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聖者のお務め  作者: まちどり
178/197

178.イトくんを連れて帝都へ(174)


「そんな貴方に!ぜひぜひ提案したいことが!!」

 アスタロトが機嫌良く笑顔で言い放つ。怪しいことこの上ない。レアンは俺に「俺、何やらされるの?」と不安げな眼差しを向ける。ロトにしてみればただ遊んでいるだけのようにも思えるのだが、不憫な奴だな。


「ロト。此処ではなく後で落ち着いてから話をした方が、レアンの理解も得られるのではないか?」

 俺がその話を後回しにするよう提案する。

「うん、まぁ、そのうち?確かに後でも良いのだけど」

「では帰宅後、夕飯時にでも話をしよう。おそらくはレアンの今後に関することだろうから」

 きっと忘れる、と小さく聞こえたから、そんなに重要な内容ではないのだろう。


 帝城に行くのは俺とアスタロトとイトくんと聖獣達。他の者達は帝都神殿で引き継ぎだ。が、何故かアスタロトはレアンにしつこく絡む。

「レアンも連れて行きたいのだけど」

「胃が痛くなるようなことを言わないでください」

 ロトは物事にあまり執着しないたちだと思っていたから、珍しいな。レアンは鳩尾みぞおちを擦りながら

「さっきの『提案したいこと』と関係があるんですか?」

と彼に訊ねる。俺も知りたい。


「子守を頼もうと思って」

とアスタロトがイトくんを見ると

「俺がですか?白虎殿がいるじゃないですか」

とレアンもイトくんを見る。イトくんは二人に注目されたのは何故だろう、と小首を傾げる。


「今じゃなくて、将来的にってこと。だから、帰ったらお話ししようか」

 ロトの言葉に、よくわからんといった感じでレアンも小首を傾げた。


 帝城から案内役としてルトーリィ殿下が馬車で来ていた。

「ルト兄様ぁ!」

「イト!元気いっぱいだな!」

 イトくんがルトーリィ殿下に駆け寄ったのを抱き上げて、殿下はくるくると回っていた。感動の再会だな。


 だが

「申し訳ないのだが、俺達は馬車には乗らない」

と俺はルトーリィ殿下に断りを入れる。

「しかし、イトをどうやって連れて、はっ!魔法で瞬間移動ですか?!」

 殿下の目がキラリと光る。

いいや、魔法は魔法だが、空を飛んで行く」

「空。そう言えばあの時、イトは四阿あずまやまで空を飛んできたのだったな」

 殿下はその時のことを思い出したのか、遠い目をした。




 アスタロトと俺はバイク、イトくんとルトーリィ殿下は白虎に乗って、空を飛んで登城する。おぉ~!凄い!とイトくんの後ろに乗ったルトーリィ殿下が興奮して歓声を上げる。怖がらないのだな。流石兄弟、イトくんが初めて白虎に乗って空を飛んだ時と反応が同じだ。


 だが

「良かったのか?」

 アスタロトは白虎のみならず、聖獣達に誰かを乗せるのはあまり好まないと思っていたのだが。

「ん?白虎が良いんだったら、良いんじゃない?だったら、乗せない。でしょ?」

 まぁ、それもそうか。


 白虎に乗ったルトーリィ殿下の先導で、城門を飛び越え帝城の玄関前に直接乗り付けた。

「此処から更に歩くよね」

 イトくんが疲れないように、大型犬程の大きさになった白虎にイトくんを乗せて歩いて行く。


 城内案内役の騎士の先導の後ろで、目線の高さが近いからかイトくんが日頃どんなことをしているかを楽しそうに話すのを、ルトーリィ殿下がニコニコと嬉しそうに聞いている。


 たまに擦れ違う者達は城に務めている文官か?一様に驚愕の表情で、慌てて端によって頭を垂れる。しかし、やはりかなりの距離を歩かされるのだな。警護の為には仕方のないことだが、経路を憶えさせない為にわざと同じ装飾の廊下と扉と、右に行ったり左に行ったり。イトくんを初めから白虎に乗せたのは正解だったな。


 同じ様な装飾の扉を幾つも過ぎて、アスタロトがそろそろ飽きてくるのではという頃に両脇に騎士が立っている扉の前で止まる。


 騎達と中にいる者達で遣り取りした後、扉を潜る。城の中ではそう大きくない広さの、華美でも豪華でもなく重厚で品の高さが覗える装飾と調度品、此処は応接室か。


「ようこそおいでくださった!」

 奥の一人用ソファに座って待っていたらしいタレッグル皇帝陛下が、立ち上がって笑顔で迎え入れる。皇妃殿下、サボウル殿下、レキュム殿下、ラドリオ殿下が同じ様に立ち上がって笑顔を向ける。


「お待たせしました」

「お招きいただきありがとうございます」

 簡単に挨拶を交わして、イトくんを何処に座らせようかと考える前に、ルトーリィ殿下がひょいっとイトくんを抱き上げそのままサボウル殿下の隣に行ってしまった。困惑した顔でイトくんはアスタロトと俺を見る。アスタロトは隣で小さく♪ドナドナド~ナ~、ド~ナ~…と口遊むが。


『白虎、イトくんの膝上で待機』

『承知!』

 少しでもイトくんの不安な気持ちを無くしてやりたい。気休めにしかならないかもしれないが。白虎は子猫程の大きさになって直ぐにルトーリィ殿下の足元に行き、皆が着席するとルトーリィ殿下の膝上に座らされたイトくんの膝上に当たり前って感じで座った。


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