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勇者と聖女のとりかえばや ~聖女が勇者で勇者が聖女!?~  作者: 星野 優杞
勇者のままではいられない
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気まずい双子

翌日、登校した俺は机に突っ伏していた。


「うわっ!アキレアはどうしたんだよ?!」

「あー……なんか朝からあんなんだよ?」

「何があったか聞いた方が」

「どうせアストロン王子が聞くだろ。」

「「「あー……。」」」


周りでクラスメイトが何か言っているが、それが気にならないくらいには落ち込んでいる。


(くっ……。アキレアと気まずくなるのがここまで精神に来るとは思わなかった……!!)


昨日クローバーから魔王について聞いた俺は、日が暮れた中家に帰った。夕食はもうできていて、アキレアは既に食べ終わって部屋に帰っていた。

……それからアキレアに会ってもずっと笑顔で、挨拶以上のやり取りをしてくれない!!気まずい!!昨日色々言い合っちゃったから気にしてるんだと思うけど、この世で唯一俺達の入れ替わりの事実を知っているアキレアと気まずくなるのはすごく辛い。俺はため息をついた。


「おや、どうしたの?落ち込んでいるみたいだけど。」

「へ?」


あまり聞き覚えのない声に驚いて顔を上げる。黒い髪の大人しそうな……


「先輩!?」

「うん。おはよう。」


先輩が目の前にいてびっくりしてしまう。え?!なんで?



「だ、誰あの人?」

「今アキレア君、先輩って言ってたよ!!」

「先輩?!」

「ちょ、アストロン王子ってまだ来てないんだよね?!」

「上級生との交流なんてなかなか持てないのに、流石アキレアだな。」



先輩は笑顔で鞄から何かの包みを取り出す。


「クラスメイトにあげようと思ってお菓子を作ってたんだけど、多く作りすぎちゃって。それで、他にあげれる人いないかな?って思ったら君の顔が浮かんだんだ。」


どうやらクッキーのようだ。


「え?くれるんですか?」

「うん。美味しく食べてくれると嬉しいんだけど。」

「あ、ありがとうございます。」

「それで、落ち込んでいる様子だったけど……。」


先輩は心配そうな目で俺を見てくる。


「え、えっと。なんでもないんです。ちょっと妹と喧嘩しちゃっただけなので。」

「なんでもなくはないよ。君が落ち込むなんてよっぽどのことだ。妹さんか……仲直りできると良いね。」

「は、はい……。」

「そうだ。俺みたいにお菓子を作ってあげるとかどうかな?」

「お菓子を?」


渡されたクッキーに視線をやる。少し形は不揃いだけど、良い焼き色で美味しそうだ。アキレアも甘いものは嫌いではなかったはずだし……


「確かにいい案かもしれません。」

「良かった。」

「でも俺、お菓子とか作ったことないんですよ。」


母さんが作ってくれたり、店で買って着たり、ローデさんの店で駄菓子を食べたりしたことはあるが、作ったことはない。料理の授業でもご飯の作り方ばかりで、お菓子の作り方は習っていなかった。


「来年になるとお菓子のレシピも少し学ぶよ。そうだ!良かったら俺が教えるよ。」

「え?良いんですか?」

「あの時の回復魔法のお礼。言葉だけだと足りないと思ってたんだ。回復してもらってから、なんだかずっと体調が良いし。」

「じゃあ」

「わーわーわー!!!」


先輩の誘いに乗ろうとする俺のところにアキラが何か叫びながら割って入ってきた。


「ちょっと!ちょっと待ってください!!」

「こいつにそういう風に関わると、色々と、色々と!面倒なことになりますよ!!国家権力とか!国家権力とか!!」


続いてクリスとビリーが先輩に何やら言っている。

え?俺が勇者だから面倒なことになるってことか?首を傾げているとドロシーが呆れた顔をして


「お菓子作りなら王子とかライとかとすれば良いと思うわ……。またはいっそクラスメイト全員でお菓子作りの会を開きましょう。」


と言ってきた。


「え?このクラスにお菓子作れる奴いるのか?」


貴族の子どもが大半な上に、騎士クラスだ。料理の授業でも皆大体、食べられればいいというスタンスが多かった気がするんだが。


「何処かの家の使用人に教えてもらえばいいのよ!私の家のメイドを呼んで教えてもらえば」

「いや、そこまでしてもらうのは悪いし……。」

「先輩と一対一で教えてもらう方が色々と問題なのよ……!」


なんだか色々と言われている。な、何がそんなに問題なんだ。


「仕方ないなあ。今回は諦めるよ。」


後ろでクリス達に説得されていた先輩が苦笑してそう言った。なんだかクラス全体の雰囲気がホッとしたような気がするんだが。


「あ、そうだ。とりあえずお近づきのしるしに、君たちにもあげる。」


先輩はそう言ってその場にいたクラスメイト達にも小さな袋に入ったクッキーを渡す。俺にくれたものとは袋が違うようだ。


「じゃあ、またね。」


先輩はそう言って教室から出て行った。途端に教室の皆が長い溜息を吐いた。


「え?!なんだ、どうしたんだ?!」

「良い?アキレア君。」

「え?」

「聖女様みたいなご兄妹は置いといて、それ以外の他人と2人っきりで会うのは避けなさい。色々と、色々と面倒だから!!」

「ええっ?!」


なんで俺はドロシーにここまで言われているんだろう。


「うん。王子不機嫌だと教室が絶対零度って感じになるからな……。」

「それにしても上級生か……。あんまり会ったりしないから意識してなかったけど、身分差じゃなくて年齢差があるのも、それはそれで強みかもな……。」

「あ、このクッキー美味しい。」


周りの生徒が何か言っているが、とりあえず俺もクッキーを齧ってみることにした。


気になるかも?良いかも?と思っていただけたらブックマーク、評価や感想をいただけると嬉しいです!

次回もお付き合いいただければ幸いです。よろしくお願いします。

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