間話 親愛なる友人4
ブックマークありがとうございます!!
ライ視点の話は今回で終わりです!そして一応第3章も今回で終了予定です。
男性を女性にするアイテムや魔法、または男性でも子どもが産めるアイテムや魔法。
そんなもの不可能だと思っていたけれど、王子は城にいる魔術師やマジックアイテムの技師達の作業を効率化して、どんどん結果を出させた。
アッキーと結婚するために使えるアイテムや魔法はもちろんだけど、冒険に役立ちそうなアイテムや魔法も開発させていく。
結果が出るものだから王様や大臣に国家予算をもっと回すように進言も出来るわけだ。
はっきり言って引くほど王子は優秀だった。
俺としてはアッキーには普通に幸せになってほしかったんだけど
(これはまた、厄介な王子様に目を付けられたよね?)
しかも王子に逃がす気はない。
……でもアッキーも逃げる気がなさそうなんだよなあ……。というか、見ている限りでは両想いっぽい気すらしてくる。
そして実は俺は王様に頼まれていることがある。それは
「息子が、アストロンが!勇者アキレアに無体を強いることだけは、犯罪者になるようなことだけは阻止してくれ!!」
ということだ。王様が縋るように俺にお願いしてきたのだ。その場にいた父に視線で助けを求めたが、静かに頷かれただけ。俺は腹を決めて、ため息をつきながらもその願いに頷いた。
だって俺は、アッキーにはそりゃ幸せになってほしいけど、別にアストロン王子にも不幸になってほしいわけじゃないのだ。
2人がくっついて幸せだというなら、くっついて幸せになってほしかった。だから、無理矢理はよくない。
そうして俺も一緒に旅に行くことが正式決定し、俺は戦いの補助、生活の補助の他に、アストロン王子が暴走しないように釘をさす役割も担うことになったのだ。
……いや、面白いし、不幸ではないんだけど、微妙に貧乏くじな感じしません?
そして最近。正確には二回目の魔王遭遇の日。花畑の塔にアストロン王子とアッキーを2人で登らせてあげた。たまには2人っきりにしても良いかなって思ったのだ。だけど
(最近あの二人の距離感が!何か、前より甘酸っぱい感じの距離感なんだけど?!)
多分特にアッキーの反応が変わった。さり気なくアストロン王子の迫る姿勢も強くなっている気がする。それを感じたのは俺だけではないようでホワイトレースにもフリージアちゃんにもそれとなく2人の関係について聞かれた。ローデさんに至っては堂々と、2人クッキーの型を選んでいるのを少し離れたところで見ながら
「もしかしてあの2人ってお付き合いしてるのかしら?」
と尋ねてきた。そんな堂々と聞きます?!
「え?!っていうか、王子とアッキーは男の子同士で」
「でもねえ、私、城の元関係者だから知ってるのよ。王子の好きな人ってアキレア様なんでしょう。」
「うっ。」
「ふふふ。私は応援しちゃうわよ。この店の裏で2人がくるくる楽しそうに踊っていた時から、2人の隣に他の誰かが立つなんて考えられなかったもの。」
そういう俺も2人が付き合っているのかは知らない。
でも確かに距離感というか二人の間の空気が明らかに恋愛的な意味合いを帯びているような気がするのは確かだ。俺は意を決して王子が席を外していた時にアッキーに聞いてみた。
「もしかしてさ、アッキー、アストロン王子と付き合いだした?」
「はあっ?!」
アッキーは驚いたのか素っ頓狂な声をあげた。あ、これはハズレか。
「な、なななななんでそういう話になるんだよ?!お、俺は魔王を倒す使命がある勇者で、アストロンと付き合うとか、そんなことは」
「あ、うん。俺が悪かった。まだそこまでいってなかったか。」
ちょっと先走ってしまったらしい。少しまずいことをしたと頭に手を当てる。
「も、もしかして俺とアストロンの距離、近いとか、親しすぎるとか……」
「いや?!いやいや全然!!以前と同じ!!これからもそのままの距離感で過ごしてくれ!!」
まあ距離感というか間にある空気が可笑しいと言った方が近いので、距離感は依然と同じと言っても多分嘘じゃない!!というかこれで変にアッキーが意識して、距離感が可笑しくなったら俺が王子に、どんな目にあわされるか分かったもんじゃない。
「ん?どうしたの2人とも。ラッピングは出来た?」
そんなところに王子が帰ってくるものだから思わず悲鳴をあげそうになった。
なんでもないと言ってクッキーを袋に詰めることにする。父や母にあげようかな。
そう思っているとアストロン王子とアッキーがクッキーの包みを交換しだした。
あなた達、先ほどまで食べさせあいっこしてませんでしたっけ?
