第10話 紅薔薇の微笑み
「そういや、名前まだ聞いてなかったね」
思い出すように、僕はそう言う。
今、体育館倉庫の裏道…なぜか隠された道を発見し、そこから脱出し、地下通路のようにサブい通路に来ている。
…、大きさも、人が通れるぐらいだ。
さらに、すべて石で作られている。
まさに、牢獄から脱出だ。
そんな中、歩きながら、出口へ行く。
「私は、桜咲 歩。ここの学校の生徒ですよ?」
「おおっと、これは失敬、失敬…でも、初見であることは、疑いようのない事実だな」
僕は、あわてて会話を進める。
出題者が焦るというのは、もはや崩れたも同然。
つまり、十分察するに値するということだ。
「今年からの入学者ですし、そう思われても仕方がありませんので、悪しからず」
そう彼女は微笑みながら言う。
ここは、なぜか少し明るい。
そのおかげか、彼女の姿は、はっきりではないが、見えていた。
僕らは、それから5,6分ぐらいかかり、そこから出ることとなった。
(−−− 水鳥乃学園 中庭 −−−)
僕らは、石の通路を抜け、やっと辿り着く。
そこは、校内の水鳥の水源と呼ばれている、中庭にある噴水だ。
この噴水は、公園にあるような円形に形を作られ、その円形をぐるりと一周回ると、誰もが気が付くことがある。
扉があるのだ。
以前はなかったはずなのだが、最近の工事で作られたらしい。
なるほど、ここは体育館倉庫とつながっていたのか…、だからあんなに寒気がしていた。
なぜなら、水路が通っているからである。
噴水といえど、水を汲まなければただの石の塊、コンクリートの結晶としか言えない。
たとえ、石像があったとしても、それだけでは、人は飽きるだろう。
だから、それに水を付け加えると、鮮やかなに見えてくる。
水鳥たちが、羽を休めるため、ここに来るのも、この水のおかげだ。
そして、その水を出しているのが、体育館倉庫の近くにある、大きな貯水タンクだ。
だから、整備をするために、この通路を作ったのだろう。
「…、それで、これからどこへ?」
「もちろん、隠れます、もうじきチャイムがなるでしょう…それまで、身を隠し、おおごとのないようにしたいと思います。私について来てください」
僕は、彼女の言うことをきき、言われるままに動いた。
そして、行き着いた先が…
「なるほど、図書室か」
「そうです、こう見えて、私は図書委員ですので、ほら、鍵ぐらいはあります」
頭を傾け、笑みを見せ、その鍵を見せる。
甘いシャンプーの香りも一緒にふわりと浮かぶように、僕の鼻まで香りが届く。
「…それに、ここは一階だから、特に誰から見つかる危険性もないと」
「ビンゴ。」
彼女は、そう言って人差し指をぴんと立てる。
そして、ウィンクをする。
「それにしても、結構本がありますね」
「ええ、一応は図書室です。さらに私立ともなるとこのぐらいないと…」
「ですかね」
僕は、ハハと笑って返す。
彼女もニコッと笑顔になる。
何と言うか、和む。
…、いかんいかん、僕には咲蘭歩がいるではないか…。
とりあえず、思考を一旦停止だ。
「ふぁ〜…」
「お疲れのようですね」
僕があくびをすると、横にいた桜咲さんが、そう言う。
まあ、たしかに眠いのもある。
朝起きた時刻が早かった。
5時起きってどないなっとんねん!
そのことを話すと、桜咲さんは、クスクスとからかう様に笑う。
この人の笑顔は、まるで例えるのなら、一番立派に咲いた紅色の薔薇、紅薔薇のようである。
紅い薔薇を連想させる彼女との話は、チャイムが鳴って、ようやく終わりを告げる。
彼女は、またいつでも と言い残す。
僕もまた、それを楽しみに待つと返し、彼女と別れを告げるのであった。
すみません、一日遅れました。
お詫びに、一話プラスします。




