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聖者のお務め  作者: まちどり
38/197

38.高級な朝食?(35)

 更新が遅くて申し訳ございません。

 m(_ _)m


 俺が驚きのあまり固まっていると、アスタロトは

「離れがたいし、いろいろ訊きたいのだけど、まずは朝ごはんの用意をしなきゃだね」

と微笑む。


 離れがたいし、いろいろ訊きたいのは俺も同じなのだが、いや、離れたくないのだが。こんなに近くから微笑まれてもう今日はこれでお終いで良くないか?いやいや起きたまま寝てるような呆けたことを考えるんじゃない!


 混乱を極めかけている俺の腕の中から、アスタロトはあっさり抜け出して身支度を整え始めた。


 カーテンの向こう側はもう大分明るい。



 ※※※※※



 ♪あ~さ焼け~の~……♪


 今日もアスタロトの歌声は絶好調だな。そして見事な朝焼け、方角がわからなければもう一日終わったんじゃないかと錯覚してしまいそうだ。


「「おはようございます!」」

 アスタロトと二人、厨房の方から外に出たら、朱雀と玄武が人型で厩舎の清掃をやってた。


「おはよう、お疲れ様」

「無事にお目覚めになってなによりです」

と朱雀が彼に喜びを伝える。外周には異常は無く、馬達も大きな木の方へ移動したと言う。


「今日は雨が降るかもしれないね。恵みの雨だ」

 アスタロトの言う通り、空には雲が拡がる。機会があれば馬さん達にも伝えてね、と彼は言い残して、俺達は建物から少し離れた。朝ごはんの為にマジックバッグの検分の再開だ。




「もう、怪しいところは無さそう」

 アスタロトはマジックバッグの開けた口から手を突っ込んで、怪しい気配を探っていく。が、それらしい感じは全く無いという。


「で、美味しそうなのがいっぱい!」

 一覧表を眺める彼の目が輝いている。良い笑顔だ、が。

「厨房で出した方が良くないか?」


 収納物リストには食材の他に幾つかのセットがあって、朝食、ランチ、豪華ディナーとか、調理・盛り付け済みで出せば即食べられる状態で収納されていた。


「今日の朝ご飯はこれにしようよ。ルゥさんとアーリエルさんの分もあるし、この世界の食事がどんな物か、すっごく興味ある!」




 毒味を兼ねて、まずは捕虜二人に朝食セット①と②を1つずつ食べてもらう。天幕に行き、アスタロトは奴等の目の前でバッグの口を開けて出来たてで湯気が出ている物を並べていく。それを声も無く口をポカンと開けて目で追う捕虜二人。①と②は目玉焼きかオムレツか、ベーコンかウィンナーかの違いで、後はロールパンとサラダとコンソメスープは同じだ。


 配膳を終えると彼は

「どうぞ、召し上がれ」

と満面の笑みで奴等に勧めた。


 捕虜二人はお互い顔を見合わせて思い切り困惑している。毒味とはいえ、この待遇の良さは普通じゃないよな。だが、その警戒はたぶん無駄だぞ?


「さっさと食べろ。せっかくの温かい料理が冷めるぞ」

と俺が勧めると、ひぃっ!と慄いて食べ始めた。……ちゃんと味わえよ、たぶん美味いぞ?おそらくこの世界では最高級の朝食だぞ?


