表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
物語の収集者  作者: 雛河翠月
10/10

境界の旅人

 バイト開始から数日。異世界に行ったのは初日のみで、後は店番が殆どだった。しかも、来店客が少ないうえに、顔馴染みしか来ないので俺は空気だった。彼方さんに紹介してもらって、おしまい。楽ではあるが、暇である。案内狸のぽこたろうをモフモフしていただけだ。

 ぽこたろうって誰が名前を付けたんだろうか。

 しかし、今日、やっと!

「異世界ですか!? 異世界ですよね!?」

 彼方さんは目に見えて喜ぶ俺を座らせて話し始める。

「そうだよ。一応今回も難度は低めなところの仕事を貰って来たんだけどね。というかたまたま押し付けられただけなんだけど」

 今回はストーリア本部から収集する物語が指定されたらしい。

「最近、ストーリーブレイカーって呼ばれる連中が増えて来ててね。奴らに狙われにくそうな物語世界だから大丈夫だと思うけれど、もし万が一出くわしたら、収集は諦めて物語世界から脱出しなさい」

 神妙な面持ちで言われる。

「ストーリーブレイカー、ですか」

 物語の登場人物以外からは普通に認識されるって言われたっけ。

「そう、SBって呼ばれる。ちなみに私たちはSC。ストーリーコレクターでSCって呼ばれる」

 じゃあ、俺は駆け出しコレクターだ。なんか格好いい。

「なんで、壊すんですか?」

「彼らはね、成功者が気に食わないのさ。例えば、大企業の社長が会社の未来の物語世界を持っていたとする。それを壊されると、社長は成功の筋道を見失ってしまう。勿論、見えなくなるだけで無くなりはしない。けど、最悪の場合も存在する」

 最悪の場合、か。事業がうまくいかなくなって倒産するとか、かな。そうすると、自殺者も出そうだ。考えるだけで嫌な気分になってくる。

「ただ、私たちは戦闘が専門じゃないからね。奴らを見かけても無茶せずに逃げなさい」

 男子大学生なので、それなりに腕っ節には自信があるが、武器とか持ち出されたら敵いっこないしな。

「わかりました」

 頷いた俺に紙束と白い本を手渡して来る。

「これ、マニュアルと世界情報だから頭に入れてから行ってね」

「はい」

 店は彼方さんに任せて、面接で使った四畳半で資料を広げる。

「えっと、」

 とりあえず、マニュアルから読むか。なになに? 【異世界冒険マニュアル 坂井優一】って優一が書いたのかよ。

 あまり時間をかけてもしょうがないので、重要そうな部分だけ頭に叩き込む。じっくり読むのはまた今度にしよう。

 一番重要なのは行き帰りの方法だな。えーと、行きは白い本に触れて心の中でこの呪文を唱える。帰りはこっちの呪文。行きの呪文は個人差あり。適正呪文を探すことが大事、か。適正呪文って何だろう。取り敢えず、書いてある呪文でいいか。兄弟だし、優一と一緒で行ける気がする。駄目だったら店の方にいる彼方さんに助けを求めればいいしな。

 後は、物語の核の探し方、かな。白い本で大体の位置が分かるから、後は聞き込みと事前調査資料(と勘)を駆使して根性で探す。ってこの間、彼方さん本開いてなかったよな。聞き込みもしてなかったし。まさか、勘だけで迷わずたどり着いたのか? 恐るべし。

 もう一つは世界情報。物語世界の主の個人情報と世界の構成情報。物語の核は主人公らしい。それよりも、かなりプライバシーがダダ漏れだけど、どうやって入手したんだろう。燕の個人情報も知られてるのだろうか。だとすると、俺の個人情報も載ってそうだよな。登場人物の一人だし。

 気を取り直して、座布団を枕に横たわる。目を閉じてマニュアルに書いてあった呪文を心の中で唱える。

(ワレ)境界(キョウカイ)()旅人(タビビト)(ナリ)(サカイ)()えて(カノ)世界(セカイ)()かん】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