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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ある昼下がりの交流

初投稿です。拙い文章ですが見てやってください。

「……こんにちは」

「こんにちは」

 公園のベンチに腰掛けた青年に私は声をかけた。

「何をしてらっしゃるんですか?」

「桜を見ていたんだ」

「……へえー……こんな昼間から?」

 今年、私はこの公園の近くの高校に入学した。新学期が始まって2週間、私は友達ができなかったためコンビニでおにぎりを買い、桜が咲くこの公園へとお昼を食べに来たのだった。

「ええ、まあ、何もすることがなくてね。君はそこの高校の生徒さん?」

「そうですね。……することがないとは?」

 私は失礼だと思いつつも、この男性とはもう会わないだろう突っ込んでみた。それは好奇心もあったけれど、ほんとのところはただ、一人が寂しくて話し相手が欲しかっただけなのだ。

「そうだねえ……人に話すことではないと思うけれど、高校に落ちちゃってねぇ」

 青年は、はあっとため息をつきながらうつむいて頭を抱えていた。

「もしかして……そこの高校ですか?」

「いや、そこじゃないよ。もっと遠くのね」

「はあ~そうなんですね。……ちなみにどこですか?」

 我ながらやばいやつだな……失礼すぎるだろと思いつつも好奇心は止められない。けれど、青年はどこか遠くを眺めて私の質問には答えなかった。お互いに黙り込み、沈黙が続く。

「じゃあ、その……私は行きますね……?」

「ああ、もう会うことはないだろうけど、さようなら」

「さっさようなら。……その元気出してくださいね、頑張ってください」

 ボッチの私はこの空気に耐えられるはずもなく、コンビニで買った開封していないおにぎりを片手に足早に去っていった。



「その……こんにちは」

「こんにちは」

 あれから1か月後、私は相変わらずボッチ生活を謳歌していた。今日は屋上前の踊り場でお昼を食べようと朝買ったパンを手に向かったところ、カップルと思わしき男女がいちゃいちゃしていたので回れ右した。正直、滅べクソがなんて思ったけれど、声の小さい陰キャである私は声高に主張などできるはずもなかった。そんなこんなでお昼を食べる場所を奪われた私は、高校前の公園へ向かったところいつか見た青年がいる。前と同じで青年はベンチに腰掛けて、禿げた桜の木をぼーっと眺めていた。

「ええと、今日はどうしたんですか?」

「あー、実はバイトをクビになってね」

「ええっ! 働いてたんですか!」

「まあね」

 私は思わず大きい声をあげる。周りにいた小鳥たちがバサバサと飛んでいって、道路を歩いた老婆が驚いてこちらを覗いていた。私はやってしまったと心の中で叫んで、口を抑える。

「ごっごめんなさい。今のはその……ごめんなさい」

「いいよ、いいよ。全然気にしてないから」

 人付き合いの経験がない私は、考えたことをそのまま口に出すして後悔することがよくある。その上、返事に対して上手く返せないことも多々あった。

「……その、ちなみになんですけどぉ、なんでやめちゃったんですか?」

 こういうところなのだろう、私に友達が出ない理由は。それでも気になってしまったのだからしょうがない。私は遠慮がちに青年に尋ねた。

「いやー、恥ずかしいんだけど……店長に逆らっちゃってねえ」

 青年はアハハと後頭部を右手で撫でながら、照れたように笑った。

「……何かあったんですか?」

「……どうしても許せないことがあったんだ」

 青年はどこか遠くの空を眺めながら、はあっとため息をついた。

「…………」

 私はずっと立っていて疲れてしまったので、青年の隣に腰を降ろして続きを促す。青年は隣に座った私を気にすることなく口を開く。

「その店長さぁ、他のバイトの女の子にセクハラしてて。それに文句言ったら、クビになっちゃった」

「へえー、立派じゃないですか。その女の子も助かったんじゃないですか?それに……私だったら何もできなかったと思いますし」

 何か起きた際にすぐに行動できる人は素直に尊敬する。……私は行動できないとわかっているからこそ純粋にすごいと思った。

「いや、何も変わらなかったよ。その女の子もやめっちゃったし。」

「それは……」

 それは何とも救われない話だ。この青年はクビになって、女の子はやめてしまって。青年が声をあげた意味などないじゃないか。

「まあ、いい経験だったと思うことにするよ。まだ人生も長いしね。」

 青年は本当に気にしていないというように笑った。この人は強いなあ。私とは大違いだ。

「そういえば君、それ食べないの?」

 青年は私の右手に持っているパンを指さした。

「……食べていいんですか?」

「えっ、逆に食べないの? 時間なくなっちゃうよ?」

「……すぐに食べます」

 私はいただきますと手を合わせてパンを頬張った。今日のパンはイチゴのジャムが入っていて甘くておいしい。

 黙々と食べ続けて、気づけば遠くで予鈴が聞こえてきた。私は立ち上がってお尻をはたいていると、足元に影が差す。空を見上げると少し曇ってきていた。

「今朝は晴れてたのになぁ。じゃあ、そろそろ行きますね。……えっと、あなたも頑張ってください」

「ああ、またね。」

「てへへ、はい!」

 私は急いで公園を出て信号を待つ。その足取りは公園に来る前よりも軽く、つい「ふんふんふーん」と鼻歌を口ずさんだ。

 またねって言われちゃった。初めてだなあ、そんなこと言われるの。恥ずかしくて笑っちゃった。話はあんまり弾まなかったけれど、学校みたいに息苦しさを感じることなんてなくて。そんなことを考えていたら、信号が青くなった。間に合うかなこれ。

 私は走って学校へ戻ろうと一歩足を踏み出した途端、キキーっと何かこすれるような音がしたかと思うと右側に衝撃が走った。痛みなんて感じる間もなく私の視界は真っ暗に染まった。……これで、学校行かなくてよくなるかなぁ。誰かの怒号と叫び声が鼓膜に突き刺さって、私の体は何も考えなくなった。

ご覧いただきありがとうございます。

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