間話 親愛なる友人3
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ライ視点、あと1話あるんですよ。なぜか王子よりアキレアより話数が多くなりました……。
それからのアストロン王子は大変だった。
新しく生まれたばかりのように好奇心旺盛に、色んな事をしてみたいと言い出した。その全てにアッキーが絡んでいる。
俺はため息をつく。アッキーは良い奴だ。しかし彼は勇者ではあるが、それ以上の偉人というわけでもない。王子があまり過度な期待を寄せて彼の負担にならないと良いなと思った。
(まあ俺は、以前の王子より今の王子の方が面白いと思うけれど。)
王子もアッキーも楽しく、親友として一緒に入れるなら良いじゃないか。
優秀な王と、善良な勇者。そんな未来を予想した。
しかし俺の予想を遥かに飛び越えていくのがアストロン王子とアッキーである。
最初は憧れだっただろう。親愛だっただろう。とても強い友愛だっただろう。それがいつどのタイミングで別の方向に転がったのかは俺には分からない。
アストロン王子はそういう意味でアッキーのことが好きらしい。
アッキーにそういう想いを持って近づいてくる奴らを裏で排除するようになった。アッキーは勇者という立場と、可愛らしさとかっこよさを兼ね備えた見た目、そしてその優しい人格から結構モテる。俺もかなりの数の人にアッキーと結婚するのを諦めさせるように動いた。
アッキーの隣に立つ。
アッキーと一緒にいる。
その想いは強いようで、アストロン王子はついに王様に勇者と旅に出たいとはっきり言った。王子には甘い王様だが、さすがに危険だと難色を示している。それでも王子は一切諦める気配がない。
(だが、王子には遅かれ早かれ婚約の話があるだろう。)
旅を一緒に出来たとしても、ずっとアッキーと一緒にはいられない。
俺はそう思っていた。
アストロン王子がどんなにアッキーを好きだろうと、元々人の期待には従順に応える王子様だ。国の将来に直結する結婚の話から逃げることはできないだろう。
と、思っていた時期が俺にもありましたー!!
「僕、好きな人がいるんです。」
「!!……言ってみなさい。」
婚約の話を遮ってこう言い出した時点で嫌な予感がした。そしてアストロン王子は器用に表情を変えて、人々の感情に訴えかける顔を作って宣言した。
「僕、勇者アキレアが好きなんです!」
「はあ?!」
言いやがったー!!!こいつ、王様に言いやがったよ!!?
思わず俺は頭を抱えた。混乱する王様にアストロン王子は畳みかける。
「ま、待て。勇者アキレアは男で」
「勇者アキレアが、好きで好きで仕方ないんです。彼の隣にいたい。いや、彼以外の人を隣に立たせるなんて、とてもできない。それに僕は、彼の隣に他の人間が立つのを許せそうにない。」
最後の方の声、殺気が混じってたぞ……。
話の行方を見守りながら俺は顔を引きつらせるしかない。
「いや、だが、跡継ぎの問題があってだな……。」
「その辺りはお父様がどうにかしてくださっても良いのでは?または養子を引き取ったり」
「いや、安易に頷くことはできないぞ。……滅多に我儘を言わないお前が言うのだ。一生を添い遂げる相手。それが女子であれば、平民の娘でも良いと思った。」
「勇者アキレアは貴族ですよ。」
「だが男子だろう。」
まあ、跡取りの問題がある以上、簡単には頷けないだろう。王様にはアストロン王子以外子どもはいないわけだし。
「お父様は女子なら反対しないのですか?」
「ま、まあそうだな。国内の娘であれば……。」
「国内の娘であれば、平民でも構わないでしょうか?」
「あ、ああ。」
「分かりました。」
なんだか王子が女の子を選ぶ流れになっているような気がする。
王様は少しホッとした表情だ。
でも俺は、もう安心できなかった。
だってアストロン王子が何も考えずにここにいるわけがない。何も考えずにアッキーが好きだと王様に宣言するはずがない。
俺はさっきの言葉を聞いた時にアストロン王子の本気さが分かってしまった。
きっとこの王子は、この国よりも、世界よりもアッキーのことが好きで大切なのだ。
「女の子であれば、勇者アキレアでも問題はないんですね?」
「はっ?」
ほらなー!!?とんでもないこと言い出したぞこの王子。なんだって?
女の子だったら勇者アキレアでも問題ない?
いやいや、だから勇者アキレアは男の子なんですよ?
え?あ、つまり
(アッキーの性別変えちゃおうってことかー!!)
アッキー逃げて。超逃げて。
「ではお父様、その時はよろしくお願いしますね。」
呆然とする王様を放ってアストロン王子はその場を後にした。
「ライ……。」
「……はい。」
「勇者アキレアをどう思うかね?」
「良い奴だと思います。」
「それはよく知っている。彼はこの国の……世界の未来を任せるのに相応しい若者だ。」
王様は優しい人だ。息子に少し甘いけど、罪を犯していない人を裁いたりしない。勇者アキレアがアストロン王子の婚約の妨げになったとしても、勇者アキレアを殺したり追放したり冷遇したりはしないだろう。
俺は王様が何を聞きたいのか、顔をあげる。王様は少し気まずそうに俺に尋ねた。
「あれだ……。その……勇者アキレアは、我が息子にそういう意味で脈があると思うかね?」
「とりあえず、多分……顔はドストライクで好みっぽいです。」
「そ、そうか……。」
俺は初めてアストロン王子を見た時のアッキーの反応を思い出しながらそう答えた。
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