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元から悪い奴というのはいるもので

とりあえず俺たちはその無生物の山に出発することにした。

息子を思ったのか王様が馬車をくれたので、それで出かけることになった。長くても学校がある月曜日には帰ってくるのに皆が見送ってくれる。俺の父さんや母さんだけでなく、国の重役も多い。ゴージャスな見送りである。

ちなみに馬車の運転はライが担当している。意外とこういう、痒い所に手が届く技能の持ち主だ。すごいなと言うと、アストロンに技能習得をしておくように言われたらしい。……お前、苦労人だよな。

ちなみに馬車もワープポイントに対応させたらしい。本当に技術すごいな?勇者と聖者は自然に世界を見るのが良いとされているらしく、護衛はいない。


「おお……。」


広がる草原と軽く整備された道。家と学校と城下町くらいしか行ったことが無い俺にとっては、城の逆方面も初めての光景だ。あ、学校の実習のモンスター退治に行った場所くらいは知ってるけど。

とにかく物質や物体としてはそこまで目新しいものはないけど、見たころが無い風景を見るのはとてもワクワクする。


「フリージア!あの山も越えると思うか?」


そう尋ねながら振り返ると、アキレアは馬車の後ろの方で景色を見ていた。


「フリージア?」

「いえ、この城下町……そこから出るんだと実感してて。」


アキレアは不安そうな顔で、遠ざかっていく城を見ていた。


「……怖い?」


俺の言葉を聞いて、フリージアは目を閉じた。それから少しして首を横に振った。


「……いいえ。だって勇者アキレアが守ってくれるでしょ?」


俺の方を振り返って、そう言った。


「ああ。っうわ?!」

「そうそう!僕とアッキーが協力すれば、巨大な魔物も倒せるし!!大丈夫大丈夫!」


いきなりアストロンが俺の肩に腕を回して、明るい声でそんなことを言った。


「そうだ!皆に説明しておきたい呪文があるんだ。」

「呪文?」

「マジックアイテム学以外に魔法開発学の講義も受けたからね。マジックアイテムだけじゃなく、旅に役立ちそうな呪文も作ったんだ。『アッキーの旅を快適にする呪文その1 アイテム収納』!」


そう言ってアストロンが俺たちに教えてくれたのはアイテムを収納する呪文だった。その、俺の旅に役立ちそうなシリーズ、どれくらいあるんだよ。


「大きなリュックって感じかな。現実世界とつなげても良かったんだけど、そうするとその世界の設定がいじりにくいからとりあえず小さな異空間に繋がってるよ。」


なんだかよく分からないけど、たくさんのアイテムをかさばらずに持ち歩けるらしい。


「旅は身軽じゃなくちゃね!」


アストロンがそう言って歯を見せて笑った。


「人数制限があるにしても異空間にアイテムを収納する魔法を実現するなんて……。」

「やっぱりすごいですよね?」


ホワイトレースさんとアキレアが魔法のすごさについて語りだす。そんな中でライだけは呆れにも近い苦笑いをしていた。




「それにしても新しい世界ってなんかわくわくするよな。」

「そうだね。アッキーと一緒だから怖くもないし。」

「ああ。」


城から大分離れて、道も舗装されていないところが多くなってきた。そんな道を進んでいくと


「ハッハー!良い馬車じゃねえか!!命は助けてやるから有り金全部おいていきな!!」


とかなんとか言いながら、なんか刃物を持った人間が出てきた。


「いや、そろそろ道も悪くなってきたしモンスターとか動物とか魔物とかでるかなー?と思ってはいたよ?いたけどまさかの初めての戦闘が賊とかどうなんだ?」

「うーん。まあ出る時には出るからなあ。」


アストロンとちらりと目を合わせて、剣をとる。そしてこいつらってなんだ?種類的には盗賊?山賊?


「ここは確かに少し小高いがな、山とは言えねえ!つまり俺たちは盗賊だあ!!」


……丁寧な自己紹介ありがとうございます。


「人間も悪のオーラに影響されるって言ってたし、モンスターは人間にもとりつくっていうし、こういうこともあるよな。」

「うん。今実際目の前に悪い人間がいるもんね。」


俺とアストロンは目を合わせて頷く。


「人間を倒す経験も必要だよな。」

「学校でちょっと悪ガキな奴らは倒してたけどね。」


俺たちは揃って馬車から降りると剣を抜いた。まあ、俺の場合は剣を出したという方が正確な表現だが。


「おお?やる気か?坊ちゃんた」


相手が何か言うのを待ってやる必要はないだろう。死なない程度に、モンスターをたたき出すように斬りつけることにした。




「……うーん?モンスターが抜けないな?」


ある程度ぶちのめしても盗賊たちは改心する様子がない。怯える様子はあるけれど


「まだ足りないか?でもこれ以上やったら治療してやらないと時間経過で死にそうだしな……。」


例え即死じゃなくても、重症だと時間経過で死ぬことがある。そこまでしなくても普通悪のオーラというのは抜けるんだが。というか、これ以上傷を負わせるのが正直辛いんだが。


「うーん。もしかしてこの人たちは、元々悪人なのかも。」

「元々?」


アストロンが苦笑しながら言う。


「悪のオーラの影響じゃなくても、元々悪い人っていうのはいるものだよ。ほら、アキラだって悪のオーラの影響は受けてなかったじゃないか。」

「確かに。」


そう言われてみればそうだ。世の中の全ての悪が悪のオーラによるものであるなら、魔王がいない時は悪い人はいないはずだし。元々悪いやつというのは存在するんだろう。……そしてアキラが改心?したのもアキラの意志であって魔王は無関係のはずだ。


「じゃあ仕方ないか。」


とりあえず気絶させて無力化を図る。盗賊は怪我はしてるけど暴れなければ大量に流血することも無いだろう。暴れると出血多量になる可能性があるよ!と書置きをして全員を木に縛り付ける。


「お父様にはいつでも連絡が取れるようになっているので、とりあえず近くにいる兵士に引き取りに来てもらうように連絡しておくよ!」


アストロンがそう言うと、ライが早速何かアイテムを使いだした。そのアイテムで連絡を取るらしい。

その後も弱い魔物が数体現れたが、軽く戦うとどこかに逃げてしまった。どうやらこちらはモンスターがついていたらしい。


「元から悪い奴に魔王って無関係なんだな。」


ふとそんなことを思ってしまった。


気になるかも?良いかも?と思っていただけたらブックマーク、評価や感想をいただけると嬉しいです!

次回もお付き合いいただければ幸いです。よろしくお願いします。

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