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勇者と聖女のとりかえばや ~聖女が勇者で勇者が聖女!?~  作者: 星野 優杞
勇者のままではいられない
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致命的な優しさ

少し洞窟で休んでから、俺達は村に戻った。

ちょっと身体的にきつかったので、少し休憩してそれから城に戻ることに決めた。何しろ魔王と遭遇した後である。

思いつめた顔をしているアストロン達の回復をアキレアと二人で行う。


「そう思い詰めるなよ。2人で魔王に剣を抜かせるところまで行ったんだぜ?」

「でも悪のオーラ……。あれの影響がある限り、アッキー達2人しかまともに戦えないでしょ。」


まあ、それはそうなんだ。


(俺が強くなって、1人でも魔王に対抗できるくらいの力を身につければ)

「状態異常を受けなくなるタイプの神聖魔法ってないの?」

「え?」

「だから、こう、事前に防ぐ感じの!」


どうやらアストロンはしっかり一緒に戦うことを考えてくれていたようだ。


「あ、アッキー。もしかして自分が1人でも強くなればとか思った?」

「うっ。」

「ダメだよ。アッキーが強くなるなら僕も強くなる。アッキーを1人になんてさせないからね。」


アストロンが俺と視線を合わせて笑う。

勘が鋭いな?それとも俺が分かりやすいのだろうか。でも俺はアストロンの言葉が嬉しかった。


っていうか、顔が近い!!

アストロンを意識すると魔王に会う前にあったことを思い出してしまう。柔らかさとか温かさとか、俺を見つめる視線とか、言われた言葉とか……色々!色々思い出してしまってもう駄目だった。


「と、とりあえず俺からの回復は以上!後は回復が十分かフリージアに見てもらってくれ。」

「髪飾りも回復量アップだし、十分だと思うけど?」

「俺は、なんか飲むもの持ってくるから!!」


赤くなった顔をアストロンはもちろん、ライにもアキレアにもホワイトレースにも見られたくなくて、俺は部屋を飛び出した。と、とりあえず休憩に使わせてもらってる宿屋の台所に行ってみよう。水でもなんでもいいから貰えないだろうか。


「おや、勇者様。」

「あ、ああ村長さん?」


台所に向かう途中で村長に会った。俺達に何か用事があったのだろうか?


「ちょうどいいです。勇者様にこれを。」


村長はそう言って俺に何か本を渡してきた。


「これは……?」

「勇者様はお優しい。」

「え?」


なんだいきなり。俺は本について尋ねたんだが。


「きっと、優しすぎるのでしょう。」

「……優しいのはいけないことか?」


どことなく咎めるような口調に、つい言葉が少し反抗的になる。


「いえいえ。滅相もございません。……しかし、勇者という存在にとって、優しすぎることは致命的とも言えるでしょう。」


やっぱり俺、咎められてるよな?思わず眉を寄せてしまう。


「ですから、お優しい勇者様にその本を。」


村長は俺に渡した本を指さした。一応本に話がつながるらしい。


(教訓でも書いてあるのだろうか?)

「本当はいつも、聖者様に読んでいただきたいと思っているのですが、今回の魔王様が聖者様はいらないと、勇者様が優しいとおっしゃるので、あなたに。」

「……?」


なんだろう?なんか言葉に違和感を感じる気がする。というか、


「魔王の話を聞いていたのか?」


俺の問いかけに村長は答えない。


「勇者様、この世界は良い世界だと思いませんか?」


台所で何やら仕込みをしていたおばさんが唐突に話しかけてくる。


「素晴らしい世界だと、そう思うんですよ、私。」

「あ、ああ。」


おばさんは俺に近づいてきた。そして急に顔をグイっと俺の方に近づけてくる。おばさんの見開かれた目が俺を見つめてくる。思わず驚いて少し後退てしまった。


「それが異常だと思ったりしませんか?」


何を言っているんだろう。続いて村長が口を開く。


「世界はもっと残酷で、歪んで、醜くて、汚いものなんじゃないでしょうか?」

「この世界はそれを神によって否定されたのだと、とある聖者様は考えました。」

「悪いものを全部取り上げるようにして、きれいな世界を作って」

「その悪いものを押し付けられた存在がいるとしたら」

「倒されるために生まれてくる存在がいるとしたら」


「「勇者様はどう思いますか?」」

「ひっ。」


村長とおばさんが尋常じゃない表情で詰め寄ってくるのに、怯えて情けない声を上げてしまう。そんな俺の様子を見て村長とおばさんは目を丸くしてから微笑んだ。


「そんなに怯えないでください。」

「私たちは別に悪のオーラの影響を受けているわけでも、悪いことをしようと思っているわけでもないんです。」

「本来の姿から歪められているならば、元に戻るべきだと思うだけ。」

「倒されるために生まれてくる存在を、そういうものだと諦めたくないだけなのです。」


村長は俺が持っている本を再び指差した。


「その本はこの村出身の聖者様のお話です。立派に役目を果たした聖者様の教えです。」

「勇者であることが酷なほどに、お優しい勇者様。」

「どうか、倒されるために生まれた存在でも、幸せになれる方法を考えてください。」

別にこの村の村人全員がここまでやばい感じなわけでなく、一部がいつかのとある聖者の狂信者っぽくなってるだけです。


気になるかも?良いかも?と思っていただけたらブックマーク、評価や感想をいただけると嬉しいです!

次回もお付き合いいただければ幸いです。よろしくお願いします。

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