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勇者と聖女のとりかえばや ~聖女が勇者で勇者が聖女!?~  作者: 星野 優杞
勇者な聖女と聖女な勇者
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調理実習!

騎士は色んな所で戦ったりするから、いつも家でご飯が食べれるとは限らない。だから学校の授業では調理実習もある。

教わるメニューは一般的な料理から、野生の動植物を使った料理まで。大分範囲が広い。美味しさよりも安全に食べることができることを重視した授業内容だ。


「今日はカレーを作るんだって。」

「カレーかあ。僕はビーフカレーがいいなあ。」


ライの言葉にアストロンがニコニコしながら言った。


「ビーフか。ポークもチキンも美味しいと思うが……。」


肉無しカレーも無きにしもあらず。豆腐カレーとかも意外と美味いよな。


「ライは?」

「俺もビーフかな。あとシーフードも好きだよ。」


……そう言えばこいつら上級貴族系だったな。そうか、カレーはビーフか。中級の下の貴族の俺の家とはお財布事情が違うのは当たり前だよな……。


「それにしても不思議なんだけど」

「ん?」

「どうして自分で作らなきゃいけないんだろうね?」


きょとんとした顔のアストロンに俺はため息をつく。授業の趣旨を理解していないんだろうか?


「だから戦場でなんでも料理できるように」

「戦場でも料理人さんについてきてもらえば良いんじゃない?」


……ダメだこいつ。早く何とかしないと。


「危険だろ!料理人さんは戦えないんだぞ?普通。」

「僕が守ってあげればいいんじゃないの?」

「……いやいやいや。」


間違ってはいないけど、それでも家で料理をしてもらうのとは大分違うし……。そういう余裕がある戦場の話じゃないと思うし……。


「料理が上手いとプレゼントとかにも使えるよ。」

「「プレゼント?」」


ライの言葉にアストロンだけじゃなく俺まで首を傾げてしまう。


「誰かのために料理を作る。その行為も、そうしてできた料理も、世界で1つだけ。その人の料理。それを作るのも、食べるのも素敵なことじゃないかな?」


ん?なんだかよく分からないが


「とりあえず料理は食べるだけじゃなく良いことにも使えるってことでいいか?」


俺がそう言うとライは苦笑した。ちょっと違うのか。

俺とは違いアストロンは少し考えている。そして


「僕が料理を、アッキーに作ってあげることができるってことだね!!」


と何か結論を出していた。


「その通り!」

(その通りなのか?!)

「アッキー!美味しいカレー作るからね!!」

「いや、これ調理実習だから俺も一緒に作るんだが……。」

「え?!初めての共同作業?!」

「今までも一緒に調理実習してきたよな?」


まあ、アストロンはあまり積極的に料理をしていなかったわけだが。




「カレーって偉大ですよね。結構何入れてもカレー味でまとまりますもんね。」

「ライ、諦めるな。いや、確かにその通りだが、生煮えだけはどうにもならん。しっかり火を通せ!!火が通れば確かにライの言う通り、何とかなる!!」

「カレーの隠し味って林檎とかチョコとかコーヒーだよね!」

「そう言うのもあるが隠し味だからな?基本的に少量なんだよ。どうしてお前はそっちをメインにするレベルを入れたがるんだ?!カレーコーヒーを作りたいのか?!」

「美味しくなさそうだね?!」

「お前が作ろうとしてるんだろう?!」

「……アッキー。こういった方が良いよ。『お前は俺にカレーコーヒーを飲ませたいのか?』って。」


ライがそう言うとアストロンは固まって


「うっ……うん。諦める……。隠し味は無くてもカレーになるもんね。」


とコーヒーを片付けた。


「分かってもらえてなにより……。」


そうしてできたカレーは、多数決によりビーフを使ったものになった。ちょっと煮込みすぎたのか具が少し煮溶けているが、味は良い。


「これは上出来じゃないか?」

「やったねアッキー。うん、俺達頑張ったと思うよ。」


少し疲れたように微笑むライは今回の功労者だと思う。

アストロンは出来上がったカレーを食べながら首を傾げている。


「どうしたアストロン。」

「いや、あのね、このカレー、多分家で食べるシェフの作ったものより味としては劣ると思ってたんだ。」

「そこは比べるところじゃないだろ。プロと比べるな。」


アストロンはゆっくり首を横に振った。


「それなのに、美味しいんだ。いや、今までもずっと美味しかった。調理実習でアッキーたちと作って食べたものは。」


アストロンは目をやや見開いて、少し呆然とした感じで俺を見る。


「どうしてだろう?」


俺はため息をついて答えた。


「そんなの当たり前だろ。一緒に作って一緒に食べてるから美味しいんだ。味っていうのは決して味覚だけの問題じゃないんだろう。」


嗅覚はもちろん、体調、その場の雰囲気なんてものも関わってくる。

いや、体調やその場の雰囲気が味覚や嗅覚に影響を与えているのかもしれないけど。


「そっか。アッキーと食べてるから美味しいんだ。」

「ん?何か言ったか?」

「アッキー!つまり究極の美味しいものは美味しものをアッキーと食べることによって誕生するんだよ。」

「は?!」

「うん!そうと決まれば僕はもっと調理実習を頑張るよ。もっと美味しいものを食べようね。アッキー!」


なにがなんだか分からないが、美味しいものが食べられるのは良いことだ。


「お、おお!」


とりあえず頷く俺の視界の端で、ライが静かに頭を抱えていたのが見えた。


フ「カレー美味しいよな。」

ア「うん。ちなみにうちのカレーはチキンが多いよ!」


気になるかも?良いかも?と思っていただけたらブックマーク、評価や感想をいただけると嬉しいです!

次回もお付き合いいただければ幸いです。よろしくお願いします。

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