君をずっと見てたから
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水をもらって、荷物に本を突っ込んで、部屋に戻る。皆が水を飲み終わり、回復に異常がないことを確認して、俺は言った。
「一刻も早く、城に戻ろう。」
この村は、今、長居していい場所じゃない。
きっとこの村の人は悪人じゃない。でも一部の人は、何かを強く信じていて、その想いは少し扱い方を間違ったら皆を傷つけてしまうかもしれなかった。
「そうだね!魔王に会ったっていう報告もお父様にしなきゃいけないし、もう帰ろうか。」
アストロンがすぐに賛同してくれる。それにほっとした。
いそいそと城に戻ってきた俺達。
「さて、報告はライに任せてアッキーとは色々相談しなきゃね。」
アストロンは俺に、にっこり笑ってそう言った。
「そうですわね!聖女様!私たちは私たちでお話しましょうか。」
「え?!いや、ここは皆で話し合っても」
「行きましょう!聖女様。」
(ええー?!)
居て欲しいような居て欲しくないような微妙な気持ちだったが、アキレアはホワイトレースに連れていかれてしまった。
「ふふ。やっと2人っきりになれたね。」
ホワイトレースが開けて行った扉を後ろ手で閉めながらアストロンが微笑む。その笑顔に俺は思わず後ずさりしてしまいそうになる。
「アッキーが、僕に言われた言葉を考えたりして表情をコロコロ変えるのはとっても良いと思うよ。でもね、アッキーを運命とか言い放つ魔王とか、僕が知らないところで誰かに何か言われて悩むのは見てて面白くないなあって思うんだ。」
アストロンは終始笑顔だ。でもその笑顔に温度差があって怖い。前半は可愛い感じでポカポカだったのに、後半は何か極寒って感じなんだが?!
「ね、アッキー。」
アストロンが俺の前に立って目を細める。
「僕は君が好きだよ。」
「っ。」
(また……言われた。)
その言葉を言われるたびに顔が熱くなる。胸が苦しくなる。
だって、俺は、言葉を返せない。
アストロンの手が優しく俺の頬に当てられる。
「君の強いところも、優しいところも大好き。」
「アストロン……。」
「だから、僕はあのふざけたこと言う魔王が嫌いだけど、アッキーが魔王を殺したくないって言うんなら、殺さないで済む方法を考えよう。」
「っ!!!」
俺は目を見開いてしまう。
俺が、魔王を殺したくないって。
「ふふっ。」
「アッキー?」
ああ、目元が熱い。
「どうしてお前には、分かっちゃうんだろうなあ。」
「うん。ずっと、アッキーを見てたからかな。」
俺の目からこぼれる雫をアストロンは静かに拭ってくれた。
とりあえず俺の涙が止まるのを待って、多分皆は反対するだろうから、とりあえず2人で魔王を殺さずに倒す方法を考えることで話をまとめた。
(うぅ……。でもアキレアには話さなきゃなあ……。)
だって俺は勇者じゃない。魔王を殺すか殺さないかの選択は俺ではなく、アキレアがするものだ。
ちなみにアストロンの負担になるんじゃないかという俺の心配は
「え?2人で考えるってことは、2人の時間が増えるってことだよね。僕はアッキーが好きだから大歓迎だよ。ちょっと口説くくらい良いよね。それくらいの役得はありだよね。」
とアストロンがにっこり笑ったので、考えないことにした。どうやら負担では無いようなので。
日曜日の学校。一応休日も部活のためなどに学校は開いているんだが、いつもよりずっと静かだ。
アストロンと城で別れて、1人なったところで、渡された本をちらりと開いた。どうやらそれはあの村出身の聖者の日記のようで
―――――魔王も勇者も聖者も、世界の犠牲者だ。
その文を見て、俺は目を見開いた。
だって俺はその言葉を知っている。そう言ったとある聖者を知っている。
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