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聖者のお務め  作者: まちどり
71/197

71.慰霊碑前で(66)

 数多ある作品の中から選んでいただきありがとうございます。

 <(_ _)>

 いつもより短いです。


「はい、そうです。言葉としては心がこもっていれば何でも良いってレアンさんは言うのですけど……でも、正式な文言は僕にはよくわからなくて」

 マーリオが文言を決めきれないのは経験・知識の乏しさからかその真面目さ故か。

「そういえばアーリエルさんも北の大きな木に毎朝祈りを捧げていると言っていたが」


 『元気ですかーっ?元気ですよーっ!頑張れーっ!頑張ろーっ!』


 突然タケシの元気な掛け声が脳裏に蘇る。いや、あれは、何か違うだろ。


「何でも良いって言われても戸惑うだけで言葉が出てこないより、何か例文があればお祈りもしやすいよね、小っちゃい子のなむなむみたいなのとか」

とアスタロトが手を合わせてなむなむと唱える。

「なむなむ、は解らんが、レアンにでも考えさせるか?だが奴も今は忙しい身だしなぁ」

 祭事関係は担うことが出来る者が他におらず今のところレアンに頼りきりだ。


「あ、文言だけであればアーリエルさんとルゥさんに考えてもらおうよ。時間はたくさんあるでしょうし、小っちゃい子用と成人前の子用と成人用」

とアスタロトが指を3本立てる。彼等であれば知識も時間も存分にある。うむ、それは良い考えだ、と俺は頷いた。

『ということで伝達よろしく!』

『承知!』

 念話でアスタロトが剣に指示を出す。剣から北の住居にいるユキチ経由でルゥさん達に依頼するのだろう。マーリオが「ルゥさんって、誰?」と言いたげに顔を顰めるが、アスタロトは端から説明する気は無いようなので、俺も沈黙した。



 ※※※※※



 白虎と聖騎士達が到着したところで、案内を開始する。案内役のマーリオを先頭に俺とアスタロトが後ろからついて行く。聖騎士二人は『聖都』の神殿では俺達の案内で恐縮していたのか言葉少なめだったのが、此処ではしきりにマーリオに質疑応答を繰り返しそれを熱心に書き留めている。あぁ、『聖都』の方はジョウガ王国騎士団に聞き取りを任せたのかもしれないな。その分こちらを重点的に調査するというところか。…聖騎士ルセーニョの興味無さげな態度は変わらんが。


「これが今回犠牲になった方達の慰霊碑です」

 遺体を焼いて埋めた場所は、アスタロトの奇跡の影響か既に丈の短い草が生えていてかわいらしい花もちらほらと見受けられる。

「ここに遺体を埋めたと聞いたが、説明と違うではないか!」

 他二人の聖騎士達が膝を折り頭を垂れ手を組んで静かに祈りを捧げる横で、聖騎士ルセーニョがマーリオに詰め寄る。

「た、確かに此処で葬儀を行いました」

「だが焼いた跡も埋めた跡もどこにも見当たらないぞ!」

 疑問に思うのは仕方が無い状態なのはわかる。が、最初に口から出る言葉がそれか?こいつには犠牲になった者達を悼む気持ちは無いのか?


