初の実戦 前編
モンスターの説明をしてますが、この世界で倒すべきものはモンスターであり、魔物ではありません。魔物は魔物で、動物と同じような感覚で存在しています。
「今日は初の実戦を行います。」
担任の先生がそう言った。
そう、俺達は今日初めて町の外の平原で悪のオーラに影響を受けた敵と戦うのだ。1年生の時から授業を受け、中学年後半になっての実戦である。この実戦はクラスごとに行われていて、万全を期して国の兵士が多数ついてきてくれる。
ちなみにクラス変更はよっぽどじゃないと行われないので、1年の時からクラスメイトはずっと同じである。
「それにしても随分厳重じゃね?」
体格が大きい男子生徒……一応名前も覚えた。アキラがそう言う。ちなみに彼の取り巻きの名前はビリーとクリスである。密かに心の中でいじめっ子ABCと呼んでいるのは許してもらいたい。
「あの人知ってる!あの人、王宮騎士団の副団長だぜ!」
「なんでそんなすごい人がここに?」
どうやら来ている兵士の中にはすごい人もいるらしい。俺が見ても分からないが
「わあああ!すごい!!あの人の剣、王宮騎士団の紋章の細工が施されてる!!近くで見れるなんて……!!よく見ればあっちの槍もなかなかの傑作じゃないか!!」
武器マニアのクラスメイトが誰に話すわけでも騒いでいる。ちなみにこの武器マニアのクラスメイトの名前はブラックである。個人的にBがかぶった……と思っているが気にしないで欲しい。
「あー、あれじゃね?間違っても勇者様が死んじゃったらいけないからじゃねーの?」
「確かにな。魔王倒す前に雑魚に倒されましたなんて洒落になんねーもんな!」
いじめっ子ABがそんなことを言いながらチラチラこちらを見てくる。悪口というか、からかっているというか……。いや、まあ実際死んだら洒落にならないし、どうしても初の実戦なので兵士の皆さんがついてきてくれるのは有難いと思う。
(実際勇者でもないし……。少し申し訳ないが。)
初の実戦が怖くないわけじゃないんだ。
「アッキー!頑張ってモンスターを倒そうね!!!!」
「あ、ああ。」
何やらアストロンが張り切っている。俺は少し気圧されながら頷いた。
悪のオーラから生み出される、人間や世界に悪意を持った存在がモンスターだ。
野生の動物や魔物とは違い、魔王がこの世界に存在している間に絶えず生まれ続けるもの。モンスターは集まって意思を持つ存在になることもあれば、動物や魔物にとりついて操り人を襲わせるものもいる。
今日行く平原では『スライム』や『影』と呼ばれる純粋なモンスターが出るらしい。倒しやすいのはこの2種類のモンスターで、他のモンスターを見かけた場合にはすぐに担任の先生や、兵士に報告するようにとのことだ。
「じゃあ皆さん、見える範囲でモンスターを倒して実戦経験を積みましょう。」
町から出てすぐそばの平原。
(こんなに町の近くにもモンスターが出るのか……。)
やはり魔王は倒さなければいけないと心の中で決意を新たにする。
俺が強くなって、アキレアに止めを刺してもらえるようにならないと!!そんなことを思っていると何もないところからフッと黒いものが現れた。
「これが、影!」
授業で習ってはいたが、本当にモンスターは何もないところに出現するようだ。ちなみに町にはモンスターが出現しないように結界が張ってあるらしい。
現れた影に素早く駆け寄り、後ろから神聖魔法で作った剣で斬りつける。倒しやすいというのは本当のようでたった1回斬っただけなのに影は霧散するように消えてしまった。
「倒せたのか……?」
「わあ!アッキーおめでとう!!」
アストロンが後ろでニコニコしながら手を叩いてはしゃいでいる。
「アッキーの勇姿、もっと見てたいけど、僕もモンスターを倒さなきゃ。」
「よし、一緒にこの平原のモンスターをたくさん倒すか。」
「うん!」
俺とアストロンは先生や兵士達に見守られている中でモンスターを次々倒していった。
「くっそ!あいつら次から次へとモンスターを倒しやがって。俺よりずっとひょろひょろのくせによぉ!」
「いや、アキレアは勇者だし。仕方ないよアキラ。」
「そうそう。そろそろ張り合うのは諦めようぜ?」
「お前ら……。じゃあアストロンはどうなんだよ!!後から入ってきて俺より強いとか認めねえぞ!」
「いや、あいつは別の方向でヤバいと思うし。」
「うん。あれはあんまり刺激しちゃいけねータイプだと思う。」
「数は勝てねえ……。ならあいつらより強いモンスターを倒すしかねえ!!」
「ちょ、アキラ?!」
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