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聖者のお務め  作者: まちどり
103/197

103.アーリエルさんとルゥさんの違和感(98)


 一瞬アスタロトの気が緩んだと思ったが、俺の背にガシッと腕を回してギュッと抱き締める。うわぁ、かわいい~。だが直ぐに腕を緩めると

「あとね、もやぁっと気になることがね…二つくらいかな」

と話を続けようとした。ん?二つも?すると、立ったままだと疲れるからと魔法でゆったり座れる長ソファを出し、次に小さいテーブルにハーブティーを出す。腰を据えてじっくり話そうという姿勢だな。


 お茶を飲み落ち着いたところでアスタロトは再び話し始める。

「アーリエルさんとルゥさん、なんかぎこちない。それと、節目の日の祭事の話で出てきたキラキラ。リコロさんが「綺麗だ」ってうっとりしながら言ってた」

 俺はその時のことを思い出しながら補足する。

「そういえばそれは修練を積まなきゃ出来ないと司祭アバルードも言っていたな」

「それで、さっきのアーリエルさん達の中身が幼く感じるというのと、原因は同じかもって思った」

 あのキラキラが関わってくる、と。

「まぁ、大本を探れば『碌でもないこと』に辿り着くのだろう。まず、アーリエルさんとルゥさんがぎこちない、ということについて詳しく教えて欲しいのだが」


 アスタロトは自身が感じたことを言葉を探すようにゆっくりと説明する。

「私達が北の住居を出立する前は、例えるならば新婚さんみたいな甘い雰囲気だったの。それがさっきは、お互い遠慮しているというか…アーリエルさんが一番に頼る人ってルゥさんの筈」

 不愉快さを思い出したのか、彼は綺麗な眉をしかめる。

「なのになんで私が慰めたり助言したり?ルゥさんも私を睨み付ける前に私を押し退けてでもアーリエルさんに声を掛けるとか抱き締めてあやすとか出来るでしょ?」

 徐々に熱が籠もってきたか?

「っていうか、ガンダロフが私に相談するとか頼るとかする前に眷属以外の別の誰かとあんな雰囲気になったら」

 昂揚していたらしい気持ちが一転、急降下したのか、彼は肩を落としてポトリと溢す。

「泣く」

「俺はそんなことしないから!ロトが泣くようなことは絶対にしない!」

 だからそんな心が痛むようなことは言わないでくれ!気付けば彼を抱き締めていた。彼は俺の背中を優しく撫でているが、いや少し落ち着け、とでも思っていそうだ。

「うん。わかってる。私もガンダロフが悲しむようなことはしたくないもの。ガンダロフのこと、大好きだから」

 大好きだから。甘く柔らかい声が熱い息を伴って耳から入り込んで頭の中を白く痺れさせる。はうっ、身体中が火照って、もう、どうしたら良いかわからなくてただただ彼を抱き締めていた。


 暫く抱き締め合って何とか落ち着いてからアスタロトは続きを話す。

「私達と比べるのもなんだけど。60年も離れてて突然会えたら『あら、なんか前と違う』っていうのが積み重なってああなっちゃったのかな?でも、それでも、二人のお互いに対する態度に違和感がありまくり」

「そうか…」

 脳裏に浮かぶのはアスタロトがアーリエルさんを宥めている時に見せたヒリヒリと焼け付くような眼差し。

「確かにルゥさんのロトを見るあの視線にはムッとしたというか、不愉快だった。そんな目でロトを見るな、アーリエルさんのことをしっかり見ろ!と」

 俺がグッと拳を握り締めると、アスタロトも首肯した。

「それでふと思ったの。ルゥさんは60年閉じ込められてたんだからルゥさん自身はそんなに変化は無いはずなのにって」

「君が力を与えたから変化した、と?」

 ルゥさんが自身を『アスタロトの眷属』と言ったのもそれが元になったのではないか?俺はアスタロトを覗き込むが彼はふるるっとかぶりを振る。

「ううん、それは無い。彼に渡したのは純粋な力だけで存在に変化をもたらすようなことはしてないよ。だから、もしアーリエルさんが彼に違和感を感じているのであれば、閉じ込められた時に既に何某なにがしかの変化があったのか、それともアーリエルさん側に問題があるのか、或いはその両方か」

「成る程……」

「昨日、寝る前にお話ししたっけ?アーリエルさんが儚くなればルゥさんは消えちゃうって」

 確かにアスタロトが寝入る直前にそんなことを言っていた。

「だから私としてはルゥさんのあのアーリエルさんに対する態度がちょっと理解できなくて」

 命綱であるアーリエルさんが自身から離れていくのを甘んじて受け入れている?アーリエルさんにしてもやっと再会できた愛しの人だろうに。うぅむ…。

「そう言われるとアーリエルさんのルゥさんに対する態度も少しおかしい」

 個々の事情があるとはいえ、『力の化身』と『愛し子』の関係性から見てもお互い引かれ合うものだと思ったが。そもそもその前提が違うのか?


「あとね、キラキラのことだけど。私もたまにキラキラさせてるでしょ?どちらもたぶん本質的には同じモノかなって」

「同じモノ?あのキラキラは普通の人も持っているモノだと?」

 だがアスタロトのキラキラは自身が他の者に与えるモノで、リコロさんが言っていたキラキラは普通の人から出てきたモノ、だよな?


 読了、ありがとうございます。

 <(_ _)>

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