パンと星の夜
パンと星の夜
むかし、あるところに冬になるとたくさん雪のふる町がありました。
赤レンガでできた家がならび、冬になると道はいつも冷たい雪がつもっていました。
町のすみに小さなパン屋がありました。そこには7歳になるエリスという女の子が住んでいました。
エリスは毎日、おとうさんとおかあさんが焼くパンのにおいで目をさまします。あたたかいにおいで、どんなに寒い日の朝でも、そのにおいでおなかがすいてぱっと目がさめます。
冬になると町はしずかになります。外は雪がたくさんふり、お友達たちもみんな自分のおうちにいます。エリスはパン屋のすみの椅子にすわって本を読んだり、窓から雪をながめてすごしていました。冬になると、つまらなくはないけど、ちょっとたいくつな同じような日がつづいてさびしくなるときがありました。
とある夜のことです。空にはいつもよりたくさんの星がでていました。どの星もきらきらしていてとてもきれいでした。
「お星様きれいだな、私をどこかへ、ここからつれだしてくれないかしら」
エリスがそう言ったときでした。ひとつの星が空からゆっくり家の前へ落ちてきたのです。星は雪の上にそっと落ちてきました。エリスはびっくりして、星のもとへかけていきました。星は、とても小さく、あたたかく光っていました。
「だいじょうぶ?」
エリスがたずねると、ほしはそれにあわせてピカッと光りました。
エリスは星をそっと手にのせました。星は、焼きたてのパンのようにあったかく、手のひらの中でぬくぬくしていました。その夜、星はパン屋の中ですごし、かまどのそばで気持ちよさそうに光っていました。
つぎの日の朝、ふしぎなことがおこりました。パンがいつもよりふっくらおいしく焼けていました。においも、いつもよりいいにおいでした。
パン屋に来た人たちは「今日はなんだかいつもよりあたたかいね」と言いました。
星がいるあいだ、パン屋は少し明るくなりました。パン屋に来た人たちもよく笑い、エリスも毎日が楽しくなりました。
ところが、7日目の夜のことです。星の光が少しずつ小さくなっていきました。
「もう行っちゃうの?」
エリスがきくと、星は、やさしく光りました。
星は、ゆっくりと空へ帰っていき、満開の夜空の中でいちばん明るく光りました。
星はいまも空からエリスと町をみまもっています。
冬はまだつづくけど、エリスはもうさびしくありません。
パンのにおいとともに思い出す、小さな星の輝きを。




