周囲からどう見えると思う?
さて、そんなことを話しているうちにローデさんが冷蔵庫から寝かせたクッキー生地を出した。
お花の形の型はいくつかあったので、俺は小ぶりな花の型と星の型でクッキーを型抜きすることにした。アストロンは大きめの花の型とハートの型で、ライは丸と四角の型で型抜きするようだ。
「溶き卵を塗っていきますよ。」
型抜きしたクッキー生地を天板にのせて、卵を塗る。それからオーブンで15分ほど焼けば
「出来上がり!!」
それはそれは美味しそうなクッキーが焼き上がった。
「おお、美味しそうにできたね。」
ライが少し意外そうに言う。
「当然ですよ。私がついていて、食べられないお菓子が出来上がるなんてこと、稀にしかありません。」
ローデさんが朗らかに笑いながら言う。逆に、稀にあるのか……。
「さあ、網の上にのせて冷ましますよ。ふふ。数枚は作った人の特権で、出来立てで食べてしまいしょうか。ちゃんと美味しいか味見もしなくてはいけませんからね。」
ローデさんはそう言うと紅茶を淹れてくれた。まだ少し熱いクッキーを手に取る。
「せっかくだからアッキー、僕が型抜きしたクッキーを食べてよ。」
自分で型抜きした星の形クッキーを口に運ぼうとしたらアストロンにそう言われた。まあ、良いが……
「ってハート形かよ。」
「そりゃ、ここはこれでしょ。」
ローデさんもライもいるんだが?
そう思いながらもアストロンが差し出すハートのクッキーを受け取ろうとして……
「……。」
「……。」
「いや、渡せよ?」
「わかってないなあ、アッキーは。ここは僕が食べさせてあげるから口を開けて?」
「なっ?!」
だから!ローデさんとライの前なんだが?!
ほら見ろ!ローデさんが口元に手を当てて「あらあら」とか言ってるだろ!!ライなんか目をそらしてるぞ?!
「僕に引く気はないから、早く食べないと辛いのはアッキーだよ?」
うっ。確かにこの状況を長引かせるのも恥ずかしい……!俺は覚悟を決めて口を開け、アストロンの手ずからハートのクッキーを食べた。
「あ、美味しい。」
恥ずかしくて顔は熱いけど、クッキーは口の中でサクッと砕けてとても美味しい。
「本当?僕のハート、美味しかった?」
「聞き方!!いや、美味かったけれども!」
「ふふ。じゃあアッキー、次は僕の番だよ。」
そう言ってアストロンは俺の持っていた星形のクッキーを指さす。
「え?」
「アッキーのお星さまな僕に、アッキーが作ったお星さまのクッキーを食べさせて。」
アストロンは語尾にハートがつきそうな勢いで言ってきた。いや、まあ、うん。食べさせてもらったし、食べさせ返すくらいなら!俺は大きめに開いたアストロンの口に素早くクッキーを
「うわあ!!俺の手ごと食べるな!!」
ていうかクッキー一口かよ!!この王子、口が意外とでかいな?!いつもは大きく口を開けないだけか。
「うん!美味しい!バターの香りが良い感じ。それにしてもアッキーとクッキーって語感が似てるよね。」
「うん。クッキー美味しいよな!」
後半については何とコメントして良いのか分からないので、触れない方面で。
そんなおしゃべりをしながらティータイムを楽しんでいるとクッキーが冷めたようだ。
「じゃあラッピングしましょう。」
ローデさんが可愛い柄のリボンと袋を持ってきてくれる。ラッピングならある程度可愛い方面でもいいよな。そう思いながら選んでいると隣に居たライが小声で話しかけてきた。
「なあ、アッキー。」
「ん?なんだ?」
「もしかしてさ、アッキー、アストロン王子と付き合いだした?」
「はあっ?!」
思わず大きな声が出た。アストロンは、ローデさんと少し離れたところで何か話していて俺の声には気づいていないようだ。
「な、なななななんでそういう話になるんだよ?!お、俺は魔王を倒す使命がある勇者で、アストロンと付き合うとか、そんなことは」
「あ、うん。俺が悪かった。まだそこまでいってなかったか。」
ライが頭に手をあてて謝ってくる。いや、でも、ライにそういう風に見えてたのか?
「も、もしかして俺とアストロンの距離、近いとか、親しすぎるとか……」
「いや?!いやいや全然!!以前と同じ!!これからもそのままの距離感で過ごしてくれ!!」
突然ライが慌ててそんなことを言い出す。あまりの慌てように思わず首を傾げてしまった。
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