第二話 僕は、いじめを受けています。
「大丈夫、美琴は、私が守るよ。」
と、隣にいる咲蘭歩が言う。
…そもそも、咲蘭歩が彼女になったから というのが理由で、いじめを受けているわけではない。
評判が悪いのは、なぜか…それはたぶん、 ‘殆話さない‘ からだろう。
僕は、入学直後の頃は、結構友達はいた。
けれど、今いるとすれば、彼女の咲蘭歩と薫人、それとその姉百合人のみ。
「おはよう、今日は朝が遅いね?寝坊?」
と、目の前に現れた、ショートヘアーの茶髪、さらに甘いようなシャンプーの香りがする女の子、岬 由恵。
幼馴染で、多少天然ボケなところが、周囲にもモテている。
というか、顔近づきすぎてる。
「あのさ、どーでもいいんだが、後30秒で鳴るからな。」
と、遠目で薫人が助言を残す。
すると、僕は疾風のごとく、自席へ足を急がせ、ギリギリでセーフ。
こうして、いつもの時間が流れていくのである…。
(−−−1時間目 国語−−−)
この時間、僕は殆寝て過ごしている。
それもそのはず、周囲を見渡せば、誰もが顔をうつ伏せになって、中にはいびきをかいて、先生に減点されているものもいる。
が、そんな中でも、僕の彼女は熱心に授業を受け、かつ僕の方を気にしている。
なぜか?
僕が睡眠を取ろうとすると、僕を悪く思う連中の悪の手が僕を襲おうとしているからだそうだ。
咲蘭歩に気がつかれないように、僕を襲おうとする主に僕の前後左右の席の方々。
それを悟るように、咲蘭歩が国語担当の江西に気がつかれないようにこちらの前後左右を睨みつける。
その睨めつける速さはほんの一瞬。
まさに、虎に目をつけられたエサが、周りの外敵からそれが狙われないように、監視するのと同じようだ。
「くぅ…くぅ…」
そのおかげで僕は、安眠ができるのである…。
そして、授業が終了するチャイムが鳴っても、僕は起きてはいなかった。
「かぁいい…がお…」
と、何やら耳に声が入ってくる。
この声は…咲蘭歩?
…えっと…まさか…
「はっ」
「あぁ、ざんねぇ〜ん、もう少し見たかったなぁ〜美琴の寝顔〜」
そんなものを見てどうなる…。
それはいいとして、退屈な国語の時間は過ぎたらしい。
「ああそうそう、これどうぞ」
と渡されたのは、一冊のノート。
「いつもごめんな、二倍の授業内容をまとめるなんて…」
「いいの、いいの、私もいいものを見れたんだし」
と、笑顔を返す彼女。
ああ、なんだろう、落ち付く。
咲蘭歩がまだ僕の彼女でなかった時の方が…騒がしかった。
(−−−3年前−−−)
僕は中学2年生になったある春の出来事であった。
中1の頃に起こしたある出来事…。
それが響いてか、僕への態度が一変していた。
何をしたか?
それは、僕からではない。
彼らからだ。
一度殴られた。
それがきっかけ。
何も言わずただ下を向いて、殴った相手の発言を無視し、僕は光のない瞳に自身のことを問う。
「…僕は…なんなの…?」
と。
おかしな話であるが、それが本当にいいたかった、いわば答えなのだ。
だが、その答えに答えを持ちかけてくる人なんて、いない。
わかっている・・・。わかっていた…。
「無視すんなっ!この…」
「…」
僕は、振りかえらず、そのまま教室を目指す。
自席に向い、ただ空を拝んでいたかったのだ。
だが、その願いが叶う…と信じた。
僕は、トイレに行き、自席から離れて、それが起きた。
肩を無理やりに相手からぶつけてきて、勝手に殴りかかってきた。
その顔は、いらつきの顔。
多分僕はミットにでもされているのだろう。
いじめというよりも、ただの‘家具‘のような存在価値であったのだろう。
だが、反論もしない僕。
そのせいだろうか、もう一度殴られる。
謝れ
と言われようが、
反省しているのか?
と言われようが、僕には関係のない話。
いや、むしろこちらからそう言うべきなのではないだろうか?
ただのミット代わりにされ、ストレス解消のために使われる。
これに対して、彼らは僕に原因があるものだと思い込んでいる。
その証明として、現に僕は、様々な悪口を浴びせられることとなった。
原因はわからない。
ただ、そうされているだけだ。
普通の生活をしているはずなのに・・・。
どういうわけか、僕がいるだけで嫌気がさすような眼で見られている。
周囲からのそんな眼を見せられて、どうとも思わない程、僕は人間として腐ってはいない。
が、その眼差しが僕を指すのであれば、僕はそれに意見を言う気にはなれなかった。
…そして、高校1年生までそれは続いた。
まで、というのは、僕の彼女、咲蘭歩がいたからである。




