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勇者と聖女のとりかえばや ~聖女が勇者で勇者が聖女!?~  作者: 星野 優杞
勇者のままではいられない
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間話 親愛なる友人

間話。ライ視点です。書いたら思ったより長くなってびっくりしています。次回もライの話が続きます。

俺の名前はライ。

こう言っちゃなんだけど、この国の偉い人……一部では国王に次ぐナンバー2ともいわれる左大臣を父に持っている。

その上補助魔法を中心に魔法も使えるし、騎士クラスに所属しているので剣を中心に槍や弓を扱うことも出来る。さらに言えば料理や騎乗のスキルまで結構高い。自分で言うのもなんだけど、かなり優秀なんじゃないだろうか。

見た目だってかなりいいと思う。どっかの性別超えてキラキラしてる王子様には負けるけど、アッキーとかっこよさで競えばいい線いけると思う。なんかアッキーには何とも言えない可愛らしさと、圧倒的性格の良さがあるから総合的にはちょっと負けるかもしれないけど。

とにかく俺はかなりすごい人物なのではないだろうか。


「はぁ。」


それなのに俺はだいぶ貧乏くじを引いていると言うか、苦労人じゃないだろうか。

それもこれも、全部あの世界よりアッキー大好きなアストロン王子のせいだけど。




もともとアストロン王子は自己主張をほとんどしない子どもだった。いつも貼り付けたような笑顔で大人たちの期待に従順に応えていた。そんな彼に比べれば普通に子供時代を送っていた俺は彼に


「王子って、なんか酷くつまらなそうですよね。」


と何気なく言ったことがある。王子はいつもの笑顔を浮かべたまま


「そう言う君は、この世界が楽しいと思うの?」


と言い放った。酷く無機質で、冷たい声だと思った。まるでこの世界に何の感情も抱いていないような、人間味を感じない声。驚いて固まっている俺を見て王子は取り繕うように表情を綻ばせた。誰もが見惚れてしまうような天使のような笑顔。でも俺はさっきの言葉を聞いてしまっていたから、それが作りものだと分かってしまっていた。


自分と同い年なのに、酷くつまらなそうで、けれど人の期待には十分に応える見目麗しい王子。俺はそんな彼が恐ろしいと思ったし、同時に酷く可哀そうにも見えたのだ。彼はきっと良い王になる。将来の自分の主になるであろう人物。でも多分、俺にこの世界が楽しいと思うか聞いた彼は、少しだけ油断していたと思う。きっと大人には見せない綻び。それだけが彼がまだ自分と同い年の子どもである証明のように思えた。


だから意外だった。


「王子が誰も自分を知らないところで学びたいらしい。」


あの王子が我儘を言ったのか。驚いている俺に父は


「だがさすがに王子を一人で学校に通わせるわけにはいかない。」

「教師とか護衛とか、大人には手を回すんでしょう?」

「そうだが、何も知らない子どもが王子に手を上げないとも限らない。子どもだけの世界というものは少なからずあるからな。」


つまり俺に一緒に学校に通えということである。家庭教師に色々と教わろうと思っていた俺としては少し不服だが、仕方ない。学校というものに憧れがないわけでもないし。そんな俺は王子より先に、学校に問題がないか見に行くことになった。




「とりあえず問題がないか見てきますね。」


やはり学校に行くというのは少し面倒で、思わずため息が出てしまう。王子にそう言えば、彼も少しは俺を巻き込んだことに自覚があるのか苦笑を返された。


「何か気になることは?」

「そうだなあ……。」


何となく、王子のための偵察だから聞いてみた。正直、返事は期待していなかった。どうせ、何もないとか、問題がないか見てきて欲しいとか、そう言われると思っていたのだ。だから


「勇者……。」

「勇者?」

「この国を……未来を……任せられる人物なのか……知りたい、かな?」


そう返答が返ってきたのは意外だった。いや、確かに魔王がいるご時世。勇者の存在を将来の王が気にかけるのは当たり前かもしれない。でも俺は別に気にしていなかったから、騎士クラスに勇者がいるらしいとしか思っていなかったから、結構意外だったのだ。




他の子どもと一緒に学校に入学する。自分のクラスの教室に辿り着いたので、とりあえずは情報収集と学校内での居場所づくりを始めなければ。勇者の情報を手に入れようにも、誰が勇者なのかも分からないし。とりあえず俺は横の席の少年に声をかけることにした。


「このクラスに勇者がいるって本当かな?」

「うわ?!」


大分驚かれてしまった。城では子どもでもここまで素直な反応は返ってこない。少し新鮮だなあと思いながら謝る。


「あ、いきなりごめん。俺はライ。よろしく。」

「お、おお。俺はアキレア。よろしく。」


うん、アキレアか。良い子そうだし、友達になって損は無いだろう。俺は距離を詰めていくことにした。


「じゃあ、アッキーだな。」

「は?」

「よろしく!」


手を掴んで大げさに振る。驚いているみたいだけど、押しに弱そうだ。これなら友達になれそう。そう思っていたら、先生が教室に入ってきた。友情を深めるのは先生の話の後だな。

そう思っていた俺は、クラス全体の自己紹介でアッキーが勇者であると知って大変驚くことになった。


「いやー、まさかアッキーが勇者だとは。俺も意外と見る目があるな。」


これは本音だ。友達になりたい素直な少年が勇者。俺の人を見る目もなかなかでは?


「勇者に興味があるのか?」

「まあ少し。どんな奴なのか知りたくてな。でもアッキーなら大丈夫そうだな。この国の未来を任せられそう。」

「大げさだな……。」


これも本音だ。彼のように素直に感情を表現できる善良な人物はそうそういるものではない。王子に国の未来を任せても問題なさそうだと報告できそうだ。


気になるかも?良いかも?と思っていただけたらブックマーク、評価や感想をいただけると嬉しいです!

次回もお付き合いいただければ幸いです。よろしくお願いします。

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