表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者と聖女のとりかえばや ~聖女が勇者で勇者が聖女!?~  作者: 星野 優杞
勇者な聖女と聖女な勇者
13/104

初の実戦 後編

スライムにアストロンと同時に攻撃を当てて倒す。

後ろでライが苦笑いしながら


「オーバーキル。」


とか言ってる。一応ライも数体のモンスターを倒していた。


「うん!僕たちのモンスター討伐数、ダントツじゃないかな?」

「まあ、そうかもな。」


アストロンは嬉しそうに胸を張っている。それからアストロンは周りを見渡して眉間にしわを寄せた。


「アストロン?」

「あの、いつも絡んでくる三人組がいない。」

「いつも絡んで……ああ。」


いじめっ子ABCか。言われてみればいないような……。


「どうかしましたか?」


俺達の行動に気付いたのか兵士さんが話しかけてくる。


「クラスメイトが見当たらないんです。」


そう答えると兵士さんは顔色を変えた。


「すぐに探します。皆さんは先生のところに」

「「「わあああああああ!!!」」」


兵士さんの言葉を遮るように悲鳴が響く。どうやら平原の近くの森からだ。


「あいつらの声だ。」


俺はそれを認識すると駆け出していた。


「アッキー!!っ兵士さんたちも来てください!!」


人の悲鳴を聞いて、見捨てるなんてできるわけない。

少なくとも、俺が思う勇者は見捨てない!


森に入ってすぐのところに3人はいた。


「いじめっ子A!!」


いじめっ子Aはしりもちをついていて、そこに小動物くらいの大きさの魔物が飛びかかるのが見えた。


「っ!!」


この前覚えたばかりの神聖魔法を咄嗟に発動させる。

いじめっ子Aと魔物の間に見えない壁ができる。咄嗟だったから強度は低いけど、それでも魔物を一度はじき返すには十分だったみたいだ。

Aを守れたことを横目に確認しつつ、俺は体勢を崩した魔物に斬りかかった。


(っ硬い!)


小動物くらいと言っても、魔力を持つ魔物。モンスターに操られていると、影やスライムよりだいぶ厄介らしい。


「アッキー!!」


1人の力だと押しきれないと思ったところに、金色の光が見えた。

魔物からモンスターが引きはがれて霧散する。地面に落ちた魔物はそのままどこかに走り去っていった。


「アストロン、ありがとう。」


アストロンが加勢してくれたおかげで、モンスターを撃退できた。アストロンの髪が木漏れ日の中で金色の光に見えたのだ。


「これくらい当たり前だよ。」


にっこり笑って剣をしまう彼に、一瞬周りの音が聞こえなくなるような心地がした。聞こえるのは自分の心臓の音だけ。見えるものも、彼だけになるような感覚。


(な……んだ、この感覚。)


動いた後だからというだけじゃない、体が熱くなる感じ。

そんな感覚に戸惑っていると


「アキレア!!お前はまさに勇者だ!!!」


いきなり横から大声で話しかけられた。

驚いてそちらを見ると感動したのか怖かったのか、涙ぐんでいるいじめっ子A……アキラがいた。その後ろでビリーとクリスもこくこく頷いている。

気付けば兵士さんたちが俺達に追い付いていて、安全を確保してくれていた。唐突に現実に引き戻された俺は、さっきの感覚を不思議に思うばかりだ。




さて、トラブルもあったので兵士さんたちに囲まれてクラスメイト全員で町に戻ることになった。


「お前は、本当に、こんな俺達を助けてくれて……。お前が冒険に行くときは俺、全力でサポートするから!!」


アキラがずっと騒いでいてうるさい。まあ、元気そうならよかったけど。

そう思って隣にいるアキラを見る。


「あ、腕怪我してる。」

「え?木に引っ掛けたかな。でもアキレアが助けてくれなかったらもっとヤバかったからこれくらいは大丈夫だぜ。」


確かに軽い切り傷だけど、小さい怪我でも見ているとソワソワする。俺はため息をついた。怪我を見ているのは苦手なのだ。


「腕出せ。」

「ん?こうか?」


アキラは素直に腕を出した。俺は神聖魔法を使ってその傷を簡単に治してやった。まあ、軽く、皮膚をくっつけただけだけど。


「うぇええ?!」

「うるさいな?!さっきから騒ぎっぱなしじゃん。」

「いや、え?回復魔法?!勇者って回復魔法使えんの?!」

「使える。」

「回復って聖女の役目じゃねーの?!」

「聖者と勇者は最上級魔法以外は同じ魔法が使える。」

「えええぇー?!」


これ以上は面倒だ。俺はアキラの腕から手を放す。


「アッキー。」

「ん?」


アストロンに話しかけられて振り返る。


「アッキーは大丈夫?怪我してない?」


アストロンは俺に近づいてそう尋ねてきた。


「だ、大丈夫だと思うが。」

「無茶しちゃダメだよ。アッキーは強くて優しいから、誰かを助けるために飛び出しちゃうんだろうけど、さっきは兵士さんたちもいたんだ。任せても良かったんだよ。」


アストロンが眉を下げて言う。心配してくれてるんだろう。


「うん。でも、俺は勇者だからさ。泣いてる誰かがいたら、助けたいって思っちゃうんだ。」


努めて明るく、笑顔でそう言えばアストロンはさらに眉を下げた。


「自分のことも大切にしてね。」

「出来る限りは……。」


約束はできないと思った。勇者じゃないのに勇者になるなら、それくらいの覚悟が必要だと俺は思っていた。

気になるかも?良いかも?と思っていただけたらブックマーク、評価や感想をいただけると嬉しいです!

次回もお付き合いいただければ幸いです。よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