雨の聖女と虹のきらめき
連載開始直前ですが、思い切って"冬の童話祭"に参加してみました。
雨の日に、明日は晴れたらいいのにな!という気持ちで書いたプロットを童話にした作品です。
よろしければ、読んでいただけると嬉しいです。
グランマニエという王国がありました。
ほとんどが砂漠で、砂あらしが吹き、畑はひびわれて、水もありません。誰も住めない場所でした。
ある日、雨の聖女が通りかかります。
彼女は立つだけで雨をふらせました。
大地はみずみずしくなり、やがて人が集まって、ステキな国になりました。
――そして、何百年も経ったいま。
ユイールという女の子が生まれました。
雨の聖女の生まれかわりです。
ユイールの周りは、いつも雨で満たされます。国が潤って、草木もよく育ちます。
でも大人たちは、少しだけ晴れの日がほしい。だから、月に一度だけ、聖女の光をみんなに届けるためだと言って、ユイールを遠くへお出かけさせていたのです。
「神父さま、わたし、お出かけしたくない!」
「わがままを言ってはならん」
今日もユイールはしかられました。
「ミレナが教えてくれたの。わたしがお出かけした日は、いつも晴れてるんだって」
「そんなはずはない」
神父さまは、強く否定しました。
でも数日後、またミレナが言いました。
「ユイール、本当よ。あなたが遠くに出かけた日は、雲がひらいて、お日さまがのぞくの。
だから、みんなで洗濯物を干すのよ!」
ユイールは目をぱちぱちさせました。
「あの日だけじゃないの? わたしも晴れが見たい!」
「許可できん」
神父は、今回もユイールをしかりました。ユイールを大事にしたいのに、ユイールの雨を止める方法がわからない。だから大人たちは、ユイールを傷つけないように雨の聖女の周りは常に雨であることを黙っているのです。
「そんな……どうして?
わたしも青空が見たい……!
わたしだけが知らないなんておかしいわ」
ユイールの目に、ぽろりと涙が出ました。
どうして自分だけ、きらきらの空を見られないのか。
どうして神父さまは、出かけなくちゃダメと言うのか。
ユイールは、悔しくて、神殿の庭に飛び出しました。
そのときです。
「泣いているの?」
振り返ると、金色のマントをまとった男の子が立っていました。
「はじめまして。ぼくは 太陽の王子 だよ」
「たいよう……の?」
ユイールはおどろいて涙が引っ込みました。
「どうしておどろくの?」
「だって、初めて聞いたわ」
「雨の聖女がいるんだ。太陽の王子がいてもいいだろ?
今回は、ぼくの国にも雨の聖女様に来てほしくて、お願いに来たんだ」
王子は、光を集めるように、にっこり笑いました。
その笑顔は、とてもあたたかくて――
ユイールは、お日さまの日差しを知らないはずなのに「太陽」を近くで見た気持ちになりました。
「ぼくは、いつでも晴れを呼ぶことができるんだ。
“きらきらの空”がね」
ユイールの胸の中に、ふわっと光が広がります。
ユイールの心はドキドキ。
「明日の朝、またここにおいで。大人たちには内緒でね。晴れを見せてあげる!!」
翌朝、二人はこっそり抜け出して、丘の上に立ちました。
灰色の雲のあいだから、お日さまの光が顔を出しました。
なんと、空いっぱいに 二本の虹 がかかっています。
「わあっ……!」
「見てごらん、ユイール。
きみの雨と、ぼくの晴れが、空で出会ったんだよ」
王子はユイールの手を握り、にっこり笑いました。
「……こんなステキな空を知らなかったなんて、
わたし、とっても損してたのね」
雨も、晴れも、そして虹も――
ぜんぶ一緒に楽しめる日があることを、心から喜びたい。それなのに、ようやく世界の半分を知ったユイールの心はざわめきます。
「ふたりで力を合わせると、こんなにきらきらになるんだ……」
ユイールは思いました。
――いつか、青空の下でピクニックしてみたいな、と。
それはまだ未来の夢。
だけど、心の中に小さな光が輝いていました。
「また会ってくれる?」
「もちろん! 世界には、雨も晴れも必要なんだよ」
未来を祝福するように、空に架かる虹の下で、ユイールはそっとほほえみました。
お読みいただき、ありがとうございます。
初めて童話を書いてみました。
これからも色々なことにチャレンジして、皆さんに楽しい物語をお届けできたら嬉しいです。




