性別を超えた美しさ
空き教室に入るとアキレアは俺の服を整えたり、化粧をしたりし始めた。初めは驚いたが
「触れるのも怖いくらいきれいにしちゃえば、誰も手出しできないから!」
と押し切られた。アストロンはその様子を大人しく見ている。
「王子、少し不機嫌ですね。」
アキレアが俺の髪を飾りながら話しかける。俺の背中の向こうで2人が会話を始めた。
「まあね。皆分かってないんだよ。アッキーは何を着てても綺麗だって。」
「っ……。」
(アストロンはな・に・を!言ってるんだ?!)
顔が熱い。今、アキレアにもアストロンにも背を向けていて良かった。顔が赤いのがバレてしまう。
「そうですねえ。でも、王子は皆に分かって欲しいですか?」
「?」
2人の方が見えないからよく分からないが、アストロンが静かだ。え?なんだその沈黙!?
「……僕もちょっと自分で飾るよ。すごくきれいなアッキーの隣に立っても大丈夫なように。」
「はい。王子ならご自分の魅せ方は分かってますよね。」
「まあね。」
(く、口を挟みたいのに挟めない!!)
なんか色々俺がきれいとか、アキレアがめっちゃ挑発的だなとかツッコミを入れたいのに入れられない!!圧が、圧が強い……!!
さて、そんなこんなで一応俺の飾りつけが終わったわけだが……。
「大丈夫か……?勇者としての威厳とか……」
「キレイ全振りにしたから大丈夫!性別関係なくきれいって感じだから!」
それなら……良いのか?
さて、俺は振り返りアストロンの方に向く。
「……。」
そうか。性別を超えた綺麗とはこういうことか。
俺は今、アキレアが言った言葉を理解した。
そこには、とても綺麗なアストロンがいた。成長途中の独特の儚さと危うさ。体はどちらかというと男性的なのに、メイド服を着ているギャップ。そしていつもよりキラキラ感が増した髪と瞳。
アストロンは彼に見惚れる俺を見て目を細めた。そして徐に距離を詰め、俺の頬に手を当て、微笑む。
「実はさっきは見とれちゃって言えなかったんだけど、……綺麗だよ、アッキー。」
「っ!!」
間近でアストロンの笑顔を受けるだけでも死にそうなのに、なんかすごいこと言われてる気がするんだが?
「じゃあ、教室に戻りましょうか。」
「だ、大丈夫か?また追いかけられないか?」
「私も一緒に行くから大丈夫だよ。それに2人とも触れちゃえば壊れちゃいそうな綺麗さが出てるしいけますよ。」
……なんでアキレアはそんなに自信満々なんだ……。
そうして俺達は教室に戻った。
「…………。」
なんだこの状況は。
俺とアストロンが教室に入った瞬間に皆が息をのんで固まった。しかも一部は床にひれ伏している。
……もう一度言う。なんだこの状況は。
「え、えっと……フリージア様?」
ドロシーがたどたどしくアキレアに話しかける。アキレアは良い笑顔でドロシーに向き直る。
「どうでしょう!すっごく綺麗にできたと思うんですが。」
「え、ええすごく美しいと思いますが」
「同じ顔ですもの。私が誰よりも綺麗に飾る方法を知っていると思いませんか?」
「え、ええ。」
「当日もアキレアのメイクなどは私が行いますから、安心してくださいね!」
「は……はい。」
(つ、強い。)
アキレア、怒涛の言葉でドロシーを言いくるめたぞ。
そして当日は俺とアストロンはなんか教室の隅で座っていることになった。なんでも俺とアストロンはここにいるだけで集客になるらしい。少し複雑な気持ちである。
ちなみに頭には何か白い花が飾られている。なんか儚さとか神聖さを強調するためらしい。
……この恰好そんなに完成度高いんだろうか……?
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