科学と魔法と弱肉強食 ~神様が3つの世界を1つにまとめた~
世界を創造した三柱の神。
一柱の創造した世界は科学文明が発展し
一柱の創造した世界は魔法文明が発展した。
一柱の創造した世界は争いの果てに弱肉強食が法となった
最後の世界については創造した三柱ですら手の付けようの無い状態となり無秩序を体現した世界となってしまっていた。
科学文明の神も魔法文明の神も無秩序の神もお互いの世界が一番だと争い譲らない平行線。
「――ならどの世界が一番か決めようじゃないか。
3つの世界を1つにし、どの世界が覇権を握るか試してみないか?」
無秩序となってしまった世界の神がそう提案してきた。
科学文明の神も魔法文明の神もその手があったかと納得したが
「それは面白そうだ、勝つのは私の世界だがな」
科学文明の神は自分の世界が勝つと言い、
「確かに面白そうね、でも勝つのは私の世界よ」
魔法文明の神も勝つのは自分の世界と言い、
「何を言ってる、勝つのは僕の世界さ」
話を持ち掛けた無秩序の神も勝つのは自分の世界だと言う。
「ここで言い合っても今までと変わらない。
始めようか。
――新たな世界の創世を。」
3つの球体を前に三柱の神は各々の世界に対して宣言する。
『聴け!我らが世界で生ける者達よ!
これより、3つの世界は1つとなる!!』
『科学文明を極めた世界、魔法文明を極めた世界、弱肉強食を極めた世界
この3つの異なる展望を遂げた世界は今1つとなるわ』
『それぞれ極めし世界の民よ
君達は新たなる始まりに立ち会えた事を感謝するといい。
己の全てを持って新たなる世界で生きて見よ!』
ကမ္ဘာသုံးပါးသည် တစ်ခုတည်းဖြစ်လာသည်။
―――科学世界 シエンソル―――
「な、なんと非現実的な事が……」
科学文明を極めたこの世界の覇権を握っている盟主が三柱からの宣言を受け思考を巡らせていた。
「しかし、理論的には他の世界は存在するとされていたことには合致する。
くっ……我々がその証明をする前に答え合わせをしてくれるとは……
やってくれたな……!!」
机に拳を叩きつけ忸怩たる思いに怒りを感じながら部下から一報が入ってきた。
「盟主、観測班から報告。
今までにない空間の歪と正体不明の力場がこの世界を覆って居るとのことです」
「不味いな、全住人を地下へ緊急避難させろ!
何が起こるか予想出来ん。――特級戦時特令を発動する!」
「はっ!」
部下へ命令を下し、全身の力を弛緩させると機能重視の椅子を軋ませながら背を預ける。
「科学文明が発展し、新たな発見も技術の進歩も年々少なくなり私の研究も終わりを迎えた。
……暇だから盟主を引き受けた事を後悔てはいないが。
——面白くなって来たじゃないか」
それは宛ら新しい玩具を手に入れた純粋な子供の様に瞳を輝かせる。
「私の好奇心を満たしてくれよ新たなる世界の住人達よ」
盟主 《リアロ・プレゼダント》は新たなる世界の住人を歓迎していた。
ကမ္ဘာသုံးပါးသည် တစ်ခုတည်းဖြစ်လာသည်။
―――魔法世界 マギアモンド―――
「3つの世界を1つにですって、冗談じゃないわ!!」
発狂したような声を上げながらもこれから起きうる現象を見逃すまいと広域領域を展開しているこの女性。
魔法文明を極めたこの世界の女王こと《アストリア・レジーノ》
様々な魔法使いの頂点に立つ彼女が、三柱の声を聞いて真っ先に否定の声を上げた複数の理由がある。
「異世界があるという通説は間違っていないのは確かだった……
空間同士、世界同士を繋げる転移門を作る程度ならまだしも世界同士を融合させるなんて。
世界中の魔法使いを集めても、否――
――世界の住人が全て私と同じ力量でも不可能だわ」
彼女も文明を極めた頂点の一人故に、三柱の成そうとしている事象の大きさを理解してしまったのだ。
「しかも科学文明なんて錬金術の下位互換じゃないの!
