学園祭の出し物について
「あれ?……フリージア?」
「ああ、アキレア。こんなところであるなんて奇遇だね。アキレアも本が好きだっけ?」
勇者と聖者についての本が集められている部屋。クローバーがいる部屋に来ると先客がいた。いつもここに来る時はアストロンやライがいない時だったから、案内してくれたサルビアさんやクローバー以外の誰かに会うのは初めてだ。そしてそれがアキレアだったことに俺は驚いてしまう。
「いや、俺、案外ここには来てるんだけど。今まで会わなかったな。」
「私も結構来てるよ。偶然今まで会わなかったのかも。」
「もしかして色んな事をここで調べてたのか?」
「まあね。お父さんとお母さんが頑張って集めてくれた本だけじゃ、全然足りないから。」
アキレアは過去の勇者の話も、ライたちが言っていた言い伝えも知っていた。どうやらこの部屋の本も読んで知識を得ていたらしい。2人きりだけど家じゃないし
(アキレアは知らないけどクローバーもいるからな。)
とりあえず互いの呼び名は入れ替えたままにする。
「それにしても本当に最上級魔法なんてあるのか?」
未だに俺たちはそれぞれの最上級魔法を獲得できずにいた。結構神聖魔法も使えるものが多くなったとは思うんだが。
「やっぱり実戦経験が足りないんじゃないかな?旅に出る必要性があるのもそのためかもしれないね。」
確かに旅をせずに最上級魔法が覚えられるなら、勇者を旅に出す必要はないかもしれない。強い勇者を作って、軍隊と一緒に魔王のところに送り込んで止めだけ刺させればいいのかもしれない。うーん?魔王討伐だけを考えたらそっちの方が楽そうだけど。
(世界を知ることで、最上級魔法が使えるようになるんだろうか。)
神聖魔法は神の加護を受けた者だけが使える。神聖魔法に神の意図が混じっているとしたら
(知らないものに、決断を下す力は与えられないんだろうか。)
なんとなくアキレアの前でクローバの本を開く気にもなれず、俺は剣の参考にするため歴代の勇者の武器の本を開くことにした。
「男女逆転喫茶?!」
「そうだよアキレア君!」
この学校にも学園祭というものはある。初等部の頃は出し物などはなく、アストロンやライと学校をめぐりながら楽しんでいた。
中等部になると出し物をしなければいけないのだが、とりあえず去年はアキラを中心に実家の力も使って仕入れた小物を売ってみたりしたのだ。俺達も客の呼び込みをしたりした記憶がある。それが今年は
「商売をするのに、良い商品は必須!だけど学園祭で求められているのはそこじゃないの。もっとアイデアを求められてるのよ!!」
いつもはそこまで絡みが無い女子生徒がぐいぐい言ってきて気圧される。
「こういうのはアキラとか、クラスの中心的な男子生徒を説得すべきなのでは?!」
「アキラ君は商売の新しいアイデアならありかもって言ってたよ!それにアキレア君が頷いてくれればアキラ君はもちろん、アストロン王子も同意してくれるはず!!」
「どういう状態なんだそれは?!」
どうして俺を説得するとアキラもアストロンも同意することに繋がるんだ?!アキラは検討中ってことなのか?ていうか、男女逆転喫茶ってなんだよ?!
「えっと、ドロシー?ドロシーは男装がしたいの?」
目の前の女生徒の名前、初めて呼んだ気がするなと思いながら落ち着いてほしくて、質問をしてみる。
「男装も良いものでしょう。私たちは騎士クラスの女子。男装の麗人になって、可愛い他のクラスの女子達をもてなしてみたり、男子達をときめかしてみたりしたいんですよ!」
どういう憧れだ。いや、ロマンス的に言うとありなんだろうか。リアルで男装してる俺からすると、大変だと思うよ?としか言えないんだが。
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