無題2
自転車屋の前に、名も知らぬ家族がいた。
新しい自転車を買ってもらった、小学生の女の子。
娘のために自転車の点検をしてやって、乗り方、降り方、ブレーキの掛け方を再度教えてやる父親。
小さい男の子の手を握って、微笑みと共に娘を見守る母親。
男の子は、左手にソーダ味のアイスを持って、目の前の、自分のお姉ちゃんを見つめている。
家族。
私がこの類の光景に脆いのは、私の経験したことのないものだからなのか。
きっと、そうだ。
私は、一度、父をこの世の最大級の狂気的な言葉によって表現されるべきほどに憎んだことがあります。
色々と計画をしました。
想像で、四度、決行しました。
四度、発見されて、行くべき所へ行く結末を迎えました。
それで、何とも割に合わない仕事だと気付いて、そうして、いつもの癖の通り、笑いながら眠りにつくのです。
結局、私は、私のことしか考えていないのです。
父によって自由を剥奪されてきて、最後も、父によって社会生活の権利を奪われるのは、割に合わない、そう考えてしまうのです。
いつも、そうです。
しかし、人間というのは、きっとみんな、同じです。
私も、人間の仲間なのです。
膝を抱えて笑い転げ、そして、しくしくと泣いて、布団の上を転がりまわるのです。
きっと、救われる。
いや、救われない。
私は、ただ、一人、自分のことしか信じれず、自分で自分を救うのだ。
嫌になったので、もう、これは終えてしまいます。