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勇者と聖女のとりかえばや ~聖女が勇者で勇者が聖女!?~  作者: 星野 優杞
勇者アキレアと聖女フリージア
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アキレアとアッキー

とりあえず私は料理を作ることにした。


「お菓子は置いといて、アキレア君って料理そんなに得意じゃないね?!」

「勇者様は味付けのセンスが基本的に良くないんですよ。」


ライさんとホワイトレースがそんなことを言う。

失礼な。一応フリージアより丁寧だし、ちゃんとしてるはずだけど。


「余計なスパイスは入れない!!」


ライさんがそんなことを言って私の手から瓶を取り上げた。


「カレーは色んなスパイスを入れるべきでしょう。」

「時間があるわけでもないし、下手したら美味しくない上にお腹に優しくないものが出来るから!!」


仕方なく普通にレシピ通りのカレーを作ることにする。

魔王城の目安がついたので、私たちはその場所、学校に向かおうとした。けれど


「あの学校には貴族の子どもも多く通っているのだぞ!」


そう。学校には多くの子どもがいる。

学校内がどうなっているのかは分からないが、人質にされているとしたら、その救出には私たち勇者パーティのメンバーだけでは人手が足りない。

けれど普通に国の騎士たちが学校に行っても魔王のオーラで使い物にならないだろう。

そこでたくさんの人間に私の料理を食べさせるということで、唐突に勇者お手製カレーパーティーの開催が決まった。参加者は皆兵士だけれど。


ホワイトレースはレシピを読み上げてくれたり、私の補佐をしてくれている。

ライさんは見守りつつ、ちょこちょこ私の行動の邪魔……いや、アドバイスをしてくれている。

アストロン王子は料理を手伝う気が無いのか装備を整えたり、フリージアから貰ったであろうクッキーを齧ったりしていた。


「アッキーは余計なことしないから、もうちょっと楽だったんだな……。」


ライさんのつぶやきが聞こえた。


「ライさん。えっと、フリージアのこと……。」

「ああ、ごめん。とりあえず会うまでは次のあだ名決めずにアッキーって呼ぶから。」

「うん。ごめんね、アキレア君。僕たちのアッキーは君じゃないんだ。」


いつの間にか王子が近くにいて、そう言ってきた。

うん。僕はアキレアだ。


「大丈夫です。僕はアキレアだけど、お二人のアッキーじゃないですから。」


フリージアをちゃんと見てくれている人がいる。

そのことに満足してそう言えば、2人は少し目を見開いて、それから笑ってくれた。




「先生はどうして魔王側についているんですか?」


魔王は学校の中を見回りに行っている。

俺がいるのは学校の最上階にある小さな礼拝堂だった。

神の加護を与えられた聖女だから神に近い場所に……というわけではなく、単純に礼拝堂のステンドグラスがきれいだからという理由でここにいるように言われた。

「だって、綺麗なもの、好きだろう?」

キョトンとした顔で魔王はそう言ったのだ。


「魔王は悪のオーラを操る。でも魔王様は最初から悪のオーラが操れたわけじゃないんですよ。」


先生は俺の見張りとして一緒に礼拝堂にいた。


「魔王様の名前はスキラ。……魔王様だって普通の人間です。彼が魔王じゃなければ普通の子どもとして成長して、普通の町の人……または少し魔法の能力があったから、魔法使いにでもなっていたでしょう。」

「……。」

「けれど魔王様は魔王でした。無意識に悪のオーラを引き寄せてしまった彼の周囲の人は、次々に悪事に手を染めたのです。……誰が悪かったかということではないのでしょう。」


そうか、悪のオーラが操れないのに無意識に悪のオーラを引き寄せてしまえば、起きるのは悲劇だ。


「そして彼は家族を失い、孤児院にやってきた。そこで私は彼に会ったのです。彼の身の上話はとても可哀そうで、同情するのは悪いことかもしれないと思いつつ、私は彼に同情することをやめられなかった。きっと、彼に同情するということが私が受けた悪のオーラの影響なのでしょう。」


先生は魔王の親代わりだったのだろうか。

悪のオーラはその人が悪いと思っていることをさせてしまうんだったっけ。同情するのが悪いことで、オーラの影響がそれなら


「先生はきっと、優しいんですね。」


俺の言葉に先生は目をぱちくりさせた。


「いや、うん。多分あなたには負けます。この状況で加害者側を優しいと言えるとは……。」


そう言えばそうだな?

うん、俺を連れてきたのは良いとして、魔王はアストロンを殺そうとしたのだ。多分あの後の行動から、俺がアストロンを蘇生させることを予想してやったんだろうけど。


(アストロンが死んじゃうかと思った……。)


何も考えられなくなるくらい怖かった。

今も思い出すだけで手が震える。


流れていく血は彼の命そのものに見えたし、触れた体はぞっとするほど冷たかった。

あの場で意識を失わなかったのは、意識を失ったら彼を失ってしまうことが分かっていたからだ。

その感覚を思い出すと、俺は魔王を許せないと思ってしまう。


気になるかも?良いかも?と思っていただけたらブックマーク、評価や感想をいただけると嬉しいです!

次回もお付き合いいただければ幸いです。よろしくお願いします。

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