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I am Aegis Mors 最終章  作者: アジフライ
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第31話【失うモノ】

15年前に死んだと思われていた両親と再会した清火。

一時は喧嘩になるも、 ザヴァラムの計らいで何とか和解する。

しかし……その瞬間、 街中に無数の魔物が発生した。

「大変です会長! 街全体が……魔物の集団に襲われています! 」

「何だと! 発生源は! 」

「それが……その魔物からは……」




「攻略者達が所有する通信機の反応が……」




『I am Aegis / Mors 最終章』……

拳一の報告を聞いた一同は戦慄する。

まさか……攻略者達が……魔物に……?

すると清火は嫌な予感がする。

「もしかして……Sランクの攻略者も……」

そう言う清火に拳一は

「はい、 全てではありませんが……ほとんどのSランクの攻略者達から通信がありません……」

そう報告をした。

この事態は日本だけではなかった、 世界各地にて同時に攻略者達が魔物へと変異しているという報告が後を絶たなかった。

すると清火は焦った様子でスマホを取り出し、 雷に電話を掛ける。

しかし……何度電話しても呼び出しに誰も出なかった。

……そんな……まさか……

清火の嫌な予感が的中すると同時にあることに気付く。

「……ローナが危ない……! 」

そう呟くと清火は部屋を飛び出す。

それを見たイージスとザヴァラムは後を追う。

修次郎は事態の把握を急ぐと言い、 本部に残る事となった。

…………

清火は建物の屋根を伝ってギルドへと向かう。

「早く……行かないと……ローナが! 」

するとイージスとザヴァラムが並走する。

「清火、 どうしたんだ! ? 」

「私の友達が……友達が危ないの! ! 」

「まさか……攻略者がそこに! ? 」

そして三人は急いで清火のギルドへと向かう。

道中、 魔物化した攻略者達が三人に襲い掛かってくる。

その魔物は攻略者が使う武器を持っており、 使い慣れている様子だった。

気付くと街中には大量の魔物が暴れ回っており、 街の人々は逃げ惑っていた。

清火は黒月を出し、 向かってきた魔物に銃口を向ける。

しかし……

「ッ……元々人間だった魔物に手は出せないよ! 」

清火は殺すことを躊躇する。

人は何人も殺した事はある……だけど……罪も無い人を……私は殺したくない……!

