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勇者と聖女のとりかえばや ~聖女が勇者で勇者が聖女!?~  作者: 星野 優杞
勇者アキレアと聖女フリージア
102/104

勇者だった聖女

ブラッディ表現とか、痛い表現が多いです。

この話だけ読むと不穏と言うか、後味が悪い感じがするので、そう言うのが嫌かなと思う方は、とりあえず次回の話があがってから、読んだ方が良いかな……と思ったりします。

心臓はバクバクうるさいし、乱れた呼吸もうるさい。その中で、力を失った魔王の体が床に転がった。

ステンドグラスを通した光がキラキラとした中で、魔王の体から流れ出た血が、床を赤く染めていく。


僕よりも息が荒く、手を震わせている少年が隣にいた。

その表情は決して、魔王を倒して喜ぶ勇者のそれではなかったけれど、僕は何も言わなかった。

僕が彼に何を言っても、彼の救いにも何にもならないことは分かっている。


キラキラした光の中、服が赤で汚れることも構わずに魔王の横に膝をつく少女がいた。


(アッキー……。)


僕は彼女がこの決断をしたのかと、本当にこれでよかったのかと、聞こうとしてやめた。


(君は、魔王を殺さない方法を探していた……。)


だけどこうするしかなかったのだろうか。

アッキーが魔王を覗き込んでいる。


色々と思うところはあるけれど、流石にこの状況で邪魔をするような性格はしていない。


ふと、体が楽になる。


「ライ。」

「はい。おそらく……。」


魔王が死んで、世界に溜まっていた悪のオーラが消えたのだと、何となく察した。




痛い。苦しい。熱い。寒い。息が、息ができない。


胸に刺さった剣はあの時、彼女が俺に突き立てられなかった剣。

それを彼はしっかり突き刺してみせた。言葉が出ない。


やっぱり、やっぱり死ぬのは嫌だった。

だってまだ、十五年ちょっとしか生きてない。もっと、もっと生きていたって良いじゃないか。あと五十年くらい生きていたって、他の人は誰も文句を言われないのに、どうして俺だけ。


転がった視界では、ステンドグラスがキラキラ光っている。そこに彼女がやってきた。


(どうして、そんなに強い目をしているんだ。)


泣きそうなのに、苦しそうなのに、彼女は確かに覚悟を決めた目で俺を見て、手を握った。

その温かさをしっかり感じる前に、俺の意識はふと途切れた。






大丈夫。俺は大丈夫。今度はできる。大丈夫だ。

魔王の胸を貫いて、アストロンと同じ目に合わせるんだ。


俺はしっかり目を開いて、アキレアとアストロンの戦いを見ていた。

アストロンがたくさん斬りつけたし、アキレアの魔法が喉も貫いている。そして、止めに、アキレアが俺の作った剣で魔王の、スキラの胸を貫いた。


貫けた。

今度は、しっかり魔王を斬ることができた。


グッと、着実に段階を踏んだことを確認して、魔王に駆け寄る。

彼は死んでしまう。だって、そうしなきゃ世界は救えないから。


どうしたって俺は、旅する中で見た世界をきれいだと思ってしまった。

救いたいと思ってしまった。

怖いものも、悪いものも見た。


だけどやっぱり、世界の仕組みを変えることができないなら、俺は魔王を殺すしかないと思った。

仮死でも良いと思ったし、他に方法がないか試したいとも思った。


だけど俺には、アキレア達の魔王討伐の流れを止められないと感じたし、


(アストロンのことがあった時に、きっと決めてしまった。)


そうだ。それから俺は、自分に言い聞かせてきた。

大丈夫。俺は大丈夫。俺にならできる。

だって俺は聖女だけど、今までずっと勇者だったから。


そんな勇者だった聖女にしか出来ないことがあると、俺は思ったんだ。

だから俺は目をそらさずに、一番近くで、魔王の命がしっかりなくなる瞬間を見届けた。

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