 予想通り毒も無さそうなので、見張り役の白虎に後始末を頼み、天幕を後にする。




 さて、俺達も朝ごはんにしよう。食堂でアスタロトがウキウキと一覧表を眺める。どれにしようかな?とは言っているが、今回は①か②のどちらかだぞ?ルゥさんとアーリエルさんの分は彼らの部屋まで青龍に持っていってもらい、俺とアスタロトは朝食セット①②をお互い分け合い、食べ比べてみた。高級、というのは材料もそうだが、調味料がふんだんに使われていてまぁ塩気が強くて味がくどい。


「でも、昨日ガンダロフが作ったスープ、食べてみたかったなぁ」

 ポツリとアスタロトが呟く。

「君の作ったものに比べたら、何かが足りないような。何と言えば良いか、予想通りの味というか」

「聖獣達には大好評だったんでしょ?」


 聖獣達は俺達がマジックバッグの朝食セットを食べると話していた時に

「では昨晩のスープの残りは我々が頂きます!」

と直ぐさま五人で分けて食べてしまった。大した量は残っていなかったのだが。


「きっと美味しかったんだよね」

「俺としては君と同じ材料で同じように作ったはずなのに、やはり何かが足りない気がして」

「……経験、かな?」

 彼のことだから無意識に美味くなるまじないでも掛けているのでは?『『美味しい』は正義!』とたまに拳を握り締めて呟いているし。


 体格差があるのだからと、俺に多めに分けてもらい完食。美味いのだろうがやはり味付けが濃く、二人して水をたくさん飲んで誤魔化した感じがした。


 今日の予定としては、情報収集と分析、今後の方針を決める、と大まかに確認していたところでアスタロトが何かを思い出す。

「そういえば……」



 ※※※※※



「なんだ、あれは……。いや、聞いた通りだが」


 思わず口から零れた俺の呆れた声が教会の地下に響く。赤白の球状の捕獲器が設置してあるはずの台座の上には、見慣れない白いカード。赤い図形と黒い文字で、色味だけは捕獲器と同じだ。


「50点」

「は?」

 アスタロト、それは何に対しての採点だ?

「文面がキャッツカードにそぐわない」

 キャッツカードが何かはひとまず置いておくとして

「文面?『前担当者の残滓の捕獲、感謝する。監理者分身体』とあるが」

 彼は少し驚いて俺を見る。

「読めるの?」

「元いた国の言葉で書いてある」

「私が遠見で見た時は漢字で堅苦しく書いてあって」

と彼がカードに目を戻すとそのまま固まった。


「……かんじ?」

と俺が呟くと

「文面が変化した。内容は同じだけど」

「昨日の葉の手紙と似た感じだな」

 彼の驚きようから察するに、内容は同じでも印象はかなり異なるのか。彼に合わせるように変化しているのだろうが。


「……この世界の神秘に触れる事を洩らされたくなかったのかも。これに関しては何か出来る訳では無いから、ルゥさん達にも報告してこの件はお終いかな」

 アスタロトはそう結論づけて、俺に微笑んだ。俺も同意見だ。


 これはこのまま記念に残しておこう、と何も手を付けずに教会を後にする。ちなみにつるぎはボールとカードがすり替わった瞬間に気付いたが、分身体さんの仕業と直ぐに判った為俺達の休息を優先した、とのことだ。



 ※※※※※



 ルゥさんとアーリエルさんの部屋へ訪問する。二人はソファで寛いでいたようで、立ち上がって軽く朝の挨拶等を交わして二人並んで対面のソファに座る。


「具合はいかが?大分顔色が良くなりましたね」

 アスタロトが青龍が入れてくれたお茶を飲みながらアーリエルさんの身体の調子を覗う。


「はい。おかげさまであれから朝まで久しぶりにぐっすりと眠れました。こんなにすっきりと目覚めたのはルゥと離れてからは初めてです。本当にありがとうございました」

とアーリエルさんは喜色満面の笑みで答えた。昨日の悲愴な雰囲気は微塵も無い。


「私だけではなく彼女にまでその慈愛に満ちたお力を使っていただき、この、感謝の念を、どうお伝えしたら良いか……本当に、ありがとうございます」


 読了、ありがとうございます。

 <(_ _)>

 現在、諸事情により夜更かしが出来ません。楽しみにしていただいている貴重な方々には大変申し訳なく思っております。更新の頻度は低くなりますが、完結まで気長に書いていきますのでお付き合いの程宜しくお願い申し上げます。

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