ワープクリスタル
「それが秘密兵器か?綺麗だけど」
「まあ!!もしかしてそれは王子殿下が王様やお父様たちを説得して国家予算を出させて開発したというマジックアイテムではありませんか?!」
魔法に目がないホワイトレースが飛び上がる。マジックアイテムも彼女の魔法の範疇なのだろう。
というか、なんだって?国家予算を出させて開発した?
「その通りだよ。王宮魔術師や錬金術師、魔具師達に普段の作業を効率化させて、空いた時間で開発させた『アッキーの旅を快適にする道具その1 ワープクリスタル』だよ!!」
「その1ってなんだ?!というかなんだそのシリーズ名?!」
「魔王に対する最重要戦力の勇者の旅を快適にするのは、国の……いや、世界の義務だよ。」
アストロンはニコニコしながら答える。なにそれ怖い。そこまで気を使われると
(俺、本当は勇者じゃないからすっごく申し訳ない!!)
……でも結果的にアキレアも助かるからよしとしておこう。
「それで、そのワープクリスタルはどういうアイテムなんですか?」
アキレアが冷静にアストロンに尋ねた。アキレア、お前動じないのか。
「このワープクリスタルは、一回行った場所に設置することによってその場所にワープできるようになるんだ。」
「え?!何それすごい!!」
「でしょ!アッキーのために作ったんだよ!!」
思わず立ち上がった俺の手をアストロンがとる。2人ではしゃいでいるとアキレアが冷静に口を開いた。
「つまり、一度行けばその場所までの移動をショートカットできる。また、次の場所に向かう時もそこから向かえばいい。確かに画期的なアイテムです。しかし使用の副作用や悪用の恐れ、また使用の制限などがあるのではないでしょうか?」
本当に冷静だな!流石アキレア!
「その辺りは対策済みです。まず副作用は場合によっては酔う可能性がありますが、それ以上の副作用は確認されていません。アストロン王子が自分の体を実験体にしてたので安全だと思われます。」
ライの言葉に俺はアストロンの肩を掴んだ。
「実験体って、おま、大丈夫だったのか?!」
「大丈夫だよ。アッキーに変なものを使わせるわけには行かないからね。それに王子の僕が実験体になることによって、皆すっごく慎重に丁寧にアイテムを作ってくれたよ。」
なんてことないように笑うアストロンの手を両手で包み込む。
「アッキー?」
「俺は、俺のためにお前に傷ついてほしくない。もっと自分を大切にしてくれ。」
願うようにそう言えば、アストロンは少し息を詰めた後
「それはアッキーもだよ。僕を助けるために神聖魔法を使って自分の防御が疎かになったこと、忘れてないからね。」
「うっ。」
それはあの巨大な魔物との戦いでの話だろう。それを言われると少し痛いな。
「アキレア?自分の防御が疎かになったんですか?」
「ひぇ。」
後ろから冷たい声が飛んできて驚く。振り返ればアキレアがにっこりと笑っていた。アキレアにはあの戦闘の話はあんまりしていないのだ。アキレアはアキレアで俺に、まずは自分の身を守れと口うるさく言ってくる。これは家に帰った後お説教かもしれない。
ちなみにワープクリスタルは魔力を登録して使うもので、今あるものは王族の許可がないと登録できないので悪用の恐れは低いらしい。また、破壊されると使えなくなるのでモンスターが多い場所には置かない方が良いとのことだ。
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