責任の狭間で 1
画家のソリタより、抜粋して載せています
夕飯を食べた後、ソリタを家に送り届け、俺とミナコは車で帰路に着いていた。
「……」
「大丈夫?ユウくん」
「えっ」
「ソリちゃんのこと?」
ミナコは俺のことをよく見ている。
バレていないと高を括っていても、俺の感情を鋭く見抜いてくる。
「……」
「ソリちゃん、楽しそうだったね」
正直、俺は複雑だった。
小山君と話をしているソリタの横顔はいつになく生き生きしていた。
だから複雑だったのだ。
◯●
俺が高校受験の年、両親が死んだ。
その日はソリタの誕生日だった。
買い物帰り、両親が乗った車が飲酒運転の車と衝突した。助手席に居た母親は即死、運転していた父親は2日後に息を引き取った。相手も重傷を負ったが、死ぬこともなく、後遺症すら残らなかった。
事故の直後、俺らと親戚の中で唯一連絡の取れた叔母さんが警察に呼ばれた。
「……さまのご遺体でお間違いないですか」
白い布を剥がれ、母親の顔が露になった。
母親の遺体を前に、俺は愕然とした。
俺がよく知っている優しい母親の顔ではなかった。
「お母さん、お母さん」
横に居たソリタは泣き崩れていた。
叔母さんはその場では泣かなかったものの、後で壁の影で泣いていた。
父親はその2日後に母親の後を追うように亡くなった。