサンとお話して思い出した
アカズキンのことを
「今回も私の邪魔をするんだね」
いつも貴方は私の邪魔をしてきた
貴方が私からなにもかもを奪っていっても私は泣いているだけだった
でももう泣いているだけの私じゃない
アカズキンに同じ絶望をあじあわせるためにこの世界から貴方の友達がいなくなるまで私は食べ続ける
「―そう、みんな…」
なんだか、こんなかんやで大変ですね
一気に2話なんか連続でやるもんじゃないですね
少し成長しました