噂の集落にて
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後半はアキレア視点です。
「そろそろ言われていた集落につくよ。」
ライが馬車を操りながらそう言った。その言葉に俺は馬車の向こうを見る。いくつもの山が連なっている景色。いくつかの山を越えたから、目を瞑ってその場でぐるぐる回ったらどっちから来たのか分からなくなりそうだ。迷ったらそのまま山深くに入ってしまいそうだな。そんなことを考えて景色を眺めていると何やらやたらと光を反射する葉っぱが多い山があることに気が付いた。
「なあアストロン、あの山の木、やけに反射してないか?」
「確かに……。そういう種類の木をたくさん植えているのかな?」
日が傾いてきているとはいえ、あまりにもキラキラしている。俺たちは揃って首を傾げた。
「ああよく来てくださいました。勇者様、殿下、聖女様方。」
3人分言ったらもう全員分言っても良くないか?魔法使い様と……ライは、なんだ?大臣のご子息様とか?そんなどうでもいいことを考えながら集落の長の挨拶を受ける。
「なんでも無生物の森があるとか。」
「ええ。昔は緑豊かで、多くの命を育む山でした。しかし20年ほど前に悪い精霊が元々住んでいた水の精霊を殺し、この山から生物を排除してしまったのです。そして最近はその山に限らず、周囲にもその範囲を広めているのです。」
大体は王様たちから聞いていた通りだ。20年くらい前か。俺たちの年齢を考えると最近はともかく、最初の方は悪のオーラの影響とかは受けてなさそうだけど、その精霊は元々悪い精霊なんだろうか。
「そう言えば悪の精霊って、なんの精霊なんですか?」
長は俺の質問にうなずいてから答えた。
「ガラスの精霊です。」
「おおー!きれいだな!」
色ガラスを作って作られた植物は、それはそれは精巧でまるで本物のようだった。
「質感などでガラスだとは分かりますが、凄いですね。」
ホワイトレースもまじまじとガラスでできた植物を観察している。私もそれを横から覗き込んでみる。辺り一帯の植物が全部ガラスのようだ。
「すっごい!きれい!!」
そう言って周りながらはしゃぐフリージア。
「アキレア様、元気ですね。」
「はしゃぎ過ぎだと思います……。」
ホワイトレースが微笑ましそうにくすっと笑う。
うん。こうみるとホワイトレース可愛いな。
だけど、後ろではしゃぐフリージアが気になって仕方がない。
「アキレア、はしゃぎ過ぎだよ。」
「だって見る角度によって、キラキラが違うんだ。ただ眺めるのも良いけど動きながらの方が光が瞬いてきれいなんだよ。」
フリージアはそう言いながら、くるくるとその場で回った。
「きれいなら貰っちゃおうか。」
アストロン王子がそう言ってガラスでできた花に手を伸ばす。それを見たフリージアは驚くほど素早く動く。そしてアストロン王子の横に行って、その腕を掴んだ。
「え?アッキー?」
「こんなにきれいなんだから、勝手に取っちゃいけないと思う。誰かが大事に育て……この場合は作るかもしれないけど、作ったかもしれない。」
それからフリージアは顔を上げてガラスでできた木々をぐるりと見渡す。
「それに、きっと……ここにあるから、きれいなんじゃないかな。」
フリージアの顔にきらきらと光が降っている。ガラスに反射した光が当たっているようだ。幻想的にも見えるその光景は
「そっか。アッキーがそう言うなら止めておこう。」
すんなりと花から手を引き、フリージアとの距離の近さに慌てているアストロン王子には毒かもしれない。
「山に入る道は……また明日探そう。」
本格的に日が暮れてきたのでフリージアがそう言った。私たちはそれに賛同し、とりあえず集落に戻ることにした。さて、ワープポイントを設置して帰るべきか、この集落で一泊するべきか……。
(その場合って男女で部屋分かれるとかなんだろうか?え?ホワイトレースと2人部屋?無理なんだけど?生理的にとかそういう話ではなく、ううん?そういう話でもあるのか?いやいや、それよりフリージアだよ。ライさんがいるからってフリージアをアストロン王子と同じ部屋にしていいものか?!)
私が一人で悩んでいるのに、誰も気づいてくれそうになかった。
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