兄と妹 番外編
兄と妹 2を少し改稿しました。
ソリタと別れ、家路に着くために車に乗った。
車を走らせてから少し経った頃、晴れている雲の隙間から雨が降ってきた。
あの日、朧気な記憶の中の両親が言った。
「ユウ君も、お兄ちゃんだね」
9歳の時に妹ができた。小さな手を握りしめた日を今も覚えている。ふにゃあふにゃあと泣くその赤ん坊は、ソリタと名付けられた。
「お兄ちゃん、ソリタを守ってあげてね」
母親と父親がよく言っていた口癖だった。
ソリタは誰に似たのか、元から絵が上手かった。
「お花描いたよ!」
幼稚園にもなると、歳の割にはかなりの画力がついていた。絵を描いて僕らに褒められるのが嬉しいのか、スケッチブックに花や草木の絵を描いて見せてくることが増えた。
母親曰く、幼稚園でも友達をほったらかしにして絵を描いているとかなんとか。
内気な性格も相まってなのか、ソリタは絵にのめり込んでいった。
◯●
俺が高校受験、ソリタが小学校に上がる年のことだった。
「行ってくるね」
両親は揃って家を出た。
歩いて数分のスーパーに2人揃って買い物に行くと言って家を出た。
この日はソリタの誕生日、雪の日だった。
「ママ、パパ、帰ってこないね……」
「……」
思い出したくない悪夢の日だった。