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蒼き乙女よ熱く翔べ  作者: oikawa
第一章 及川ナナ
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及川 vs 由鬼那 決着

由鬼那を見下ろしながら、及川はうれしそうに笑っている。



さっきのドラゴンスクリューはすごい切れ味だった。


久しぶりにひりついた感覚を味わった。


そして、さすがに終わりかと思った時こいつは立ち上がってきた。


パンパねえ。


ここに来てよかった。



美羽といっしょにやってる仲間だ。


そりゃあ凄いやつらで当然だ。



杉本ってやつもよかった。


この由鬼那ってやつはもっといい。



美羽だけじゃない。


こんな奴らとプロレスができる。



及川は興奮していた。


上気する及川の顔は、色気と狂気が共存していた。



「行くぜ!」


仁王立ちで見上げる由鬼那にそういうと及川は膝を曲げてロープを踏み込み両腕を後ろから前に振りながら、思いっきり高く飛んだ。



及川の跳躍は、これまでどんな選手も到達していない高さに届いた。


人間はこんなにも高く飛べるものなのか。



リング上で真下から見上げる由鬼那、反対側のロープ際で見つめる杉本、


リングの下で固唾を飲んで見守っている練習生達、この時及川を見ていた全ての人間が、天井のライトを全身に浴び光り輝く及川の背中に生えた白くて大きな翼の羽ばたきを目撃した。



空中で長い足をぎゅっと丸め身体を小さくした及川が回転しながら、仁王立ちする由鬼那に向かって飛び、由鬼那の身体にからみつくと


由鬼那の体を軸にして二回転した及川が由鬼那の左腕を取り、そこからさらに由鬼那の体に大蛇のように巻き付くと右足を由鬼那の首の後ろにかけ引きずり倒しながら倒れこんだ。


このまま倒れたなら、由鬼那の左腕の関節は完全に破壊されていただろう。


引きずり倒されながら由鬼那は左足一本に力を込めて自ら前方に飛び込んで受け身に入る。


それを読んだ及川がさらに自身の体を今度は由鬼那の左腕を軸に回転させる。


その回転方向に逆らわないようにさらに由鬼奈が回転し二人はまた青コーナーの前に倒れ込んだ。



倒れ込む由鬼那は全てを受け切り、右足以外はやられていない。


すぐさま立ち上がったがまたも及川がすでにロープを駆け登りまた羽ばたいた。


丸まって空中で斜めにに回転した及川がフライングボディプレスを放ち、由鬼那に直撃する。


由鬼那の右足にはもう痛みの感覚もない。


左足一本で及川の技を受けマットに叩きつけられる。


由鬼那が関節に行くとしたらここしかなかった。


しかし及川はあっという間に立ち上がると三度トップロープに駆け上った。


由鬼那が起きあがろうとした時にはもうすでに及川は空にいた。


ロープをタタンッと駆け上るとそのまま空中でムーンサルト、後方二回宙返り一回ひねりをしながらの


フライングエルボードロップをマットに横たわる由鬼那にみまった。


しかしまだ由鬼那の意識は切れていない。


さっと起き上がった及川は右のロープに走った。


その間に由鬼那が立ち上がり始める。


及川はさらに右のロープに走り、さらに右のロープへ走った。


そして最後に、立ち上がった由鬼那の前まで走ってくると、そこで大きくマットを踏み込むように蹴って飛び上がると由鬼那の肩を踏み台にして飛び越えた。


コーナーポストへ飛んだ及川は、さらにコーナーポストを蹴り返し、その反動で高く飛び上がり、上空で体を丸めたまま由鬼那へ向い、長い足を爆発させるかのように伸ばして由鬼那にフライングドロップキックを炸裂させた。



鋭角に降り注いだ及川の両足が由鬼那の鍛え上げた胸板を撃ち抜いた。


凄まじい威力のドロップキックが炸裂する音が静まり返る道場に衝撃音としてが鳴り響いた。



由鬼那がポストに近すぎた事もあり、そして及川があまりにも上方向に飛びすぎたために本来後方に吹き飛ぶはずだった由鬼那はほとんど垂直にリングに叩きつけられた。



巨体がマットにぶつかり二度目の衝撃音が鳴り響く。



受け身を取れずにまともに後頭部を打ち付けた由鬼那が泡をふいて気絶した。



ドロップキックの反動でリングに倒れ込んだ及川がさっと立ち上がり、ゆっくりと由鬼那のところに歩いていく。



そして、由鬼那に覆いかぶさった。



リングの上で口をあんぐり開けて呆然と見守る杉本に及川が声をかける。


「杉本、カウント」



杉本がはっと我に返る。


「バ、バ、バカお前、由鬼那さん気絶してんだろうがっ!」


「杉本、カウントだよ」


そう言って及川が杉本を見る。


及川の顔はほかほかの湯気を出しピンク色に上気し、さわやかに微笑んでいる。


"お前も女子プロレスラーだろ"


及川のその顔が、杉本にはそう言っているように見えた。


杉本はロープ際から離れ、及川と由鬼那の近くへ歩み寄った。


無言でかがみ込み、手のひらで大きくマットを叩く。


「ワーン!、ツー!、スリー!」


及川が由鬼那から身体を離し、由鬼那の横にごろりと転がった。


杉本がリング下の練習生たちに大声を上げる。


「タンカだタンカ!すぐもってこい! それから救急車に電話! すぐだ!」


慌てて動き出す練習生たちを他所に、及川は仰向けになり大の字に寝そべって大きな声で叫んだ。


「あー、たーのしーっ!」



杉本はその場でへたり込んで及川と由鬼那を見た。


ほんの一瞬の、短い試合だった。


でも、すごい試合だった。


由鬼那さんは相変わらず凄かった。


万全の状態なら、こいつに負けなかったはずだ。


でも、こいつも凄かった。


何よりも、こんなに楽しそうにプロレスをする奴が藤井さんの他にもいたなんて。私もこんな風にプロレスがしたい。


気づけば杉本の目から涙が溢れていた。


悲しい涙でも悔しい涙でもない、


杉本の心の奥にある藤井美羽の試合を見た時のような、


生命の躍動に対する感動の涙だった。



ー第一部 完ー

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