 祈りを終えた聖騎士の一人が秘かに溜息をついて二人に割って入る。

「聖騎士ルセーニョの言うことも尤もなのだが、何か仕掛けやからくりでもあるのか?」

 聖騎士の問い掛けの口調は柔らかくて、マーリオのこわばっていた表情が少し緩む。

「仕掛けとかからくりというのではないと思うのですが、アスタロト様がお祈りを捧げた後に地面が少しずつ緑色になりまして」

とマーリオがアスタロトを伺い見ると聖騎士達も彼に注視する。


 アスタロトはぱちりと瞬き

「大地が元気になりますようにってお祈りすると、草生える」

と淡々と説明する。通常通りの対応だ。だがマーリオも聖騎士達も同じ様に眉を寄せるのを見て彼等が理解出来ていないのが判ったのか

「見てて」

と慰霊碑の前に立つと、地面を踏みしめ両手の平を胸の前で合わせてぐっと力を込める。そして

「萌えろっ!」

の掛け声とともに手の平を合わせたまま両手を空に向かって押し上げた。


 ぶわわわわwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww…………


 途端に草が勢いよく生い茂り、精々踝ほどまでしかなかった草丈が埋め戻した場所を区切っていた膝丈ほどの縄張りを覆うほどに伸びる。辛うじて我々の後方には効果が及ばなかったようだが、前方は見渡す限り草花の大合唱が聞こえてくるかの如くその濃い緑をわさわさと揺らしている。


「…聖女様?」

 誰かが消え入りそうな声で呟く。

「やっぱり白いワンピースかぁ。あ、白いローブでもそれっぽい?」

 着たいのか?確かに似合うだろう。彼の綺麗で麗しく整った顔立ちとしっとりと艶やかで柔らかな長い黒髪、何より長い睫毛に縁取られた新月の澄み切った満天の星空のような黒い瞳に見つめられたら、その神々しさに誰もが魅入られてしまうだろう。そんな事態になれば誰もが彼を求め、望まずとも俺と引き離されることにでもなれば…そんなの、耐えられるわけがなかろう?!

「似合うだろうから俺以外の奴には見せられないな」

 アスタロトがかわいくて綺麗で麗しくて凜々しくて美しくて格好良くてお茶目で優しくて強くてかわいいのは、俺だけが知っていれば良いことだ。


「だがこれは…明日から厩舎の馬達に除草を手伝ってもらった方が良くないか?」

 アスタロトの祈りを得た草花は元気が良すぎてそのうち慰霊碑を覆う勢いだ。新鮮な飼い葉と考えれば馬達は喜んで食するだろうから、暫くは餌の調達には困らない。

「ガンダロフも出来るよね、たぶん綺麗なお花畑になる」

 アスタロトが期待に満ちた眼差しを俺に向ける。…花畑?

「…いや、出来たとしても花は苦いだろう?馬達が好んで食べるとは思えんが」

 それ以前に、草を生やすことが俺にも出来る、と?


「そっか~、そうだねぇ…でも、見てみたいなぁ、ガンダロフのお花畑」

 彼はそう呟き生い茂る草を眺める。彼が言うのだから、確かに俺にも出来るのだろう。彩りを添えるという意味でもやってみる意味はあるか。はぁ~、と俺は大きく息を吐き心を落ち着かせて

「少しでも亡くなった者たちの慰めになればよいが」

とアスタロトがやったのと同じ仕草で色とりどりの花が咲き乱れる様を想像して力を込める。


「~~~っ、はっ!」


 気合を発して両手を押し上げる。と


 ぽぽぽぽぽぽぽぽぽ……………


 黄色や白やピンク、赤、紫…色とりどりの大小様々な花が縄張りの中一面に咲き乱れた。


「うわぁ、綺麗…」

 アスタロトが感極まって上げた声が掠れる。潤んだ黒い瞳と相まって仄かに色香が漂う。マーリオと聖騎士達も、おぉ、凄い、と感嘆する。だが。


「ば、ばけもの!化け物だ!何でこんなこと出来るんだ?!」

 聖騎士ルセーニョが喚き散らす。アスタロトが不快に感じたのか僅かに眉を寄せる。俺はアスタロトをルセーニョから庇うように彼の前に立つ。俺としてはこんな小者に構って欲しくは無いのだが。すると彼は

「この世界の魔法でしょ?」

と俺の背中越しにルセーニョに冷たく言い放つ。


 読了、ありがとうございます。

 <(_ _)>

 今までは原稿用紙8枚以上の文字数を目安に投稿をしておりましたが、それよりも文字数減らして書けたら投稿の方が良いのかも、と今回から試験的にやってみます。お付き合いの程よろしくお願いします。

 続きが気になる、面白い、と思われた方は是非スクロールバーを下げていった先にある広告下の☆☆☆☆☆を★★★★★に、ブックマーク、いいね、感想等をお願いします。

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