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勇者と聖女のとりかえばや ~聖女が勇者で勇者が聖女!?~  作者: 星野 優杞
勇者な聖女と聖女な勇者
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勇者アキレアは彼の友達

「今日から貴族公認の聖女と勇者ね。」

「「フリル様!!」」


アストロンと話していたから気付かなかったが、フリル様が俺達のすぐ近くにいた。


「そう言えば、ホワイトレースと学年が違うけど仲良くしてもらってるみたいね。」

「は、はい。ホワイトレースは、あ、えっと……ホワイトレース様は」


アキレアはフリル様と話し始めた。


「それにしても。」

「ん?」


俺の目の前でアストロンが眉を顰めている。


「どうしたんだ?」

「アッキーの服ってあれでしょ?王室御用達の仕立て屋さんに作ってもらったんだよね?」

「あ、ああ。」


どこかおかしかっただろうか?


「形、いや色かな?似合ってるけど、ピンとこないっていうか……。」

「お、おお?」


アストロン的にこの服は何か気に入らないらしい。難しい顔をして、仕立て屋さんの腕が鈍ったのかなとか呟いている。


(もし何か違和感があるなら、多分原因は仕立て屋さんの腕じゃなくて俺達が入れ替わってることなんだよな……。)

「俺は似合ってると思うよ?」


ライがアストロンに苦笑しながらそう言ってくれた。


「そうだアッキー、ローストビーフがあるんだよ。食べてみない?シェフが切ってくれるんだ。」

「なんだそれ!食べてみたい!!」


ライが口にした言葉に俺が興味を示すと、ようやくアストロンが顔を上げた。


「僕も一緒に行く!」




ローストビーフを食べて、他にもライが進めてくれたサンドウィッチや、アストロンが教えてくれたお菓子を食べた。


「ん?アキレアじゃないか。」

「先生!」


最近学校に行っているから、週末にしか会えない先生がいた。そうか、そう言えばたまに城に行くような人だった。こういう場面にいても不思議じゃないのかもしれない。


「って、あなたは」

「へ?」


先生は俺の後ろを見て、目を丸くした。俺の後ろ?


「あっははははは!!これはこれは!バルーム様じゃないですか!!」

「え?!あ?」


ライが飛び出していって先生と少し離れた場所に移動する。


「ライ、先生と知り合いなのか。」

「ライはああ見えて大臣の息子だからね。」

「え?!」


大臣と言えば王様に仕える家臣の中でもトップの貴族……。


「思った以上に上流貴族……。」


少しするとライと先生がこちらに戻ってきた。先生は少し難しい顔をすると俺の肩にポンッと手を置いた。


「先生?」

「……頑張れよ。じゃあまた今度訓練でな。」

「先生?!」


そうして先生は逃げるようにどこかに行ってしまった。


「どうしたんだろう?」

「この場の雰囲気が合わなかったのかもしれないね。」

「この場の雰囲気って、確かにちょっとべったりしてるよね。」


ライの言葉にアストロンが同意した。それから俺の方を見て


「だから一緒にちょっと庭園に行こう。」


と言った。




パーティ会場から抜け出し、庭に行く。ライやアストロンは俺より城を歩きなれているらしく、迷う様子もなく歩いていた。


「わあっ!」


そうして辿り着いた庭。魔力を宿しているのか、ぼんやりと花が光っている幻想的な場所だった。同じ花のようだけど、色とりどりに輝いている。花を見ている俺にアストロンが近づいてくる。


「ふふ。この花はね、全部白なんだよ。でも皆持ってる魔力が違うから、こんなに色とりどりに光るんだ。」

「そうなのか。」


花の光に照らされたアストロンの横顔は、辺りが暗いからかいつもより大人っぽく見える。

きらきらして可愛い、俺の友達。

でもこう見ると性別を超えた美しさ以外に、確かに男性らしいたくましさのようなものを感じる気もする。背が伸びたから、尚更だ。同じくらいの身長で見るアストロンは心臓に悪い。

アストロンは俺の視線に気が付くとにっこり笑った。そしてそのまま頭を下げ、俺に手を差し伸べる。


「一緒に踊ってくれませんか。」


踊るのは、結構好きだ。

その楽しさを教えてくれたのは目の前にいる彼だ。


彼と昼間、駄菓子屋の裏で踊るのも楽しい。

適度な運動で鼓動が早くなるのも心地いい。

ああ、なのに


(どうしてこんなに……)


この手をとることに緊張しているんだろう。


人混みから抜け出して、アストロンと俺と、ライしかいない庭なのに

走ってきたわけでもなく、まだ踊ってもいないのに


(息がしづらいくらい、心臓が高鳴ってる。)


それでも俺にアストロンの手をとらないという選択肢は無かった。


手を重ねた瞬間にアストロンが少し目を見開いて、それからふにゃりと表情を崩した。それにまた心臓が跳ねる。


パーティ会場から漏れてくる音に合わせて踊る。男女パートを一曲ずつ交換しながら。くるくるくるくる。


心臓が痛くって、涙が出そうになった。

この時間が過ぎていくのに、酷い焦燥感を覚える。

俺はずっと、こうしていたい。

これからもアストロンの隣にいられたら、手をとって踊れたなら、どれだけ幸せだろう。


でも俺は知っている。

時は過ぎるものだし、勇者のパーティメンバーは俺の独断で決められるものじゃない。国の色んな人の思惑が絡んでくるのだ。

俺の旅立ちがアストロンとのお別れかもしれない。

そうじゃなくても


(アストロンはきっと、将来他の女の人の手をとって踊るんだろうな。)


こんな庭じゃなくて、城のパーティ会場で堂々と。

それこそ、将来結婚する人と。

それは俺じゃない。

だって俺は、勇者アキレアとしてアストロンの友達でいるんだから。

気になるかも?良いかも?と思っていただけたらブックマーク、評価や感想をいただけると嬉しいです!

次回もお付き合いいただければ幸いです。よろしくお願いします。

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