129.懲罰房に放置で(124)
「意識の無い司祭様も懲罰房に入れられていたのは何故?」
いや噛ませたままでは答えられないだろう、と俺は老神官の猿轡を外す。
「っはあぁ~~、はぁ~、はぁ~」
「えっと、答える気が無さそうだからまた猿轡噛ませて」
「いやいやいや答えます!答えさせていただきます!」
ロト、さっさと喋れと冷めた目で見ているが答えさせる気全く無いだろう!
「その、なんと言いますか…」
老神官がしどろもどろで無駄に長々と語った内容は何とも解り辛く
「要約すると、大神殿から来たエリート神官に嫉妬して嫌がらせした、と」
アスタロトが本筋に関係無い言葉に拘ることが無いように俺は簡単に分かり易く纏めた。
「嫌がらせも度が過ぎると犯罪だよ。私達が今、来なかったら司祭様だけじゃなくて他にも死んでた人いた。それだけ劣悪な環境に放置していたんだもの」
アスタロトがそう言うと、老神官はそこまで酷くはないだろうって目で彼を見る。反省の色が見えない。
「団長殿、現在この神殿の最高責任者はこの老神官だと言うが、部外者の俺達からするとこのような犯罪者予備軍を上に置くことは不安しかない。他に任せられる者がいないのであれば、この者達の行動を制限して処分は他の祭司達が復帰してから決めてもらっても良いだろうか?」
「え、そんなの、団長さん達にしたのと同じ様に懲罰房に放置で良いんじゃない?手枷を嵌めてね」
俺とアスタロトが好き勝手言うのを老神官が口を挟む。
「何故キミ達にそんなことを言われなきゃあいかんのだ?私は皇家に連なる高貴なる血筋の持ち主であるぞ!失礼ではないか!」
「皇家、関係あるの?」
とアスタロトが団長に尋ねると
「いえ、表向きはお互い不干渉ではありますし、出家前の身分は不問ではあるのですが」
と困ったように眉を下げる。
「じゃ、アーリエルさんに報告して、破門にしてもらうとか」
「「は?」」
老神官と団長は、何故ここで大聖女様の名前が出てくるのだ?と不思議そうな顔してるが、俺達が此処にいる理由を考えることはしないのだろうか。
「報告した時点で、ロトの好きにして良いと言われるだろうな」
大体、君のなすことは誰にも止められない、と俺が首を横に振ると近くに待機していた麒麟と聖騎士ダングは首肯して、それを見た老神官と団長は顔色を無くした。
取り敢えず現在昏倒中の地元出身の司祭達が復帰するまで老神官は懲罰房に入れて、取り巻き二人は人手の足りないところで働いてもらおう、と言うことで決着がついた。
ごたついてはいるものの、消えてしまった司教と近衛騎士の探索に出掛けていた聖騎士達も徐々に帰還してきているので、後は団長以下神殿の人達に任せ俺達は大神殿に帰ることにした。偶々通りかかった神官と衛兵に司教の部屋を案内させると、段々と焦げ臭い空気が漂ってきた。
「そういえば神殿が焼き討ちに遭っているとの噂を聞いたが、真相はどうなんだ?」
と同行している神官さんに尋ねる。
「あぁ、そんな噂になってたんですか。実は」
いまから行こうとしている司教の部屋にこれ幸いと老神官が押し込み、いろいろと持ち出そうとしたが何故か出来ずにその腹癒せに火を付けたらしい。
「不思議なことにソファ等の家具の一部は燃えてしまったのですが、その他の資料等は全く損傷なく残っていて、それこそ奇跡なのではないか、と」
まだその時の状態のままでで手を付けていないから煤けていますが、と神官は申し訳なさそうに言った。
司教の部屋の造りは大神殿奥の宮の大司教の部屋に似ていて、簡素な中にも上品さが覗える。確かに何かしらの魔法が掛けられているっぽい、とアスタロトが呟き、煤けているのをさあぁ…っと魔法で浄化する。神官と衛兵は元より聖騎士ダングと俺も、おぉ、と驚きの声を漏らした。俺が神官と衛兵にこの部屋は引き続きこの状態のまま置いておくようにと注意を促すのを、アスタロトは横目で見ながら、ん~~、面白そうな物は見当たらないなぁと室内を見渡す。探索から戻ってきた青龍、玄武の報告では火急の件は無さそうだ。では、さっさと帰ろう。
アスタロトが結界で閉じられていたらしい隠し部屋の扉を開けて大神殿へと転移門を繋げる。彼は
「また明日来るよ!」
と明るく言い放って、俺の腕を取って転移門を潜った。
※※※※※
大神殿に戻ると、ダイザー帝国から来た皆様の殆どは貴賓館に移動されました、とノゾミが報告する。殆ど?とその言葉の意味を考えながら寝室から執務室の方に行くと、
「お疲れ様です。この度は助けていただき本当にありがとうございました」
改めてお礼申し上げます、とレキュム殿下と侍女のリーズが綺麗なカーテシーで出迎えた。
「今日は疲れたでしょう、お話は明日以降ゆっくりとしたいな」
とアスタロトが言う。だが遠回しな面談拒否は理解されなかったのかレキュム殿下は
「お気遣いいただきありがとうございます。ですので、二つほどお話ししましたら直ぐにお暇いたします」
…二つも?とアスタロトの眉間に微かな皺が寄った。




