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蒼き乙女よ熱く翔べ  作者: oikawa
第一章 及川ナナ
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及川 vs 由鬼那 「ヘイ!」

左に廻るか、右に廻るか。


及川は由鬼那の回転方向を読み、


同じ方向に回って受け身を取らなければならない。



もし及川がその選択を失敗すれば及川の膝の靭帯は音を立ててちぎれ、選手生命はおろか、この後満足に歩けるまでに回復できるかもわからない。



由鬼那の殺気はもうずっと前から及川に届いている。


それは由鬼那にとっても同じだった。


お互い五体満足で終わる保証などどこにもない。



女子プロレスラーひとたびリング立ち、相手と相まみえると言うことはそういう事だ。



筋肉では男子のレスラーに引けを取る。


それはどうしようもない。


しかし、魂では負けない。


絶対に女の方が強い。


腹をくくった女には、男なんて寄せ付けない強さがある。



二人の魂は、熱く燃え上がっていた。


今二人の心には邪な心は何もない。



ただ無心に、二匹の獣が互いの命をかけて戦っている。



もし及川がビビって頭を働かせたとしたら右足のギブスを見てこう考えただろう。



由鬼那が右に回転するなら由鬼那が左足を跳ね上げると同時にその全体重が右足にかかる。


そうなったら右足はおそらくまた砕けるに違いない。


選手層が薄いはずの弱小団体でこれほど動ける選手は多くないはずだ。


そんな選手が、試合でもないこんな戦いでそんなリスクを犯すはずがない。



もしそう頭で考えていたら、


及川の女子プロレスラーとしての人生はここで終わっていた。



自分の選手生命が絶たれるかもしれないこの状況で、及川は無心を保った。



及川も由鬼那も互いの呼吸を図っている。


及川が由鬼那の回転方向を読み同じ方向に回ったとしてもタイミングをずらされたら同じことだ。



由鬼那が仕掛けた、


タイミングは完璧だった。



及川の呼吸を完全に把握し、ここ以外ないと言うタイミングで及川の足を掴む両腕にぎゅっと力を入れながら腰を落とした瞬間に左足を跳ね上げ、全ての体重を右足にかけて由鬼那は右に回転した。



メキっと言う音が自分の右足から聞こえ激痛が走る。


しかし由鬼那のドラゴンスクリューは全く勢いが落ちることなく周りきった。


完全に決まった。



鬼の形相で痛みに耐える由鬼那は、獲ったと思った。



しかし及川は由鬼那と同じく右に、及川から見て左に回っていた。


リングに倒れ込む二人。


由鬼那はうつ伏せのまま動けない。



由鬼那に相手の足を砕いた手応えがなかった。


完璧だったはずの技に、それを上回る完璧さで受け身を取られた。



休んでる暇はない。


たとえ右足が激痛を発し、動かないとしてもまだ戦いは終わっていない。


やれる事はまだいくらでもある。



あいつはこの後攻めに転じる。


その時必ずスキが生じる。


打撃は無理でも、関節を決める事ができれば勝機はある。


あいつより先に起きなければ。



痛み以外の感覚がない右足を無理やりに曲げて上体に引き寄せる。


幸いすぐ横にロープがある。


ロープを持って立ち上がり、あいつが攻めてきたところを掴んで関節を決める。



私より関節のうまい選手などいない。


次こそ決める。


そう思いながらロープに手をかけ、顔を真赤にしながら、由鬼那は立ち上がった。


その姿はもはや赤鬼のようだ。



立ち上がって、前を見た。


目の前にいたはずの及川がいない。



「ヘイ!」


後ろの、そして上の方から声が聞こえ由鬼那は振り返り、そして、見上げた。



ポールの上に、及川が立っている。



ターンバックルの外側、青コーナーのポスト上に及川がいた。


両足をトップロープに載せ、足首でポストを挟み堂々と胸を張りまっすぐに立っているその姿はまるで藤井美羽のような凛とした美しさだった。

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