なんだこいつら、と思いながらも2人を見守る。
すると徐に2人がこちらに振り返った。驚く俺をよそに2人は良い笑顔で、息を合わせて
「「はい。ライにあげる。」」
「え?!」
「「一緒に作ってくれて、ありがとう!」」
俺にクッキーを差し出した。どうやら俺は忘れられていたわけでも邪魔者でもないらしい。
……放っておけないのも仕方ないだろう。特にアストロン王子とアッキーはまだ付き合っていないのだ。
「王子……。アッキーに何したんですか?」
最近の2人の空気について、城で王子に尋ねてみることにした。
アッキーと別れて城に戻り、王子の執務室である。一応彼にも少量だが国の仕事が任せられている。その仕事の休憩中、大きな窓から城下を眺める王子に俺は尋ねてみたのだ。
「告白した。」
「はぁっ?!」
「後、キスもしちゃった。」
「ちょっ?!それ以上はダメですよ?!してないですよね?!」
王子は俺の慌て方が面白いのかクスっと笑った。
「してない、してない。」
「本当ですか……?」
やべぇ。俺が目を離したすきに何をしているんだ!!
そう思いながら胡乱気な視線を王子に向ける。王子は俺の方に少し振り返る。外は既に日が沈みかかっていて、王子の顔はちょうど逆光になっていた。
「ねえ、ライ。アッキーが本気で拒絶したら、僕には何も出来ないんだよ。」
それは、真実だと思った。
彼にとって、世界より大切なアッキー。
そんなアッキーが彼を本気で拒絶して、どうして無理矢理何かできるというのだろうか。
きっと彼は、例えばアッキーが他に好きな人が出来たと言って、心の底から傷ついても、アッキーが傷つくといけないから死ぬことすらしないんだろう。何となく、心の底からそう思えた。
「でもアッキーって、王子のこと拒絶できるんですか?」
俺から見ればアッキーは明らかにアストロン王子のことが好きだ。まんざらでもないどころじゃないと思う。
「うーん。それがね、返事は魔王を倒すまで待って欲しい的なこと言われたんだよね。」
「押し切らなかったんですね?」
ちょっと意外だ。アッキーは押しに弱いから、アストロン王子に告白されたらもっと簡単に全部事が運ぶような気がしていたけれど。
「僕の想いを嫌がられはしなかったけど、あの『待って』は本気だった。何か理由がある気もするけど……まあ待つよ。まだ僕の方もアッキーと結婚する準備は整っていないしね。」
もし薬にするなら唐揚げ味とハンバーグ味のどっちが良いかな~なんて王子は呟いている。
やっぱりその計画進んでるんですね?とりあえずその味付けは止めた方が良いと思います。
「まあその前にアッキーが返事をしてくれるなら、その時点で色々と頂いちゃいたいと思ってるけどね。男でも女でも、アッキーならどっちでもいいし。」
「俺にそういう生々しい話をしないでくれませんか?!」
思わず声を荒げてしまった。
明日から新章予定?なのですが、いつものフリージア中心の視点に戻る前にと短い話をあげます。明日のお話は短いです。
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次回もお付き合いいただければ幸いです。よろしくお願いします。