それに弱肉強食の世界ですって?蛮族なんて本当に冗談じゃないわ!!」
言いたいことを言い終えると冷静さを取り戻した彼女は観測し続けていた情報からある結論を出す。
発狂した様相を晒しながらも正確に情報を分析していたのは流石この世界の女王といったところ。
「現状、空間系は危険……実行自体が無理ね。
世界を覆っている力が異質過ぎて意味が分からない。
防護は気休めにもならない。
奴らが事を終えるまで何をしても変わらないわね。
それならいっそのこと開き直って『何もしないが正解』」
彼女の女王として出した決断が正しいかどうか問われたら答えられる者は居ない。
しかし女王として民を安心させる必要がある。
『世界の民よ、妾は女王である。
奴らが行おうとしている事は遺憾ではあるが事実だ。
しかし、我らは何もする必要が無い。
否――どうあがこうと事が終わるまで何をしても無駄である。
妾に近しいモノであればこの意味が分かるであろう?
故に、いつも通り過ごすがいい。
空間系が使えず不便はあるだろうがそれは妾とて同じ。
そんな些事よりもこれから起きる事象を確かと未届けよ。
今起きているコレこれは未知なる魔法だ』
不安よりも好奇心。
魔法文明を極めたこの世界もまた技術という意味では近年の勢いは落ちていることを否めない。
他の世界の事は気に喰わないが外部からの新たなる刺激に利点を見出したのは統べる者の資質故だろう。
「ふん。
新たな世界の住人よ、歓迎はせぬが感謝はしてやろう。
――我らの発展の為に精々土台となるがいい」
ကမ္ဘာသုံးပါးသည် တစ်ခုတည်းဖြစ်လာသည်။
―――強食世界 レゴ・ラ・レゴ―――
「パパ……ママ……」
幼い娘が今にも泣きそうな顔で父親と思われる男性と母親と思われる女性にしがみついていた。
険しい顔をしつつも娘の頭を撫でる手つきは優しく柔らかい。
「3つの世界……か。
ふむ……どう思う?」
「アタイに難しい事を聞かれても困るヨ。
アンタだって小難しいことニガテなのはシッテル。
でも、それを考えて決めるのがアンタの立場だろ」
そう返したのはこの世界の帝王の妻の一人である《ウル・ペルソヌ》
「そうだな……
奴らはカガクブンメイ、マホウブンメイ、ジャクニクキョウショクを極めたと言っていたな。
カガクブンメイとマホウブンメイが何を意味するかは分からんが我々の事ではないな。
ジャクニクキョウショクが我らのセカイということになる。
――意味は分からんが」
三柱が言うようにこの世界は力の強い物が食べることが出来、力の弱い物は食べるどころか『色々な意味で』食べられてしまう力が支配する世界。
純粋に物理的な力だったり魔法的な強さだったり、または経済を動かすカネの力だったり。
この皇帝は一番目にあたる。
「大体合ってるだろうね。
だけど奴らは1つだけマチガッテいる。
――今の弱者はただ喰われるだけじゃない。
このセカイのレキシをサカのぼっても制帝された最初期の頃だけだ。」
「はぁ……オレの勘がこの先荒れると告げてくるゾ……」
「奇遇だね、アタイもだよ……」
執務室で暗い雰囲気が包む中、激しい足音に続いて扉が激しい音を立てて開き
一人の女性が返事も待たずに入ってくる。
「オイ!旦那!!何が起きてる!?」
それが許される立場である二人目の妻が慌てた様子で報告してくる。
「街の方は大騒ぎで混乱が起き始めてるぞ。
早いところ収めないと死人がでかねない。
何とかしろ!旦那は皇帝だろ!?」
暗い雰囲気に飲まれていた二人ははっと我に返る。
「そ、そうだな。
ウル、力を貸してくれ。
ディアは市場の先走り連中を抑えてくれ」
「ワ、ワカッタよ」
「了解したぞ旦那!」
重い雰囲気を払拭した執務室で気合を入れなおすと皇帝と妻は城の踊り場へ移動する。
「ベルン、少し耳を塞いでなさい、大きい声を出すから」
「はいっ」
重い空気が去り安寧を取り戻した元気な我が子に愛おしさを感じながらもその元気を一時的にでも奪った奴らに怒りの矛先を向けながら妻の詠唱の終わりを待つ。
「届ける声」
『――――喝っ!!!!』
気合と怒りの乗った皇帝の声が魔法で世界中に広がる。
世界中の民がその声に硬直する。
『狼狽えるな民よ!!
そして備えよ!
世界は再び混沌を迎えようとオレの勘が告げている!!
――だが安心するがいい。
貴様達の頂点に立つ者が誰かを思い出せ!!!!』
数秒遅れて世界中の民の声が響き渡る。
「さて、どうしたもんか……」
「何ヨワキにになってるのよ」
身体強化を施した妻の平手が、気の抜けた皇帝の背中に叩きつけられる。
「痛ってええええ!?」
しっかりと耳を塞いでいたベルンは同時に目も閉じておりそのやり取りを見る事はなかった。
「パパ……まだ?」