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物語の収集者  作者: 雛河翠月
5/10

初めての境界超え2〜冒険小説〜

 テクテクと、当て所もなく彷徨う。彼方さんの「そのうち会えるよ」という言葉を信じて。まあ、手がかりほぼゼロで立ち止まるのは性に合わない。読み進めれば、そのうち何かが見えてくるだろう。

「この世界って、どんな世界なんですか?」

 が、暇なので聞く。

「ここはね、『冒険小説の世界』かな」

 ああ、納得。其処彼処に洞窟やらがちらほら見えるのはその為か。

「ここって、精神世界、でしたよね? 誰の精神なんですか?」

 屈強な大男か。はたまた、幼女か。

「それは、内緒。主人公に合えば分かるよ」

 勿体振るなあ。

「この世界は作者が主人公タイプだから」

 作者が主人公タイプ?

「作者が主人公でない場合もあるんですか?」

 質問の最中も足を止めることはない。俺はガンガン読み進めるタイプだからな。

「うん、主人公に恋するメインヒロインとかね。あと、作者が出てこないタイプもあるよ」

 へええ。

「精神世界なのに作者が出てこないんですか?」

 それは精神世界ではないような。

「ああ、言い方が悪かったね。精神世界に限りなく近いけど、夢世界というか。空想の世界って言い方が一番近いかな」

 つまりどういうことだ?

「普通の小説には作者は出てこないだろう? それと同じで秘めている物語は千差万別。一人の作者が複数シリーズ書くように、一人で数多の物語世界を持つものもいれば、一つも持たないものもいる。だからやっぱり、精神世界という言い方は正しくなくて、空想の物語の世界って感じ」

 何となく分かった。そして気付く。

「そうか、異世界! これって異世界転生ですかね!?」

 テンションマックスで彼方さんに問いかける。

「死んでないでしょ」

 た、確かに。

「じゃあ、異世界召喚? も、違う気がするなあ」

 召喚されずに勝手に遊びに来た感。

「そうか、異世界転移!」

 これだ!

「それも違うよ。私たちの肉体はちゃんと元の世界にある」

 だったら何だ? と考えたがうまい言葉が見つからない。唸っていると、ライオンが目の前を通り過ぎた。

「ああ、言い忘れてたけど、私たちのことは登場キャラ達からは認識されにくくなっている。だから、こちらから何かしなければ、まず襲われることはないよ。基本的にね」

 こちらから何かしなければ、か。つまり、何かしたら襲われるわけだ。それと。

「基本的にってことは例外もあるってことですよね」

 問いかけると、あっさりと答えが帰ってくる。

「私たち以外にも物語世界に入れるものはいる。他の読者には注意しなさい」

 他の読者ねえ。注意しろってことは、問答無用で襲いかかってくる奴もいるのだろうか。

「ちなみに、この世界で怪我したり死んだりすると、どうなるんです?」

 恐る恐る尋ねる。まだ、死にたくないんですけど。

「さっきも言ったけど、現実世界に肉体は置いてきているからね。怪我をしても帰れば治るし、死んでも現実世界に返されるだけだ」

 死んだら強制送還か。ちなみに、腕を軽くつねってみる。痛い。うん、痛覚は機能するから怪我したら痛いみたいだな。死んだらもっと痛いだろうし、気をつけよう。

 そんなこんなで、どれくらい歩いたか。不意に前方から話し声が聞こえた。

「さて、主人公達との対面だよ」

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