表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者と聖女のとりかえばや ~聖女が勇者で勇者が聖女!?~  作者: 星野 優杞
勇者のままではいられない
66/104

前を向いて進もう

「あの子の勇気は本物だよ。」


放心していた俺にクローバーがそう言った。アキレアはひとしきり泣いた後、俺に謝って先に家に帰ってしまった。


「あの子は、本当に魔王を殺すと決意している。例え魔王と戦う実力がなかろうと、殺せる隙を作ってやれば、必ずやり遂げるだろう。」

「……驚かないんですか?」


クローバーの前で俺は勇者としてふるまってきた。それなのにクローバーはアキレアが勇者だと、俺が聖女だと驚かずに受け止めているようだった。


「……私は君に、嘘をついていたんだ。私が見えるのは、勇者と聖者ではなく、聖者のみなんだよ。」

「じゃあ、最初から俺が聖者だって分かってたんですか?」

「そうだね。……難儀だと思っていたよ。」

「難儀……ですか。」

「勇者と聖者は、勇気と愛。神が選ぶ基準が違う。特に魔王への感情には矛盾が発生することが多い。聖者が勇者を演じても、物理的だけではなく精神的にも魔王を殺せないだろう。」


そうか。元々、無理があることだったんだ。


「……入れ替わりたいなあ。」


俺にもっと勇気があって、あの日、泣くアキレアに、入れ替わりなんて提案しなければ良かった。

だって聖者は勇者にはなれない。俺は勇者ではいられない。


「……それでも彼は、きっと救われてきたんだろう。勇者の重責は、相当なものだ。……例え聖者のお前が、勇者以上に勇者らしくてそれに劣等感を抱いていたとしても。」

「劣等感……。」


そうだ。アキレアが演じる聖女フリージアは大人しくて可愛くて優しくてきれいで、俺なんかよりもずっとずっと聖女らしかった。アキレアも俺に、同じような感情を抱いていたのだろうか。

……だけどそれでも、俺はアキレアが大切だし、大好きな片割れだと思っている。


アキレアは魔王殺すと言った。けれど、それは、殺したいから殺すのではないだろう。

命に優先順位をつけられると、アキレアは言っていた。

つまり、つけなくてもいい状態であれば良いのでは無いだろうか?

それにアキレアは大切な存在として俺の名前もあげていた。

ある意味では、アキレアが魔王を殺すのは俺(達)のためと言っても良いのかもしれない。


「……うん。やっぱり俺、魔王を殺さない方法を探すよ。」

「おや、随分早い立ち直りだな?」

「だって俺、アキレアのこと普通に大切だし。大切な人に誰かを殺させるなんてしたくないだろ。」


過去に間違いがあっても、落ち込んでいるだけでは前に進めない。


「……そうだね。よし。君に魔王についての知識を与えよう。」

「魔王についての知識?」

「魔王を探していた時の私が、後悔していた時の私が、世界を憎んだ私が、魔王という存在について調べ、分かったことを教えよう。」


それは有り難いが……


「なぜ急に?」

「時間的余裕はそこまで無いだろう?旅をしているから暇もないだろうし……そろそろ君たちは最上級魔法を習得すると思われる。」

「それって分かるの?!」

「旅をして世界を知り、自分なりの答えが見えてくると習得できる場合が多いからな。」


そう言われると……そろそろなんだろうか?

とにかく教えてもらえることは教えてもらおう!


俺はクローバーに向き直った。

気になるかも?良いかも?と思っていただけたらブックマーク、評価や感想をいただけると嬉しいです!

次回もお付き合いいただければ幸いです。よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