勇者アキレアの日常
ちょっと短めです。
「それでね、とっても可愛いのにとっても強いんだ。」
「最近フリージアはその子の話ばかりだね。」
「そうかな?」
「そうだよ。」
勇者と聖女はお互いの学んだ部分をお互いに教えあう。いつ、何があっても良いように。実践まではしないけど。
「アストロンもアキレアみたいに飾り付け出来たら楽しそうなんだけど。」
「あんまり僕のことも飾らないで欲しいんだけど。」
「良いだろ。聖女フリージアはとっても可愛くなくちゃ!!」
ため息をつきながら諦めたようにアキレアは体から力を抜いた。
母さんがアキレアにあげていた花の匂いがするオイルをアキレアの髪に塗りこめていく。短いのが惜しくなるくらい綺麗な髪だ。
かわいい聖女フリージアを作っているのにアキレアは少し不満げに唇を尖らせている。
「フリージアが使うべきだよ。」
「この前母さんに怒られただろ。」
そう、この前同じように不服そうだったアキレアは俺の髪にもオイルを付けてくれた。それで香りで気付いた母さんに、遊びで使わないようにと怒られてしまったのだ。
「私だって勇者アキレアにはきれいでいてほしいの。」
アキレアはそう言うと俺に何か丸い箱みたいなものを渡してきた。
「これは?」
「ハンドクリーム。一応神聖魔法による回復効果が申し訳程度についてるよ。」
それはマジックアイテムということだろうか。そういえばこの前アキレアが教えてくれた授業でそんな内容があった気がする。
「これ使って。剣を握るなら手はキレイな方が良いでしょ。」
「そうか?アキレアが使えば」
「ひび割れとかあかぎれとか、手が痛くて戦いに集中できなかったら大変じゃない!それに私が、フリージアにあげたいの。」
アキレアがそう言って、ハンドクリームを手に出して俺の手を包み込む。どうやらこのままクリームを塗ってくれるらしい。同じくらいの大きさの手が絡み合う。
目を伏せながら俺の手を両手で包み、クリームを塗るアキレア。俺がお手入れした綺麗な髪がさらりと揺れる。
その姿はまさに手を合わせて俺に慈愛を与える聖女そのものに見えた。
(ああ、やっぱりアキレアは優しいなあ。俺なんかより、よっぽど聖者らしい。)
だからこれでいいんだと、心の中で納得する。
アキレアを守るためにも、やはり俺は勇者でいよう。
勇者アキレアは強かった。
そしてそれに肩を並べる強さを誇るのがアストロンだった。
2人ともパワータイプではなかったけれど、素早く華麗な身のこなしで、同じ学年の中で2人に敵う相手はいないほどだった。
「アッキー!!」
「……お前のせいでアストロンまでこの呼び方をするようになったんだが。」
「あはは。良いんじゃないかな。仲良しって感じがするし。」
ライを睨むが、全然堪えていないようだ。アストロンは楽しそうに俺の隣に並んだ。
「ねえアッキー。今日の手合わせで試したい技があるんだけど。」
「ああ、どんな技だ?」
「本当に二人は別次元の強さだからなあ……。」
ライはそう言いながら俺とアストロンを見た。
「僕はいつか魔王を倒すんだ。アッキーと一緒にね!」
アストロンはそう言ってウインクをしてみせた。
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