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聖者のお務め  作者: まちどり
171/197

171.迷子では?(166)

 更新が遅くなり申し訳ございません!

 m(_ _)m

 3/1加筆修正しております。




 午前中は南方砂漠で作業を行って、塩の城で昼飯を食べてから大神殿に戻る。俺が麒麟に乗って外周を見回ると言うと、アスタロトは神官宿舎内食堂にルセーニョの様子を見てくると一人でさっさと行ってしまった。


 柵の周りを隠密形態ステルスモードでぐるりと飛び回ってから、聖樹の精のマオが眠っている辺りに飛ぶ。


 地面に降りると、丈の短い草を撫でるように爽やかな風が吹き渡る。

「静かだな」

 空気が少し冷えた感じがする。が、寂しさをあまり感じないのは、其処に確かに居るのが判っているからか。


 此処より西は草木も生えない高い山々が連なり、その向こう側がダイザー帝国だ。その山々を南下すると南方砂漠、北上すると北の住居に行き着く。


「麒麟は、理想郷とはどういった所だと思う?」

 薄雲がゆっくりと流れていく様を眺めながら尋ねる。

「主とますたーが幸せを感じる場所が私共の理想郷です」

 即答か。

「…確かに、ロトが幸せだったら、俺も幸せだ。俺達が何時までもずっと幸せでいられるように、頑張らなければな」


 アスタロトがいる大神殿の方を眺めると、大神殿の建造物群を見下ろす形になる。そういえば昨日は突然周囲が、世界がアスタロトの気配に満たされて驚いた。甘くて優しくて柔らかくて暖かくて、幸せな気配。その一番濃い所に彼がいて、俺に笑みを向けていたのが凄く嬉しくて。


 彼がやったのと同じ様には出来ないしやるつもりも無いが、周囲の気配を察しながら意識を伸ばしていく。アーリエルさんとルゥさんがいて。こまどり部隊がいて。集塵機ズ(ジョーイとジョニー)がいて。いろんな者達の気配を擦り抜けて、アスタロトを捉える。彼が俺に気付いて微笑むのを感じて、身体の芯から暖かいものが溢れて全身を駆け巡る。熱い。俺の、俺だけの愛しいかわいい人。

「さて、行くか」

 早く会いたい。




 アスタロトと合流しようと神官宿舎方面に向かっていると、慰霊碑と奥の宮の中間地点に5歳位の茶髪の女の子がひょこひょこ歩いているのを発見した。

「こんな所に一人か?」

 周囲に大人の姿は無く、一人で奥の宮近くの林の中を歩いて行く。キョロキョロと辺りを見回している様子からすると、あれは迷子ではないか?


「ソニア、5歳の女児です。孤児院から、集団で慰霊碑近くを散策後に行方不明となり衛兵達と共に捜索中でした。後程キヨエが迎えに来ます」

と麒麟が報告する。


 ソニアは藪が途切れた隙間のような獣道をゆっくりと進んでいく。アスタロトの結界内だから人に害を為すモノは無いが、足場の悪い道を転んだり滑ったりは防ぎようが無いな。

「少女、ソニアを保護する」

「御意」


 とは言え、俺の顔を見て怯えるのは必須。最悪、逃げ惑いその所為で転倒してしまうのはいただけない。…俺の姿を見せなければ良いのか。

「麒麟はソニアの進行方向でソニアの足止め、俺が後ろから確保する」

「承知」


 隠密形態ステルスモードを解かずに俺がソニアの背後、麒麟が前に降りる。麒麟が人型になると同時に姿を現すとソニアは声も出ないほど驚いたのかそのまま固まってしまったので、俺がすかさず抱き上げる。

「確保!」


 何が起きたかわからないまま俺に抱き上げられたソニアは、ひぇっ?と変な声を漏らしたが、俺は構わずに荷物のように脇に抱えた。

「え、は、えぇっ」

 ソニアは相変わらず固まったように動かないが、あぁ、俺の姿が見えないから戸惑っているのか。


 俺が姿を現すのと同時に、近づいてきた麒麟がソニアに話し掛ける。

「ソニア、だな。孤児院の神官達から捜索願が出ていた」

 はっ!とソニアは麒麟を見て、自分を抱えている俺を仰ぎ見て睨む。が、その茶色の瞳に俺の顔を映した途端に。


 イギャアァ~~~~~……!!


 ソニアの顔は恐怖で歪み、断末魔のような悲鳴が辺りに響き渡る。うむ、予想通りだ。




 俺は絶叫しながら暴れるソニアを小脇に抱え、麒麟が『ソニア確保』と各所に報告しながら孤児院に向かって真っ直ぐに飛ぶ。途中でキヨエと合流し、アスタロトも孤児院でおやつのパンを用意しながら待っているのだとか。


 孤児院の表で孤児院長ともう一人の神官が待ち受けていた。ソニアは俺が抱えている間中、ずっと叫び暴れていた。そう長い時間では無かったが、相当な体力だな。

 地面に降り立ちソニアの足をそっと着地させて手を離すと、素早く駆けだし神官に抱きついて

「ごわ゛がっだあ゛ぁぁ~~~!!」

と大泣きした。

「『空を飛ぶ』なんて、めったに無い経験ですよ」

と神官は慰めるが、ずいぶんと斜め上だな。


 パンの焼ける美味しそうな匂いが漂ってきた。とりあえず中に入って腹ごしらえだ。


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