勇者パーティと権力
初等部でも高学年になると公開手合わせが行われる。2対2のトーナメント戦で勝ち抜いていくのだ。それを学生だけでなく保護者や一般の人に公開している。
俺とチームを組んでくれたのはアストロンだ。背中を預けて全力で戦えるのは気分が良い。他の人とだったらこんな風にはいかないだろう。
(ああ、アストロンと一緒に旅ができたら楽しいだろうな。)
やっぱりアストロンと旅がしたいなと、心から思った。
2人とも楽しそうだな、と早々にトーナメント戦で退場したので観客席から見学させてもらう。周りの客席から歓声が上がる。
うんうん、そうだよね。あの2人のチームワークはすごいもんね。だからこそ苦笑するしかない。
「あー……俺、アッキーには普通に幸せになって欲しいんだけどなあ。」
他のクラスの生徒とも当たるけど、俺のクラスはやはり俺がいることが刺激なっているのかある程度上位まで勝ち抜いているクラスメイトもいた。女子生徒のペアとアキラとクリスのペアが準決勝まで残っていた。ちなみに元いじめっ子ABCのBことビリーは武器マニアのブラックと組んでいた。
アキラは意外とやる気満々で「もし優勝出来たら俺もアキレア達のパーティに入れるかもしれねえ!」とか言っていた。あの初めてのモンスター討伐以降、アキラ達に大分なつかれている気がしなくもない。
まあ、そんなアキラたちだが決勝で俺とアストロンに当たり、授業と同じように俺達に倒された。
「よし!優勝!!」
「僕たち授業の試合でも負けなしだもんね。」
全ての手合わせが終わって、アストロンとハイタッチをする。
「今日の公開手合わせは王様も見ていたんだっけ?」
「うん。先生もそう言ってたね。」
「……勇者のパーティメンバーとかの参考にするんだろうか。」
「参考になると思うよ!僕の良いところも見せられたと思うから、パーティに選ばれる材料になるかも。」
そんなことを言われたら期待したくなってしまう。一緒に旅ができるんじゃないかと思ってしまう。
「そうだったらいいなあ。」
俺の一存じゃパーティメンバーは決められないけど。
「お前たちのパーティメンバーの候補、剣士の枠は王子様らしいぞ。」
公開手合わせから少しして、初等部卒業の前日、父さんがそんなことを言ってきた。
「王子……?」
「ああ。この世界を救うために王族が自ら立ち上がるそうだ。剣の腕も良いらしいぞ。アキレアは中等部からはこの王子とのチームワークを高める訓練もしないとな。」
父さんは笑いながらそう言った。
一方俺は、虚しさでいっぱいだった。勇者でも、王族の決めたことに文句なんて言えない。あんなに頑張ったアストロンの努力も、王族が出てくると言うだけで無駄になる。王子様なんて、
「アストロンより息が合うやつなんているわけないじゃないか。」
悔しさから、唇を噛みしめた。
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