72.聖騎士としての矜持(67)
数多ある作品の中から選んでいただきありがとうございます。 <(_ _)>
5/22連載を始めて約1年、楽しんでいただけるよう頑張って書いておりましたが、改めてガイドラインを読み返しましたらなんと!『歌詞の転載』で思いっきりアウトじゃね?ってなりまして。引っ掛からないよう手直しします!ので、更新が暫く止まるかもです。ごめんなさい(>_<)
「ば、ばけもの!化け物だ!何でこんなこと出来るんだ?!」
聖騎士ルセーニョが喚き散らす。アスタロトが不快に感じたのか僅かに眉を寄せる。俺はアスタロトをルセーニョから庇うように彼の前に立つ。俺としてはこんな小者に構って欲しくは無いのだが。すると彼は
「この世界の魔法でしょ?」
と俺の背中越しにルセーニョに冷たく言い放つ。
聖騎士ルセーニョがビシッとアスタロトを指差して
「ま、魔法だと?はっ!さてはお前、魔女だな!」
確かに中性的な顔立ちでしかも綺麗で麗しくて整っていて人間離れしていて、マーリオが『女神』と称するのも理解できる程なのだが。
するとアスタロトが
「さっきから聖女だの魔女だのと勘違いも甚だしい。見せた方が良い?」
と俺に訊いてきた。
「は?何を?いいや駄目だ見せるな減るぞもったいない!」
彼は言ったら直ぐ実行する。俺はぐわっとアスタロトに向き直り、考える間も惜しんで必死で止める。
「ガンダロフほどじゃないけど、たくましい胸筋でも見せたら納得するかと」
彼は、ふんっ!と拳を腰に当てて胸を張る。
「胸筋」
雄そのものではないのか。良かっ
「あ、いや駄目だ駄目だ絶対に駄目だ!」
彼の抜けるように白く滑らかでしっとりとした肌はとても美しく神秘的ですらある。『男性』と認識されても別の意味で執着されたら、いや、彼の無防備な姿を見る事が出来るのは俺だけだ!他の奴等の前に晒すなど絶対に許されない!!
「んー、私としては他人が私のことどう思っていようとあまり興味無い。どっちでも良いか」
……………………そう…か。興味無い、か。彼は自分の人外の美しさを持つ姿について頓着しないからなぁ……。
聖騎士二人はさすがにルセーニョを窘めに掛かったようで、同胞を弔った恩人に対して失礼だ、魔法では無く奇跡の部類だ、これ以上の愚行は見逃せない、等々。それに対してルセーニョはこれは何かの陰謀だ、あんな怪しい術が奇跡なものか、お前等国に帰ったら処罰だ、そして
「聖騎士としての矜持はどうした!」
お前が言うか?!
ルセーニョ以外の皆の気持ちがひとつになった。聖騎士二人も唖然として二の句が継げずに沈黙したのをどう捉えたのか、ルセーニョは言い負かしてやったぞと得意気な表情を浮かべている。
「貴方は、祈らないの?」
アスタロトはルセーニョにそう問い掛ける。奴は途端と不機嫌に顔を歪ませるがアスタロトは構わず続ける。
「そこのお二人は此処で真っ先に祈りを捧げた。此処に来る途中もマーリオ君や会った人達に感謝や労いの言葉を掛けてた。それを見てとても嬉しく感じたのだけど、それは聖職者としては当然のことだと私は思ってる」
アスタロトはルセーニョを真っ直ぐに見据える。口調は淡々としているが、腹に据えかねるのか密かに冷気が漂う。
「貴方は、私が見ている間には一度も祈っていない。感謝も労いも無い。……聖騎士って、何?」
「聖騎士とは、神に仕える者、場所を守護する者のことだ!よって、それらを害するお前達を排除せねばなるまい!」
とルセーニョは改めてアスタロトをビシッと指差す。本当に失礼な奴だな。むっ、と苛ついた俺の横に庇っているはずのアスタロトが、すいっ、と移動して聖騎士達と対峙する。抑えつけた怒気が彼の中で渦巻いているように感じるのだが。
「どのような方法でかは後で訊くとして。お二人も同意見?」
まだ落ち着いて問答が出来る状態か。暴走したらその時に止める。だから今は彼のやりたいように振る舞ってもらおう。
やや青ざめてはいるが聖騎士二人はアスタロトをしっかりと見据える。
「いや、それは、行為として現れる事柄であって、我々聖騎士の信条は『創主である神への忠誠、神に仕える者への忠義、弱き者の守護』だ」
彼等の信条とこれまでの振る舞いは俺が想像する聖騎士と大きな変わりはない。ルセーニョとは普段の考えから違うようだ。
「では今の状況で、私とガンダロフは排除対象?」
アスタロトが続けて問う。が
「そんなことは当たりま」
「黙れ。貴方には訊いていない」
ルセーニョが口を挟んだ途端にアスタロトの中の怒気が発散され冷気となり辺りを冷やしていく。被害を被るのがルセーニョだけなら放っておくのだが。
「ロト」
俺はアスタロトの頬を撫でる。柔らかいがひんやりと冷たく感じることに胸が痛む。
「気持ちはわかるがこのままではマーリオが風邪を引く。折角生い茂った草花も元気を無くしてしまう」
アスタロトは周囲を見渡し、そこでやっと自分がもたらした冷気によって周囲が凍り付いていることに気が付いたようだ。空気中に漂う氷の粒に見惚れて黒い瞳が煌めいている。険しい顔つきもなかなか乙なものだが、やはり好奇心に満ち溢れたキラキラした瞳の彼が好ましいな。
落ち着いて話をしようと、場所をこれから案内する予定の『奥の宮』の応接室に移動する。つもりなのだが。
「何故!私は!入れないのだ?!」
聖騎士ルセーニョが玄関ポーチの手前で弾かれて奥の宮の敷地に入れない。
「自称聖騎士だから?」
アスタロトが張った結界に阻まれているのだという。他二人の聖騎士達もマーリオも、元貴族男ベルシームも何の障りもなく通過していることから、おそらく彼は敵認定を受けたのだとか。さもありなん。
「ジョーイ、ジョニー、聖騎士ルセーニョの案内を頼む」
俺はベルシームの手伝いをしていた二人に指示を出す。
「此方の言い分を聞かない等騒動を起こしそうであれば、客室にお茶の用意と共に閉じ込めて良し」
「承知しました!」「しました!」
二人は俺にピッと敬礼すると
「案内します!」「します!」
とジョーイがルセーニョの襟首を掴んで速攻で引きずっていった。
「放せぇーー……」
ルセーニョの叫び声がすぐに遠のく。それにしても、行った先は……馬場か?馬の紹介でもするつもりか?
読了、ありがとうございます。
<(_ _)>
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