クッキーを作ろう!
「アッキー!おはよう……って、何食べてるの?」
「先輩がくれたクッキー。一杯作ったからくれたらしい。」
「へえ?その先輩って誰?」
「以前保健室で回復した先輩だが。ほら、あのメイド服騒動の時の……。」
アストロンは少し眉を顰めて
「そう言えば居たような……。」
と呟いた。まあ先輩、そこまで目立つタイプじゃないからな。仕方ないな。
「それでアストロン、俺ちょっとフリージアと喧嘩……仲違いしちゃってだな……。」
「え?珍しいね。どうしたの?」
アストロンだけでなく、ライも少し驚いたようだ。
「ちょっと……こう……方向性の違いみたいな?」
「音楽グループの解散理由かな?」
ライの言葉に心の中で、それは音楽性の違いでは?と返す。まあそれは置いておいて
「それで、仲直りのきっかけとしてお菓子を作って渡したいと思ってだな。」
「じゃあローデさんに作り方を聞いてみよう!!」
「おお!」
こうして俺はお菓子作りをすることになったのだった。
放課後にローデさんのところにいつものように集まる。店の奥にある台所を貸してくれるらしい。
「フリージア様……ご兄弟に仲直りのきっかけのクッキーを作るんですね。ええ、ええ!良いと思います。普段はお菓子を作らない男兄弟が、自分と仲直りしようと思って自分のためにお菓子を作ってくれる……。グッとくる人も多いと思いますよ。」
「は、はあ……。」
「ふふ。一杯作って、僕にもくれると嬉しいな。」
アストロンが隣で笑う。俺はそれに頷いた。
「ああ!アストロンもライも一緒に作ってくれるんだし、一緒にちょっと食べよう!」
「アッキー!俺のことは良いから!!巻き込まないで?!」
んー、先輩にもお返しとしてあげたほうが良いのだろうか?いや、たくさん作ったと言っていたし、あげても迷惑かもしれないな。
「歯ごたえを固くしたいなら砂糖を増やすと良いですよ。」
「んー。別に固くしたいわけじゃないし、レシピの通りで良いかな。」
柔らかくしたバターに砂糖を混ぜて、ふるった小麦粉を加えて、生地をまとめる。まとめた生地を伸ばして……
「はい。ここで20分くらい寝かせます。」
ふうっと一息だ。
「じゃあ今のうちに型を選びましょうか。お星さまもお花もありますよ。」
ローデさんがカシャカシャと色んな形の型が入った籠を持ってくる。
「おお!星とか可愛いな。」
「お花の型も可愛いよ。」
「あー……俺は普通に丸とかの型が良いな……。」
どの型にしようかな。
「アッキー!この型はどう?」
「ん?って、お前……。」
アストロンがニコニコしながら俺に見せてきたのはハートの型である。
いや、確かにハートは定番だけれども!俺はこの前こいつからこ、告白的なことをされているわけで!ついでに言うと唇も奪われているわけで!!
「そう言えばアッキー、魔王のこと、何か分かった?」
小声でアストロンが聞いてくる。思わずあたりを見渡すがライとローデさんは少し離れたところで何か話し込んでいた。俺も小声で返す。
「ああ。魔王が生まれる理由が分かった。」
「大分重要なことが発覚してるね?!」
驚いたのかアストロンが少し目を見開いている。
「分かった。クッキーを作り終わったら、少し2人で話す時間を作ろう。」
「それは有り難いが、護衛とかそういう関係的に問題は無いのか?」
「城下町の外に旅に出ておいて何を……。まあ今の僕たちは剣も魔法も制限なしで戦えば近衛兵と3対1でも戦えるくらいには強いから心配いらないよ。」
「俺達ってそんなに強かったのか?!」
「あれ?知らなかった?」
「知らなかった!!」
俺は授業でクラスメイトと少し戦う以外は、先生かアストロンが主な訓練相手だ。いつもその2人くらいとしか全力で戦わないし、城の兵士の戦闘なんて見ないから自分の強さを知らなかった。
フリージアとアストロンの強さは物語中トップ10に入るくらいの強さです。先生やら師匠やら、フリル、魔王、魔物系とかを入れるとそれくらいになると思います。
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