するとイージスとザヴァラムが魔物を斬っていく。

「……汚れ役は俺達に任せろ……行け! 」

「人なら昔、 大勢殺している……今更躊躇する私じゃないわ……」

「父さん……母さん……ごめん、 ここは任せる……」

そして清火は戦闘をイージスとザヴァラムに任せ、 ギルドへ急いだ。

殲滅ギルドへ到着した清火はそこで固まってしまった……

ギルドの建物が半壊していたのだ……

炎が燃え盛り、 ほとんど瓦礫の山となっていた。

……あぁ……そんな……

「ローナ……ローナ! 」

清火は火の海の中へ入っていく。

ローナの研究室があった場所へ向かうとそこは瓦礫で埋まっていた。

清火は慌てて瓦礫の山を崩す。

「ローナ! いるなら返事して! 」

清火は呼びかけながら瓦礫を崩す。

そして……

瓦礫の中で倒れるローナの姿を発見した。

半身は大火傷しており、 足を片方失っていた。

その心臓は……止まっていた……

「ローナ……あぁぁぁ! 」

清火は急いで治癒の魔法を掛け、 ローナの傷を修復した。

そしてローナの体が元通りになる。

しかし、 ローナは目を開けない。

「ローナ……そんな……目を開けて……ローナ! 」

駄目……駄目……また……失うなんて……いやだ……

清火は大量の涙を溢しながらローナの体を揺する。

「ローナ……ローナぁぁ! 冗談はやめてよ、 また何か変な発明品使って死んだふりしてるだけでしょ! そうでしょ! ねぇ……そうだと言ってよ! ! 」

清火の顔は涙でぐしゃぐしゃになっていた。

感情も……

ローナは相変わらず眠ったように目を閉じたまま、 動かなかった……

そこにイージスとザヴァラムが到着した。

二人は清火を見て全てを察した。

「……そんな……」

「……」

すると悲しむ清火の前に人影が近付いてきた。

それは……

「……まさか……雷……さん……? 」

黒いオーラを身に纏う人型の怪物……

片手にはローナが雷に渡した刀があり、 電気を帯びていた……

清火はそれを見て怪物が雷だと確信する……

イージスとザヴァラムは武器を構えようとすると清火は立ち上がり、 二人を止めた。

「……私がやる……私が……やってあげないと……」

そう言い、 清火は片手に黒月を出し、 銃口を雷に向ける。

ここで私が止めてあげないと……雷さんが沢山の人を殺す事になってしまう……

清火と雷は睨み合っていると

『ゴォォォォォン……! ! 』

今まで動きが無かった空の亀裂が音を立て、 一気に大きくなった。

イージスとザヴァラムはそれを見て察する。

……そう……影が目覚めたのだ……

亀裂からは今までに無い凄まじい圧を感じる。

それはこの世界……いや……文字通り『全て』を押し潰さんとするほどの規模だった……

清火はその気配を感じると二人の方を見る。

「……先に行って……その剣でしか影は倒せないんでしょ……私はいいから……」

「……分かった……無理はするな……」

「あとでね……」

そしてイージスとザヴァラムは清火と分かれ、 亀裂の方へ向かった。

「……雷さん……私が分かる……? 」

二人を見届けると清火は雷の方を見る。

雷は獣のように唸りながら刀を収め、 居合の構えを取る。

そんな雷を見て清火は悲しそうな表情を浮かべる。

「お願い……やめて……私に引き金を引かせないで……」

清火は必死に雷に訴えかける。

しかし雷は聞く耳を持たない……

……あぁ……あの子が言ってた未来って……この事だったんだ……

清火は徐にあの少女の言葉を思い出す。

「そう……やらなくちゃ……いけないんだね……」

清火がそう呟いた次の瞬間、 雷は稲妻を纏いながら清火の方へ突進してきた。

それと同時に清火は引き金を引く。

黒月の弾は一直線に雷の方へ飛んで行き、 雷の胸を捕らえていた。

雷は刀を振り、 弾丸を斬ろうとする。

しかし、 弾は刃を砕き、 そのまま雷の胸を貫いた。

心臓を貫かれた雷はそのまま倒れてしまった。

すると黒いオーラが雷の体から離れ、 雷は元の人間の姿に戻った。

「ッ! 雷さん! 」

それを見た清火は黒月を放り投げ、 雷の元へ駆け寄る。

そして急いで治癒をさせる。

しかし、 何故か傷が塞がらなかった……

どうして……これもあの影の力のせいだって言うの……?

傷が塞がらず、 雷の胸から血が次々と流れ出す……

すると雷は目を開け、 清火の顔を見る。

「……モルス……さん……」

「雷さん! 」

雷は自身の体を見ると全てを悟る。

「……そう……私……死ぬのね……」

「……雷さん……私……」

涙を溢す清火に雷は微笑み掛ける。

「どうか泣かないで……こうするしか無かったんでしょ……? 私を止めてくれてありがとう……モルスさん……」

雷は血に濡れた手を清火の顔に添える。

相変わらず泣きじゃくる清火。

それを見た雷は

「……杭原 愛……」

誰かの名を呟く。

「……え……? 」

「私の名前……杭原 愛よ……」

「どうして……急に……? 」

「最後ぐらい……本名を知って欲しいと思って……私、 友達と言える友達も……いなかったし……」

雷は昔、 攻略者になった頃から常に上を目指すばかりだった……それは自分に興味を示す事が無かった親の影響もあったのだろう……誰かに認められたい……誰かに自分を知って欲しい……そういった承認欲求が彼女をSランク攻略者へと至らしめたのだ……しかし……雷が本当に望んでいたものは違った……

友達……彼女は……心から信頼できる友を望んでいた……

しかし……Sランクとなった彼女には……誰も近付こうとしなかった……彼女がその事に気付いた時には遅かった……

「……私ね……あなたと出会った時……何だかこの人となら……友達になれそうだな……って……思ったんだ……ごめんね……今まで勝手に付きまとって……」

そう言う雷に清火は首を横に振る。

「そんな事ない……私……杭原さんと次元迷宮の攻略するの……楽しかった……」

清火は泣きながらそう言う。


強大な力を得てから、 彼女にとって仲間とはただの足手まといとしか思っていなかった……否、 そう思うように言い聞かせていたのかもしれない……


孤独が何よりも怖かったからだ……


幼い頃に両親と離れ離れになり……恋心を抱きつつあった相手も戦いの中で失い……


力を得ても尚……唯一心から信頼していたゼヴァが彼女から離れていった……


どんなに力を得ても……どんなに守ろうとしても……彼女の元から大切な人が消えていく……


ならばいっそ……自ら遠ざけてしまえば……そう思っていた……


だが、 彼女の心は嘘を付けなかった……


何もかもが変わり果てた彼女にとって、 何一つ態度を変えずに共にいてくれたローナと雷は……


いつの間にか『親友』となっていたのだ……


雷は微笑む。

「……ねぇ……モルスさん……最後に……あなたの本名を……教えてよ……」

清火の名を聞いてきた。

「……御門屋……清火……清い火と書いて……清火……」

すると清火は涙を流しながらも笑顔を見せる。

「そう……素敵な……名前ね……清火……」




「友達になってくれて……ありがとう……」




その言葉を最後に雷は崩れるようにぐったりとし、 目を閉じた……

清火は声を出さなかった。

そして清火は雷の亡骸を寝かせると立ち上がり

「……私は……何も守れない……」

清火は自身の無力さに打ちのめされ、 その場で項垂れる。

どんなに強くなっても……守りたくても……結局……大切な人は皆、 私の傍からいなくなってしまう……こんな事になるならいっそ……


もう……何もしない方が……


すると清火はあの頭痛に襲われる。

……あぁ……またか……

そう思いつつ清火は激痛で気を失ってしまった。

暗い意識の中……


清火はまた目の前にあの少女がいる事に気付く……


……今度は何……慰めにでも来たの……必要ないよ……そんなの……


完全に気力を失っていた清火は少女に素っ気無い態度を取る……


『……お姉ちゃん……まだ戦いは終わってないよ? ……お父さんの所へ行かなくていいの……? 』


心配そうに少女は清火に言う。


行ってどうするの……重要なのは父さんの剣……私よりも遥かに力のあるあの二人なら大丈夫だろうし……私が戦う理由はもうない……正直……もう……どうだっていいの……


そう言う清火に少女は


『お姉ちゃん……私がお姉ちゃんを選んだ理由……解る……? 』


突然そんな質問をしてきた。


……分からないよそんなの……どうせあの時、 私の次元迷宮に対する復讐心に目を付けたってだけでしょ……


少女は首を横に振る。


『……時が来たんだね……』


そう言うと少女は清火の頭に触れる。


『……お姉ちゃん……教えてあげる……私は誰で……お姉ちゃんは……一体何者なのかを……そして思い出して……』




『あの時お父さんと交わした……約束を……』




すると清火の意識は更に深いどこかへと落ちて行った……

続く……


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